■セッション会場の選定
まずはセッションをどこで行うのかを選び、決めなければならない。前章「ゲームシステムの選び方」でも触れたことだが、どんな会場で遊ぶかというのはゲーム内容を左右する大事なことだ。
繰り返しになるが、セッションには大きく分けて、オフラインセッションとオンラインセッションの二つのスタイルがある。オフラインセッションは参加者が同じ場所に集まって、口頭でプレイするセッション。オンラインセッションはインターネットに接続できる端末で、特定のアプリケーションを使用したり、ブラウザから特定のアドレスにアクセスしてネット上でプレイするセッションのこと。
オンラインセッションについては、それほど悩むことはないだろう。参加者がアクセスできる場所、かつゲームマスターが慣れているか、または挑戦してみたい場所を選べばいい。
オフラインセッションの会場となると、これは少し悩みどころだ。というのも、いくつもの条件をクリアできる環境でなければならないからだ。
オフラインセッション会場の条件例
- まとまった時間が確保できる
- オフラインセッションにかかる時間はさまざまだ。だが、どのようなセッションにするにせよ、ゲームプレイに加えて設営と撤収のために必要となる程度のまとまった時間、利用できる環境を維持できなければならない。
また、ゲームに熱中しすぎることで、予定時間をオーバーしてしまうことがある。きっちり予定時刻までに終わらせることは大事だが、うっかり、万が一ということもある。利用時間にある程度の冗長性のある環境であれば、理想的といえるだろう。 - 安定した交通手段がある
- セッション会場への交通手段が少ないと、多少の遅れがひどい遅延につながってしまうこともある。電車やバスといった公共交通機関の便はどうか。また自家用車で移動する参加者がいるなら駐車できる場所はあるか。そうした交通手段についての確認は必須となる。
たとえば電車やバスによる移動を予定している場合、バスや電車の本数が少なかったり終電が早かったりすると、参加者は帰宅手段に困ることになる。参加者の生活環境によっては門限があることもあるだろうし、セッション後にも行動の予定があれば、その予定をキャンセルしなければならなくなるかもしれない。そうでなくても疲れが翌日に響くようなことは、なるべく避けたいところだろう。また自家用車を利用する参加者がいる場合は、会場かその近くに駐車場があることが望ましい。それもできるだけ安価に利用できるところがよい。
イレギュラーは起こるものと想定して、リカバーできないような条件は避けるべきだ。テーブルトークRPGという遊びを後々まで長く楽しんでいくことを考えるなら、生活に悪影響を及ぼすような計画は避けることが肝要である。 - 多少騒がしくなっても大丈夫
- セッション会場として、自宅を利用するケースは少なくないだろう。公民館など公共施設の部屋を借りて行う場合でもそうだが、ゲームにのめり込むあまり、往々にして声量の調整を忘れてしまうことがある。ゲームの内容によっては過激なセリフが飛び出すことだって、決して少なくはないのがテーブルトークRPGだ。
一度だけなら見逃してもらえるしれないが、度々そうしたことが続くようになると、隣人や管理責任者としては苦言を呈さざるをえなくなる。それは近所付き合いに小さな不和を蒔いたり、同じ施設を利用する他の客たちの迷惑にもつながりかねない。それは今後のゲーム環境に、決して良い影響をもたらすことはないだろう。そのようなトラブルを避けるため、セッション会場は遊びに適した環境であることが必要となる。 - 邪魔が入らない
- セッションに集中するため、外部の人間がなるべく立ち入らない環境かであることが望ましい。特にゲームマスターは、セッションを通じて席を離れることが極めて難しい。他のプレイヤーたちが時おり席を離れる必要ができるとしても、ゲームマスターが席を離れる必要のない場所である方がよいだろう。
- トイレが利用しやすい
- セッション中はよく喋るため、喉が渇きやすい。そのため水分を補給することは大事だが、結果としてトイレが近くなりやすい。そのためトイレが近くにあり、なるべくいつでも空いている(他の客に占有されにくい)場所であることが望ましい。話題にしにくい事柄だが、とても重要なことだ。
- 適度に体を伸ばせるスペースがある
- 適度に体を伸ばせるスペースがある
セッション中はずっと座りっぱなしでいることが多いが、ときどきは軽く体を動かしたほうが、より集中しやすくなる。また、狭い密室は熱がこもって頭がのぼせやすい。全員が席についた状態で、かつ最低でも人ひとりが軽く柔軟体操できる程度のスペースがあることが望ましい。 - 照明が暗くない
- セッション中、ルールブックを確認する、キャラクターシートを見る、メモをとるなどの行動が必要となることは多い。そのため、なるべく照明は明るいほうが良い。ただし顔がよく見えないほうが小芝居をするのに丁度よい(恥ずかしくない)などの理由から、薄暗い環境を敢えて選択することがないわけでもない。そうした際は、照明の暗さがマイナスに働かないよう工夫を凝らすことを忘れずに。でなければ部屋の暗さは参加者たちにマイナスの印象として残ってしまう。
- コストが安い
- どんなに条件に適していても、利用コストがクリアできなければ意味がない。利用費は、参加者に大きな負担とならない範囲に収まることが望ましい。
こうした条件は、必須のものもあれば、工夫によって妥協できるものもある。遊びたいセッションがどういうものかを考え、必要に応じて条件を選んでいくことになる。そうした点から、よく利用される会場の例について、いくつか挙げてみよう。
セッション会場の例
- 参加者の自宅
- 参加者の自宅を会場とすることは、気心知れた友人の集まるセッションではよくあることだ。気を使うことが少なく、リラックスしやすい環境であるため、ゲームにも熱が入りやすい。ただし他に家族がいる場合、常識的な対応が求められることになる。家族に好ましからざる交友関係があるとなれば、掣肘される可能性は大いにあるからだ。また、場合によっては異性の参加者を招いたり招かれたりといったことには抵抗のある人もいる。その点には十分に留意しよう。
- 学校の教室、部室
- 学生のうちから遊んでいるゲーマーなら、放課後にセッションを遊ぶこともあるだろう。そうしたときに学校の教室や部室が選ばれることは、よくあることのようだ。しかし学校はあくまで公共施設であり、勝手に占拠できる空間ではないことには注意が必要である。邪魔が入りやすく、またそれを拒絶しづらい空間であることは、十分承知しておいたほうが良い。
- カラオケボックス
- カラオケボックスも、セッションによく利用される環境となっている。場所によっては照明が暗いという問題があるが、適度なスペースとテーブルがあり、飲食できてトイレも利用しやすく、なにより邪魔が入りにくい。そう考えると、なかなかの好条件が揃った環境だろう。
ただし店側の判断により、ゲームセッションなどは目的外利用とみなされ、退去を求められるケースもあるそうだ。理解しておこう。 - 公共の貸出施設
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公民館や体育館の一室を借りてセッション会場にする。これはカラオケボックスが普及する以前からあった選択肢である。
ただしテーブルトークRPGという遊びは、サイコロやカードなどを使用することから、ギャンブルなどと勘違いされることもある。また騒がしくしすぎることで、他の利用者からの苦情が来ることもある。過去にはそうしたトラブルから、利用禁止になってしまった施設もある。利用に関する制限は施設ごとに異なるので、必ず確認し、利用の際には順守すること。 - テーブルトークカフェ、ゲームスペース
- 数は少ないが、都内や一部地域にはテーブルトークRPGを遊ぶためのスペースをレンタルしている店舗がある。そうした場所が近くにあるなら、利用しない手はないだろう。ルールブックやよく使う小道具などは揃えられているし、環境としては申し分ない。
- レンタルスペース
- その他にも、時間でレンタルできる会議室などがある。しかしその他の選択肢に比べて割高になることが多いので、その点については理解が必要となる。
セッション会場は重要な要素ではあるが、さまざまな要件から妥協が必要となる要素でもある。無理に理想を押し通すのではなく、限られた状況下で楽しいゲームを遊べるよう、あれこれ工夫を考えることも大事なことだ。