■キャラクターの役割と配置
物語におけるキャラクターは、その行動からいくつかの役割に分類することができる。そして場面ごとに必要とされる役割も決まっている……というのも物語構成論のアプローチのひとつだ。魔法昔話の研究を行ったプロップや、「英雄の旅」モデルを提唱したジョーゼフ・キャンベルなどが有名である。
ひとまずここでは、抽象化した七つの役割について紹介しておこう。
登場人物たちに与えられる七つの役割
- 主人公
- その場面における中心人物である。その場面に割り当てられたテーマに主体的に関わり、その後の話面につながる行動を起こす、最も大きな影響力を持った人物に割り振られる。
テーブルトークRPGにおいては、原則としてPCに割り当てられることになる。複数のPCがいる場合、その場面でもっとも重要な行動を行うキャラクター、特に判定を行うキャラクターに割り当てられることが多い。 -
- 援助者
- 主人公を社会的に支援する役割。情報や資源、権利などを貸与(譲渡)してくれる。援助は限定的であり、またその支援に関するサブストーリーは、シナリオにとって大きな意味を持たないことが多い。
テーブルトークRPGにおいては、主に判定を必要としない行為に限って協力的なNPCや、他の場面で主人公として必要な情報や資源などを運んできたPCなどが該当する。また、彼らの振る舞いは、プレイヤーの葛藤によるストレスを軽減する役割としても重要である。 - 犠牲者
- シナリオに関係する事件で何らかの損害を被る役割。主人公を物語に引き込み、主体的な行動を促すモチベーションを形成する上でも重要な役割である。
- 協力者
- 主人公に協力し、行動を共にする役割。ときには主人公顔負けの活躍をすることもある。
テーブルトークRPGでは、主にその場面の主人公以外のPCが該当する。彼らとのやりとりは、ときに新たな葛藤を生むこともあるが、援助者とのそれと同じく、葛藤を和らげることにもなる。 - 指示者
- 登場人物に対して、そのシナリオにおける目標を指し示す役割。
テーブルトークRPGでは依頼人などの形で登場することが多い。 - 対抗者
- 主人公と並行して行動し、主人公に成長のきっかけを与える役割。いわゆるライバル。指示者と異なり能動的に行動する人物に割り振られる。主人公よりも優れた行動をとってみせることも、あるいは手酷い失敗をしてみせることもある。
テーブルトークRPGでは登場しないことも多い。 - 敵対者
- 主人公に敵対する役割。能動的に主人公に攻撃を仕掛けてくるが、敵対の原因についてはさまざまで、その行動は強制されたものである場合もある。また、別の価値観に則った単なる妨害者や、人物ではない障害である場合もある。
テーブルトークRPGでは、主にPCの資源にダメージを与える役割として、またクライマックスで倒すべき存在として登場する。
場面ごとに必要な役割
物語のそれぞれの場面、転換点などで、必要となる役割にも傾向がある。これは「最小限これだけの役割が必要となる」というものであって、それ以外の役割が登場してはならないわけではない。ただし不要な役割が登場することで、場面ごとに提示する情報がブレてしまうこともあるので、必要かどうかを考えること。
三幕構成論と重ねて、それぞれの役割がそれぞれの場面で、果たしてどのような行動をするのかを考えてみて欲しい。
- 第一幕「設定」
- ・登場する役割:主人公、協力者、対抗者
- プロットポイントI
- ・登場する役割:主人公、犠牲者、対抗者(または指示者)
- 第二幕前半「葛藤A」
- ・登場する役割:主人公、協力者、指示者
- ミッドポイント
- ・登場する役割:主人公、犠牲者、協力者、敵対者、対抗者
- 第二幕後半「葛藤B」
- ・登場する役割:主人公、援助者、犠牲者、協力者、指示者
- プロットポイントⅡ
- ・登場する役割:主人公、対抗者
- 第三幕「解決」
- ・登場する役割:主人公、協力者、敵対者
- エンディング
- ・登場する役割:主人公
一人の登場人物が、その場に応じて複数の役割を兼ねることもある。また、同一人物が場面ごとに異なる役割を与えられることもある。これら七つの役割は、物語上の振る舞いによって割り振られるものであって、必ずしも人物ごとに割り振られるものではないことを理解していただきたい。
テーブルトークRPGのシナリオに応用する場合、場面ごとに登場するNPCが、どういった役割を果たすのか、そこから言動について考えてみればよい。
また、援助者などはゲームの都合上、場面で必要とされていなくても登場しなければならないこともあるだろう。そうしたゲーム的な必要性については、この分類では扱っていない。