■プレイヤーキャラクター

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■プレイヤーキャラクター

ゲームの主役たるPC――プレイヤーキャラクターについても、ゲームシステムごとでその立場や役割は異なっている。ゲームシステムにおけるPCはどんな能力を持っていてどれくらい強いのか。どのように作成するのか。そうしたルールから、ゲームシステムの持つ〈世界観〉について理解を深めることができる。

PCの能力、強さ

そのゲームシステムの想定する物語世界において、PCはどんな能力があるのか、どれくらい強いのかということは、その物語世界の中でPCが果たすべき役割の表れである。これはテーブルトークRPGというゲームが、それぞれの能力を出し合って協力したり、あるいは能力によって互いを出し抜いたりといった「行動の記述」によって登場人物を表現し、それによって物語を編む遊びであるためだ。また、これはテーブルトークRPGのルールの中核をなす〈行為判定〉というルールにも関係している。このことについては後述の「行為判定」の項目で解説する。

PCの強さや特別な能力については、主にルールブックの世界設定パートやキャラクター作成ルールなどで、PCの立場や役回りに関する項目として書かれていることが多い。またキャラクター作成ルールや行為判定などのルールの中で、一般人との差について、平均値などの数値の差によって表されている場合もある。これらの情報を確認しながら、PCがどれくらい、どのように強いのか(あるいは弱いのか)について確認しよう。

PCの能力:一般人
PCの能力がそのゲーム世界における一般人(成人の平均値)と同程度であるとき、そのゲームシステムの〈世界観〉はジャンルを問わず、現実的で生々しく、社会的な要素が強い傾向がある。これはそうした環境こそがPCの能力を、特徴的に、個性的に、最大限に発揮できる舞台であるため。
こうしたゲームシステムでは、物語世界における社会的な立場など、PCごとの設定と世界設定とのすり合わせによって「行動が妥当であるか否か」の判断を要するものが多い。そのためゲームマスターは、PCの設定やデータと、ゲームの舞台である社会環境について、判断できるだけの指針を見出しておくことが重要となる。
PCの能力:そこそこ強い、ある分野に限って強い
PCの能力が一般人より優れている場合、そのゲームシステムの〈世界観〉は、「一般人より優れている能力」を使用してPCが活躍するものとなる。しかし全てにおいて一般人より優れていることは稀で、そうした強さは一部の限定的な局面(特に戦闘や危機管理に関するもの)に限られている場合が多い。また、冒険の舞台は人間社会かそれに近い領域にある傾向がある。これらの要素を組み合わせることで、PCたちはそれぞれ得意とする分野へ活躍の舞台を求めるようになり、ゲームとして遊ぶ局面、物語として描かれる局面が明確になる。
こうしたゲームシステムの場合、PCを構成するデータの中に「◯◯ができる」「◯◯の成功率を上げる」などの項目がある。これは「◯◯」という行為について、一般人やそのデータを持たない他のPCとの差を明確にし、データによってゲームの中での(ひいては物語の中での)役割分担を行うものである。そのためゲームマスターは、PCがどういった分野に秀でているのか、そうした能力が映えるのはどんな状況か、といった事柄について理解を深めることが重要となる。
PCの能力:あきらかに強い、英雄、超人
PCの能力が一般人よりも明らかに、しかも明確に優れているゲームシステムの〈世界観〉は、PCが成し遂げる偉業について物語るものだろう。彼らの行動はすでに常識的な人間という枠からはみ出しており、一般人にとっての難関も、彼らにとっては突破できて当然であることが期待されるし、また実際そのように行動することができる。もはや物語の主役たるPCたちと、それ以外の群衆とでは、生物としての扱いからして違うかもしれない。
こうした〈世界観〉のゲームシステムが想定している物語には、大きく分けて二つのパターンが存在する。ひとつは圧倒的な能力を持ったPCたちが颯爽と活躍するもの。もう一つはそんな彼らですら苦難を強いられる、あまりに過酷過ぎる環境を冒険するもの。どちらであるにせよ、ゲームマスターは圧倒的な力を表現する方法について、考えを巡らせておくことが重要となる。
PCの能力:一般人未満
PCが一般人より弱いゲームシステムというものもある。これは主にPCが小動物や妖精など、人間外の生物であるものに多い。また、PCが子供であるゲームシステムの場合も、PCは一般人に満たない能力しか持たないものがある。
こうしたゲームシステムの〈世界観〉は、世界は危険に満ちていて、生き残るために死力を尽くすアクションであったり、限られたちっぽけな能力によって未来を少しだけ改善するエブリデイマジック系のロー・ファンタジーなどが多い。そのためゲームマスターは、そうした〈世界観〉をいかにして表現するのかについて、考えを巡らせておくことが重要となる。

PCの作成

PCをどのように作成するのか。そのルールによってもゲームシステムを分類することができる。こうした分類は、それぞれゲームシステムが想定する遊び方や楽しみ方についてを大別することにつながるからだ。ゲームはPCを作成する段階からすでに始まっている。

現在では一つのゲームシステムが複数の方法を採用しているものもあり、またローカルルールや拡張ルールとして作成ルールを追加しているゲームシステムもある。ゲームマスターはこれらのルールの中から、どのように遊びたいのか、楽しみたいのかについて考え、どのルールによってPCの作成を行うのかを選択しなければならない。

PCの作成:ランダム
PCのデータのうち、重要な要素について一部ないし全てをランダムに決定する。そうした作成ルールのゲームシステムは、当然ながら、必ずしも理想どおりのキャラクターはできない。だからこそ、そうした不遇な状態から上手く立てなおして目的を達成する、という技巧的なプレイングが映えることにもなる。
またランダムという性質上、PC一人では偏りも大きくなりやすいが、より多くのPCが協力することでそうした偏りによって生じる欠点を補完し合うことが可能となる。そのためキャラクター作成にランダム要素が強いゲームシステムでは、PCが仲間として相互に協力するものが多い。
PCの作成:ポイント配分
PCのデータのうち、特に重要な要素について、一部ないし全てを、カテゴリーごとに決められたポイントを配分することで決定する。こうした作成ルールのゲームシステムでは、PCは決められたポイントの範囲内で思い通りのデータを作成することができる。配分できるポイントは、合計Xポイント内に収めればよい、とするものと、個々に配分できるポイントは決まっていて、それをどのように割り振るのかを選択するものとに分かれる。またPC作成ルールで数値を扱わないゲームシステムの場合、選択肢の中からルールで決められた数だけ選択するものもあるが、これも同種とみなす。
PCがイメージ通りになりやすい分、分配や選択によって生じるゲーム上の不利もプレイヤーに還元されやすい。そのためPC同士が衝突し、戦うような展開になってもプレイヤー間での不満が生じにくい傾向があり、個々のPCの独立性が高いゲームも遊びやすくなっている。
PCの作成:設計
PCの作成の自由度をより高くしたルールとして、PCを構成するさまざまなデータを、通貨のように使えるポイント(キャラクターポイント、ビルドポイントなど)によって売り買いすることで、PCのデータを設計するルールというものもある。最初に割り当てられたポイントを、長所を獲得するために支払ったり、短所を請け負う代わりにポイントを貰ったりする。
こうした設計型のルールは、ポイント配分型よりも更に自由度が高く、さまざまなキャラクターを作成することが可能である。この自由度は、プレイヤーがゲームに期待することをPCを通じて記述することに必要となる。だがその自由度の高さによって、ゲームシステムやシナリオが必要とする水準に満たないデータ設計をしてしまったり、想定外のデータによって予定していたゲームが無効化されてしまったりするケースもありうる。そうした状況を避けようとするなら、そのための工夫を考えなければならない。また、ゲームシステム側から標準的なデータとして、後述のアーキタイプのようなサンプルを提示しているものもある。こうしたゲームシステムの場合、サンプルデータを標準値としてゲームバランスがデザインされていると考えるべきである。
設計型の作成ルールを持つゲームシステムは、往々にしてそれ以外の要素についても自由度が高く、さまざまな物語を編むことができるものが多い。それだけゲームマスターに要求される技術水準も高くなりがちだが、工夫によってさまざまな遊び方ができるのが特徴といえる。
PCの作成:アーキタイプ
そのゲームシステムが想定しているゲームに適したキャラクターデータを、アーキタイプとして提示し、プレイヤーがその中から選択する。その他の作成ルールに比べて多様性の限られる方法ではあるが、そうした作成ルールのゲームシステムも存在する。もっとも、アーキタイプしか選べないゲームシステムというのは極めて稀で、普通は他の作成ルールとの選択制をとっている。
アーキタイプ型の作成ルールは、いくつかの点で他のルールに優れている部分がある。それはたとえば作成にかかる手間が圧倒的に少なくて済むことであったり、データが予めわかっているのでゲームシナリオのバランスに幅を持たせる必要が少ないことなどである。ただし自分の手でPCのデータを作りたいと思っているプレイヤーにとっては、こうしたルールは敬遠される向きもある。
PCのデータがあらかじめ分かっているため、設計型ルールで解説したような「想定外のデータによるトラブル」が非常に発生しにくくなり、安定したゲームが楽しめるようになる。そのため物語のパターンが限られている(最初から強い物語のテンプレートをもっている)ゲームシステムに採用されることが多い。大抵のアーキタイプは、スリリングなゲームを十全に楽しむために重要なデータについての編制パックであり、それ以外のフレーバーとなる設定についてはプレイヤーが自由に決められるようになっている。(これは非常に重要な事である)