■システムタイプ

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■システムタイプ

システムタイプとは、ゲームシステムがどのような構造をしており、どのような運用を企図しているのかによる分類法である。

テーブルトークRPGが長く遊ばれ続けてきた結果として、好まれるゲームシステムやその遊び方についての分化が進んでいった。かつては「世代論」として語られていたが、安易に時代・世代で分けることは、優劣をつけたり相互の交流を断つことにつながりやすいという問題があった。また現実的に過去の構造がブラッシュアップされることで、新しいゲームシステムとして発表されているものもあり、線形の発展を思わせる「世代」という用語では扱いきれなくなっている。

既に古典的分類法であり、新たな分類法を用いるべきとの見方もある。だが、個々のゲームマスターがそれぞれのゲームシステムをどのように解釈し、どう運用するのか? そうした方針を整理する上での叩き台としては有用だ。そのため、ここではあくまで傾向の分類法として紹介する。

T1型:ボードゲームライク
T1型とは、原則としてゲームシステムと最小限のシナリオデータのみで遊ぶことが可能なゲームシステムである。最小限のシナリオデータとは「倒すべき敵」や「越えるべき障害」、「達成すべき目標」といった簡素なゲームデータを指す。決められた世界設定は無いか、あるいは漠然としたもので、サンプルとして提示されることはあっても、基本的には自作することになる。
T1型のゲームシステムでは、ルールとデータ、そしてゲームの状況の組み合わせから、その時点における最適解を選び出すことが、基本的なプレイスタイルとされる。そのため選択肢を含めてゲーム中に取りうる行動パターンには限りがあり、それらに必要とされるルールは整備されている。しかしそれ以外の行動についてはルールが無い場合も少なくない。ルールで想定されていないプレイングはゲームマスターが適宜補填するか、無効とするのが通例となっている。
T1型はテーブルトークRPGとしては最も古い構造であり、キャラクターたちのドラマを描く上では、選ぶべき最適解とキャラクター性とがバッティングするなど、不向きな傾向があった。しかし現在、描かれるドラマパターンを絞り込む代わりにドラマ性とゲーム性を両立させた、新しいT1型ゲームシステムも登場している。
T1型を扱う際は、ゲームシステムの持つ〈世界観〉について考え、どのような遊び方、楽しみ方が想定されているのかについて理解を深めておくことが重要となる。
T2型:ワールドシミュレーター
T2型とは、ゲームシステムに詳細な世界設定が付随し、その世界設定に沿ったPCの生き様を遊ぶためのゲームシステムである。ゲームシステム自体はT1型とあまり変わらず、ゲームシステムと最小限のシナリオデータがあれば、とりあえず遊ぶことは可能となっている。しかしその本領は、テキストや地図などの図表で提示された世界設定を駆使することにある。これら世界設定はゲームシステム上のルールやデータとして反映されており、それによってT1型と同じように遊んでいても、その世界の住人として表現されるわけだ。そのため「ワールド(異世界)シミュレーター」と呼ばれることもある。
またデータやルールに必ずしも反映されていない設定に関しても、それらを補強する形で運用することが求められる。それによって、ストーリーを持たないシナリオであっても、それぞれの立場に沿って行動するキャラクターたちの関係性によって物語が編まれていく。
T2型のゲームシステムでは、ルールやデータに加えて世界設定におけるキャラクターの立場を勘案し、より活き活きとPCを行動させるプレイスタイルが是とされがちだ。広大な世界と、PCの多様性を保証するさまざまな設定が用意されており、それらを使いこなせれば実に多彩な物語を楽しむことができる。しかし同時にその多様性は,PC同士の間ですら目的のコンフリクトを起こす要因となり、折角ストーリーを用意しても、その通りに進まないことも多かった。
少なくとも日本では早くからストーリーのある遊び方が提唱されていたこともあり、ストーリーのあるシナリオを用意して失敗するケースが跡を絶たなかった。だがそのためにストーリーのあるシナリオを遊ぶ方法の研究が進み、より安定感のあるゲームシステムや、ゴールデンルール、プレイングエイドなどのテキストの充実が進んだのは皮肉な話である。
T2型は現在、より物語ることに特化したナラティヴ系のゲームシステムに継承されているが、ルールデザインの傾向があまりに違いすぎるため、同じタイプとしてまとめて良いかは判断に迷うところだ。(あるいはT4型とすべきかもしれない)
旧来のT2型ゲームシステムを扱う際は、世界設定について掘り下げること、またT1型と同じくゲームシステムの〈世界観〉について考えを巡らせること。そして安定的に扱いたければ、プレイヤーがそのゲームシステムにどのようなイメージを持っているのか、どのように遊びたいのか(ゲームプラン)についてのヒアリングなども重要となる。
最後にデジタルゲームの話になるが、いわゆる「オープンワールド系」のRPGは、このT2型の理想を追求していったモデルともいえる。
T3型:ストーリーシミュレーター
T3型とは、T1型またはT2型のゲームシステムに想定されるストーリー構造を取り込み、ストーリーのあるシナリオを遊ぶためのゲームシステムである。その性質上、シナリオにはストーリーが必要となり、T1型と比べると準備の手間はより大きくなるが、物語の主人公たちのようなドラマチックな活躍の場を安定的に作り出せる長所を持つ。ただしプレイヤーにも、そうしたドラマチックな活躍をする主人公として遊ぼうとすることが求められる。そうしたマッチングの上で、最高のスペックを発揮するゲームシステムがT3型である。T2型が世界を再現するワールドシミュレーターであるなら、T3型は物語を再現する「ストーリーシミュレーター」である。
T3型のゲームシステムでは、T2型のように広大な世界設定を持たないか、あってもそれは常にゲームに影響するものではない。あくまで世界は物語の舞台として設計されており、物語に関係する折にだけ、その影響は現れる。そのため世界設定は、ゲームに必要な「キャラクター同士の関係性」に関する要素か、それぞれ立場や分かりやすい行動の指針を付与されたNPCが中心となっている。
シナリオの用意が手間だと書いたが、ストーリーシナリオの構造について研究が進んだことで、シナリオクラフトのようにチャートを使用して手軽に遊べるような工夫も提案されている。
T3型を扱う際は、ストーリーの基本構造や、ドラマチックな活躍がどのルールの駆動によって導き出されるのか、それを演出するためにはどのようなシチュエーションが有効か、などについて考えを深めておくことが重要である。