[memo] リプレイという棋譜

ちょっくら (T)RPG の話。 Twitter に書こうと思ったんだけど長くなったんでこちらに。


(T)RPG は体験する遊びであって、読み物として作られたリプレイでは (T)RPG の(体験する)楽しみは理解できない。

……みたいな話は今でも時々耳にするんですが。

これ、(カッコ書きの部分を補足した上で)文意としては正しいとは思います。そりゃあ体験する遊びを読む遊びで理解するのは本質的に無理でしょう。とはいえ、そこから「だからリプレイは無意味だ」みたいに繋げちゃうのはちょっと待ってね、とも思うんですね――いや自分も昔はそう考えてたんですが。

でも実際のところ、「体験する遊び」を実際に体験する動線として、またその体験によって楽しみを体感してもらうためのインストラクションにとって、リプレイはとても有用なツールだなーということを、ここ数年で特に強く実感してたりするわけです。

人は真似るうちに学ぶのだなー、という。

棋譜・定石としてのリプレイ

これまで「ルールのインストラクションにリプレイは有用だ」という話はよく有ったと思います。これ、自分も実感として正しいと思います。なにしろ新しいゲームシステムのルールブックを読むだけで、どのルールをどんな場面で活用するのか、それがどう機能するのかを理解するのは困難なことがありますし、なにより億劫なものです(笑)。ですがリプレイを読めば「ああ、なるほど」と理解することが出来ます。

では体験する遊びにリプレイは無用なのかというと、そんなことは全然ないんですね。むしろリプレイは (T)RPG の初体験を楽しいものにするツールとして十分有用なものだったりします。

用法は簡単。

初プレイ時、リプレイと同じシナリオを遊ぶ。

これだけです。

基礎運用

特にセットアップ、初期配置については極力同じものを使用します。もちろん初体験のプレイヤーが自分で遊びたい/演ってみたいキャラクターを持ち込んだ場合はそれに合わせますが、導入の時点でよく似た状況を生成します。

後はシナリオ通りにセッションを進行すること。プレイヤーの気質によって、リプレイそのままのロールプレイをすることもあれば、自分なりに演りたいと思った行動をガンガンぶち込んでくることもあります。どちらにせよセッションはスムーズに進行できるよう、シナリオの準備はきちんとしておきましょう。

シーン制の進行管理は、こうした方法を実に簡単に採ることが出来ます。多少のプレイングのズレは、場面転換で吸収してしまうことができますんで。ああ、でもプレイヤーが別の展開を求めてるのに、強制的にリプレイどおりの展開にしちゃうのは「何をしても変わらない」イメージになっちゃうんで避ける方向で。茨の道に踏み出したのなら温かい目で牙を向け(笑)*1いや別に「牙を向け」ったって意地悪をしろということではないですよ。「試してやる!」みたいなアホなことは考えないで、楽しむこと、楽しんでもらうことを考えましょう。

逆にターン/サイクル制の進行管理だと、他プレイヤーのプレイング結果でいくらでも状況が変わってしまうので、そのへんちょっと難しかったりもします。もっとも、ターン/サイクル制を採用したゲームシステムは「ダイス目によるハプニング」を面白おかしく演出することに重点を置いているものが多く、初体験のプレイヤーも出目そのものに一喜一憂する遊びを楽しみやすいため、導入さえ同じにしておけばあまり気にする必要が無い(その頃には既にゲームに没頭している)ことの方が多かったりもします(笑)

うまいことやれば、リプレイネタという共通の話題によって、ルールガイダンスも「あのシーン、裏ではこんなことをしていたんだ」とか「こういうプロセスでああいう結果になったんだ」と種明かしのように楽しく語ることが可能になります。

いかにテンパらせないようにするか

(T)RPG を初めて遊ぶ際の敷居の高さって、要は「未知の体験に対する不安」だと思うんですね。

初体験のマルチゲームって、だいたい一手ずつおっかなびっくり指していて、手筋についてはあんまり覚えてなかったりするんです*2すげー考えて指したはずなのに!。気付けばゲームは終わってるし、終わった瞬間に疲れがドッと出るし。覚えてるのはプレイ結果に対する一喜一憂くらいで、とてもじゃないけど全体を見渡す余裕なんて無くて。

なのでそうした精神的疲労、ストレスを最小化する方法は何かと考えると、それは「既知の状況に落としこむ」のが手っ取り早いだろうと。

ルール習熟について

ルールやデータのケアは、そう難しいことではありません。厳しいことを言わず、その場で何度でも解説したり、ページ番号を伝えたりしていれば片付くことです。

また「何度教えても忘れてしまう」とイラつく人もいますが、そうした状況において、相手はだいたいテンパっていて、その場を乗り切ることに全集中力*3メモリと言い換えても良い。を割り振っているため、覚えてる余裕が無いことがほとんどです。そうしたときは、ルールサマリーを渡しておけば徐々に改善されたりします。*4ページを探すために何度もめくる、膨大な文字の海の中から必要な一文を探す、などの行為は人間の集中力(メモリ)を大きく浪費するので。

課題は自発的プレイングの負荷軽減

問題はプレイング*5ロールプレイを含むの方で、こちらは外野がアレコレ言うことは望ましくありません。自分を主役とする遊びにとって、自由意志はとても大事なものです。ですから実際のセッションでは極力口を出したくない。

……しかし人間、未知の環境に放り込まれれば冷静では居られないものです。簡単にテンパってしまい、支離滅裂な行動に出てしまったり、自己防衛のために過剰な攻撃行動をとってしまうことも少なくありません。それではお互いに不幸せになるだけです。そうさせないために既知の状況の再現から開始する、というのがリプレイをインストラクション・ツールとする手法の趣旨となります。

無条件に使えるわけじゃない

もちろんこうした方法は、相手が当該リプレイを楽しく読んでいることが条件となります。リプレイが楽しく読めなかった人、またリプレイすら読んでおらず単に「テーブルトークRPG」という言葉と、遊んでいる光景をちらっと目にしたくらいの人には通用しません。その時は別のアプローチを考えにゃなりません*6たとえば「セッションで得られる楽しみを他の遊びでどう模すことができるか?」とか。。そうした状況において、過去に語られていた「家族にどう説明するのか?」という設問は現在でも有効なものだと思います。

そうでない、いわゆるリプレイ勢、動画勢には極めて有効な方法じゃないかなと。少なくとも自分の関わった範囲*7サンプル数21では、これで「(T)RPG ってつまんねーな」と見限った人はいませんでした……もちろん見落としてる(気付かんうちに実践してる)コトもあるとは思いますんで、誰にでも可能な方法だとまでは言えませんが。

注意点

ただし、この手法には限界もあります。それは乱数の結果は左右できないということです。

リプレイによっては殊更ドラマティックな出目(あるいは手札のプレイ)による劇的な大逆転劇が描かれていることがあります。実際そうしたリプレイは初心者受けが良く、またプレイしてみたいと思わせるパワーもあったりします――少ない労力でヒーローになれるという、ギャンブルめいた魅力があるので。

しかし実際のセッションでは、必要なときに必要な目が出るとは限りません。というかリプレイと同じような出目になることのほうが珍しいでしょう。その辺はマスタリングで調整します。判定の失敗は、多少の資源管理や小芝居のやりとりでチャラにします。あるいは必要と感じたなら、オーバーリアクションで失敗を劇的に演出しつつ、クールタイムを置かずに再チャレンジの機会を作る等、ペテン師の小手先技を駆使することも躊躇わず。

楽しい場であることを再優先に。

駄サイクル上等!(笑)

以降、昔話

これ、考えてみると自然にやってたんですよね。

自分らの世代だと、たとえば剣と魔法のファンタジーで「魔剣イリミネーター」を出したゲームマスターは結構いたんじゃないかと(笑)

その他、ソード・ワールドRPGのリプレイやよくわかる本シリーズの内容を持ってきて、真似た掛け合いをしてみたり。

(T)RPG 史におけるドラマシナリオのターニングポイントの一つ*8人によっては問題視してたりもするらしい「モンスターたちの交響曲」なんてのもありました。

また教本としてのバトルテック・リプレイ「魔女の~」シリーズでは、『機動戦士ガンダム』のシチュエーションをモチーフにシナリオを生成した話なんかもあって、自分でも同じようにアニパロのシナリオを遊んだりしてたモンでした。

それをもっとガッツリ全面に出してしまえ! というのが今回のお話。

分かりきったはずのシナリオであっても、参加者によって新しい楽しみなんて幾らでも生まれ得るのが (T)RPG でありますので。

References

References
1 いや別に「牙を向け」ったって意地悪をしろということではないですよ。「試してやる!」みたいなアホなことは考えないで、楽しむこと、楽しんでもらうことを考えましょう。
2 すげー考えて指したはずなのに!
3 メモリと言い換えても良い。
4 ページを探すために何度もめくる、膨大な文字の海の中から必要な一文を探す、などの行為は人間の集中力(メモリ)を大きく浪費するので。
5 ロールプレイを含む
6 たとえば「セッションで得られる楽しみを他の遊びでどう模すことができるか?」とか。
7 サンプル数21
8 人によっては問題視してたりもするらしい

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