■英雄の旅
三幕構成論以外にも、物語の構成論については研究されている。有名なものとして「英雄の旅」というモデルについて解説しておこう。これは三幕構成論とは別の、より具体的に物語の中でどのような出来事が起こっているのか、その傾向からアプローチした構成論である。
「英雄の旅」モデル
「英雄の旅」とはジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』で示された、世界の英雄伝説の構造論である。「英雄の旅」は十二のステージによって構成されている。
- 日常世界
ヒーローのいる日常が描かれる。ヒーローはその環境や伝統といったものに馴染めず、それに反するような人物として描かれる。ヒーローの「日常の世界」には対立の構図が存在する。 - 冒険への誘い
外部からの圧力や、内部からの反発によって状況が変化し、二極化が進む。ヒーローは「日常の世界」が変わり始めたことに直面させられる。ヒーローは冒険に出ることを考える。 - 冒険の拒否
ヒーローが冒険に出ることを一度は拒否する。あるいはヒーローの周囲にいる人物が、冒険への不安や将来を失うことを主張する。 - 賢者との出会い
ヒーローは世界を知る年長者と出会い、旅の助けとなる助言、助力を得る。またはヒーロー自身がその内面にある力を見出す。 - 「戸口」の通過
第一幕の終わり。ヒーローは「日常の世界」を去り、「特別な世界」へと踏み
出していく。 - 試練、仲間、敵
ヒーローが「特別な世界」で試練に合う。また仲間や敵といったものを見出していく。 - 最も危険な場所への接近
「特別な世界」での最大の試練に向けて、ヒーローと仲間たちが準備を整える。 - 最大の試練
物語の中盤。ヒーローは「特別な世界」の中心へと分け入って、死やそれに匹敵する最大の恐怖に直面する。そこから生還することで、新たな人生が立ち現れる。 - 報酬
ヒーローが最大の試練をくぐり抜けて宝を手にする。 - 帰路
物語の四分の三くらいの場面。ヒーローは冒険を終えて「特別な世界」から去り、宝を持って故郷への帰路へつく。 - 復活
クライマックス。ヒーローは故郷の「戸口」で再び厳しい試練に直面する。再び犠牲を払うことで死と再生の瞬間を迎え、ヒーローは身を清めて高次元の人間として完成される。故郷の日常にあった対立の構図が解消される。 - 宝を持っての帰還
ヒーローは成長を遂げ、宝を持って故郷へ帰還する。そのまま旅を続けたり、新たな旅に出ることもある。