■ゲームジャンル

enter image description here

■ゲームジャンル

どのような世界で、どのような物語を遊ぶのか? そうした〈世界観〉は、ゲームシステムごとに設定され、あるいは構造として内包されている。それらは一般に「ジャンル」として分類されている。

ここでは代表的なジャンルについて紹介していこう。あなたはどんなジャンルのゲームを遊びたいと思うだろうか?

代表的なジャンル例

  • ファンタジー
  • ホラー
  • 現代異能
  • モダンアクション
  • サイバーパンク
  • 時代劇
  • SF
  • 原作モノ
  • 汎用、混合
  • その他
ファンタジー
テーブルトークRPGの嚆矢たる『ダンジョンズ&ドラゴンズ』からの伝統なのか、ファンタジーというジャンルはひとつの定番となっている。日本でもコンピューターRPG『ドラゴンクエスト』シリーズによって確立されたRPG観によって、長らく「RPGといえばファンタジー」という認識が一般的であった。
ファンタジーというジャンルには、更に細かくさまざまな分類があるが、テーブルトークRPGで最も多いのは「ヒロイック・ファンタジー」や「ソード&ソーサリー」と呼ばれるジャンルである。近代科学が生まれるより前、剣に代表される古代の武器と、魔法という超常能力のある世界での冒険である。また古代から中世あたりまでのヨーロッパ圏文化を中心とし、怪物や戦争などの理由から戦闘行動が描かれるものであれば、大体このジャンルに分類される。文芸的にはヒロイック・ファンタジーに分類されないファンタジー作品も、ゲーム化の際に冒険的な要素を盛り込むことでヒロイック・ファンタジー化されたものもある。
また我々の暮らす世界とは全く異なる世界を扱うものをハイ・ファンタジー、我々の住む世界に魔法や怪物などを持ち込んだものをロー・ファンタジーなどと分類することもある。この区分によるなら、後述の「現代異能」などはロー・ファンタジーに分類することも可能だが、ヨーロッパ風の「魔法」というより伝奇小説的な「呪術」や、より近代的な「超能力」などが多いため、別ジャンルと分類した。
ヒロイック・ファンタジーのテーブルトークRPGでは、PCは「冒険者」や「英雄」といった立場として、強靭な肉体や優れた知性、俊敏な身のこなしなどによって危険と立ち向かい、冒険物語の主人公となる。おそらく最もファンが多く、潜在的なユーザが多いのがこのジャンルであろう。
もちろんヒロイック・ファンタジー以外のファンタジー作品もある。たとえば魔法やそれに類する奇跡を扱う「メルヒェン」や「エブリデイ・マジック」的なタイトルも、ファンタジージャンルとして扱われる。これらのジャンルでは、PCはいくつかの小さな魔法が使える魔法使いとして、日常の中で発生するトラブルを解決するような物語を遊ぶことが多い。
ホラー
恐怖や怪異などを扱うホラージャンルは、数こそ多くはないものの、テーブルトークRPGの中でひとつのジャンルとして認められるだけの存在感を持っている。ただ、その代表作たる『クトゥルフ神話TRPG』も、今でこそ認知度も高くなったが、一時期はゲーマーの間でもマニアックなゲームの代表のように語られていた。
文芸や映像などにおけるホラージャンルは、人間たちが恐怖に晒され翻弄される物語構造が多いが、テーブルトークRPGでもそうした構造を模倣し、追体験する形になっている。
ホラーにおけるPCたちはファンタジージャンルのPCたちのように、怪物と正面から戦えるような能力の無い、一般人やそれに類する非力な人間であることが多い。PCの能力もまちまちになりやすく、その行動もファンタジーなどと比べてパターンが確立していない。過度のパターン化によって恐怖演出がジョーク化してしまうことを避けたい事情は、テーブルトークRPGのホラージャンルでも変わらない。しかしフリーハンドが過ぎれば疲労による思考力の低下や、それによる自暴自棄な行動などへとつながり、物語を楽しめなくなってしまうことが想像される。そうしたさじ加減の難しさもまた同じだ。だが成功したときの面白さも、他ジャンルとは一線を画すのも事実で、熱心なファンも少なくない。
現代異能
その名の通り、現代を舞台に異能者たちの戦いを描くのが現代異能というジャンルである。
一口に異能者といってもその実態はさまざまで、超能力やそれに類する超自然的なパワー、伝統的な魔術や呪術などを駆使して、怪物、怨霊、魔物、魔性などといった超常のモンスターや、同じ異能を持った人間を敵として戦う。ただしどんな異能者であれ、基本的には一般人の枠から逸脱した力を持っており、そうした力を使って脅威と戦うことができる。
文芸としては「伝奇」「超伝奇」や少年漫画における「バトルもの」の流れに沿っている。テーブルトークRPGのジャンルとしては比較的新しく、ファンタジーブームが終わりを迎え、サイバーパンクなどのSF系アプローチを経るまでは、オカルト色の強いイロモノ扱いであった。現在でもオカルト色が強いものほど、好き嫌いが分かれやすい傾向が見られる。
ホラーと違い、PCは超人としてファンタジーのように怪物との戦闘を行う。ただし大自然を旅することは稀で、基本的には人間社会のある都市や、館などの屋内空間が舞台となる。そのため物語中盤のプロセスにNPCからの情報収集(コミュニケーション)を入れやすい。ドラマを描き、かつバトルを描く、という二つの欲求を満たすジャンルとしてデザインされている。
モダンアクション
現代異能と同じように現代社会やそれに類する世界を舞台としているが、PCは異能者ではなく銃火器や現実的な身体能力などを駆使する普通の人間(ただし能力自体は優秀であるケースが多い)である点が異なっている。そのため敵も人間であることが多い。
PCが等身大の人間(やや逸脱しているが)であることから、かつてはホラージャンルのゲームシステムで遊ばれることもあったが、アクションやサスペンス、あるいはミステリーなどの要素に重点を置いたゲームシステムが出てきたため、別ジャンルとして分類されるようになった。
サイバーパンク
機械文明の発展により、肉体の一部ないし大半を「サイバーウェア」と呼ばれる機械部品と交換可能となった――あるいは機械部品によって生体能力を拡張できるようになった――近未来。また社会の情報化が進み、大規模ネットワーク管理によって人命が軽視されるようになった世界を舞台とするジャンル。
PCの能力はさまざまだが、基本的には社会の暗部でのダーティワークを生業としており、ガンアクションやスニーキング、ネットワークハッキングなどを駆使して非合法な依頼を解決することを目的とする。モダンアクションと同じように、敵も自分たちと同じ人間や、科学技術によって生み出されたモンスターであることが多い。
文芸としては八十年代にSFの一派として生まれ、一頃ブームにもなった。しかし現実の科学技術が長足の進歩を見ることによって、サイバーパンクの中で描かれ、パターンとなった技術のいくつかはむしろ懐古的なものとなってしまった。そのため「生まれた瞬間に終わったジャンル」などと言われることもある。しかし未だに根強い人気があり、現代の技術(拡張現実など)に合わせた新しいサイバーパンクも生まれてきている。
テーブルトークRPGのジャンルとしては比較的古いものの、ゲームシステムの数はそれほど多くはない。また現代異能、モダンアクション系のシステムが充実する以前は、古代~中世のファンタジー世界に対する、現代(近未来)的な社会のサイバーパンク。あるいはチャンバラごっこと勧善懲悪に対する、ガンアクションやダーティなハードネゴシエーションの、「大人のゲーム」といった二項対立じみた見方もあった。
ゲームシステム的にはサイバーウェアや細やかなルール設計により、データが豊富な傾向が強く、そうしたデータを組み合わせて理想のキャラクターを作り出すことに楽しみを見出すユーザが多いことも特徴のひとつだった。(現在では他ジャンルでもデータビルド系のゲームシステムが増えたため、特徴といえるほどではなくなっている)
時代劇
時代劇とは日本の、主に江戸時代や戦国時代を舞台とするジャンルである。ただし史実に沿っているとは限らず、講談などによる俗説を採用したり、学術的な正しさについてはあまり言及されない。そうした意味では「中世日本を背景としたファンタジー」と考えてもよい。
PCは武士や町人などの都市生活者が中心であり、物語は勧善懲悪のスタイルを基本とする。テーブルトークRPGにおける時代劇では、超自然的な存在の扱いはゲームシステムごとに異なっており、敵もそれに準じて権力者や悪党などの人間や、怨霊や妖怪変化などの怪物などさまざまである。
文芸としては史実をベースに歴史上の人物について描く「歴史小説」と、過去の文化を土台にその時代に生きた人々を描く「時代小説」のように区別する傾向がある。また歴史上の人物について扱っていても、史実に残された事件を扱わなかったり、史実とは大きく乖離している場合は歴史小説とはみなされず、時代小説に分類されることもある。
テーブルトークRPGに限らず「時代劇」といえば文芸作品よりもテレビ時代劇のイメージが非常に強い。また時代劇を扱ったゲームシステムは非常に少なく、長い間イロモノ扱いであった。反面、物語構造については「シナリオのストーリーデザインには時代劇が参考になる」といった意見も昔からあり、相性が悪いわけではなかった。
ただし時代劇が参考になると言われたのは、当時はテレビ時代劇『水戸黄門』の物語パターンが広く知られており、コンテクストを共有しやすかったという事情もある。往時に比べてテレビで時代劇を放映することが極端に減った現在にもそのまま通用するとは限らないことを断っておく。
SF
テーブルトークRPGにおけるSFジャンルとは、科学技術の発達により人類が地球を脱出して遠い星々まで足を伸ばした、そんな遥か未来を舞台とするスペース・オペラのイメージが強い。これは科学的近未来がサイバーパンクに分類されがちなためである。そのためPCは星々を渡る旅人としてさまざまな冒険をすることになる。ジャンルとして明確な敵はおらず、惑星や遺跡の探検や、異星人との遭遇、異文化圏でのトラブルのような「旅」や「冒険」を物語の主題とするものが多い。
テーブルトークRPGにおけるSFの元祖『トラベラー』は、アイザック・アシモフのファウンデーションシリーズなど、古典的SFの影響が色濃く、また後続のゲームシステムもこれに倣っているため、サイバーパンクと同じく一部の科学技術についてはレトロフューチャー色が強かった。
現在、海外では「ポストヒューマン」を謳ったSFジャンルのゲームシステム『エクリプス・フェイズ』が発表され、日本でも翻訳が行われている。
ロボットもの
ロボットものとは、巨大なロボットが何らかの理由で戦う世界を舞台としたジャンルである。戦闘の理由についてはさまざまだが、基本的には戦争をテーマにしたものが多い。また巨大ロボットは人間が搭乗して操縦し、巨大ロボットやそれに匹敵する大型の怪物を敵として戦っているケースがほとんどである。また舞台となる世界の時代設定によって、SFやファンタジーの一要素として組み込んだゲームシステムもある。
モチーフになっているのは日本のロボットアニメと言われる作品群である。またゲームシステム的には戦争ボードゲームの影響が強く、最初期のロボットものテーブルトークRPG『メックウォリアーRPG』は、戦争ボードゲーム『バトルテック』の拡張ルールだった。
基本的にPCは「巨大ロボットの操縦者」として戦うことが役割とされるが、巨大ロボットというギミックそのものは基本的に戦闘行動に特化しており、またさまざまな事情から濫用しづらく制限されているため、それ以外の調査や交渉といった行動についてはロボットは使用せず、PC自身が行うことになる。巨大ロボットのパイロットとして強大な力を持つPCと、その力に責任を持つ人間としてのPCという二つの顔を使い分けることが、テーブルトークRPGとして物語を編むことへとつながった。
ゲームシステムは当然ながら、巨大ロボットに関するルールやデータが中心となる。戦争ボードゲームを直系の祖とするだけあって、多くのロボットもののシステムが、とにかく戦闘が楽しめるようデザインされている。またサイバーパンクと同じように、豊富なデータの組み合わせによって理想のロボットを組み上げることを楽しみとするユーザも多い。
原作もの
小説、漫画、映画、アニメなど、他メディアの作品をテーブルトークRPG化したものは原作ものと呼ばれる。通常、作品ごとにその傾向に合わせて別ジャンルとして区分されるため、あくまで「原作がある」ということを表すタグに過ぎない。
汎用
さまざまなジャンルを取り扱えるように設計されたゲームシステムというものも存在する。こうしたゲームシステムは「汎用システム」と呼ばれる。
汎用システムは更に、あらゆるゲームに対応できるよう多くのモジュールを備えた「網羅型」と、基本的な骨格のみが共有され個々の要素についてはゲームタイトルごとに独自設計された「枠組型」の二種類に分類できる。とはいえ網羅型はほとんど姿を消しており、現在では枠組型としていくつかのシステムが残っているのみである。
網羅型の衰退には、各ジャンルとも細分化が進んだことにより、ジャンルごとの定番を定義することすら難しくなっていることが一因となっている。
混合
複数のジャンルを混合したゲームシステムというものも存在する。これらはしかし混合ジャンルと呼ばれるわけではなく、ゲームシステムごとに個別にジャンル名が付けられるか、もっとも比重の大きなジャンルとして分類される。
その他
これらのジャンルに分類できないゲームシステムも無いわけではないが、ここでは割愛する。