[掌篇] 11 : 思い出せない約束

 悲しい知らせが届いた。
「あの子、死んじゃったって」
 ふと、煙草で霞んだ天井を仰ぐ。
 久しく忘れていた、懐かしい笑顔があった。
 そして思い出す。
「指きりげんまん」「約束だよ」「絶対ね」
 鸚鵡のように繰り返した言葉。
 つまらない約束。
 春の木洩れ日は、忘れた記憶を照らしてはくれない。

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