種を蒔く人

 さまざまな種を、さまざまな畑に蒔いている。
 そういう二人の農夫がいた。
 一人はまた十そこそこの若輩、一人は四十を前にした壮年である。

 彼らの蒔いている種は、どれも美しい花を咲かせ、瑞々しい果実を付ける。
 しかしそれらの成育条件は厳しく、また時間もかかるものである。
 千の種を蒔いたところで、たった一本の成木が育つまでに、何十年も待たなければならなかった。

 若輩は、その種が育っていくのを、ただ楽しく眺めていた。
 だが壮年は、次第にそれを待つことに焦れていた。
 花が咲いた頃には、自分は既に生きていないかもしれないと。

 壮年は、早く育て、早く育てとたくさんの水をやった。
 そしていつしか土は泥となり、苗木は根付かず流れてしまった。
 壮年は涙に暮れ、悲嘆のうちに命を絶った。

 そんな夢を見た。