[chat] 20150102 GURPSと日常の物語

えらい前の持ってきたな、と思ったらまだ半年前か。

otneg : すみません、これどういう体で収録するんです?

robin.gj : 教師と生徒じゃね?

orihataya : そのまんまですね(笑)

otneg : とはいっても今さら何を話せっていうんだか。

robin.gj : お前さんの話したいことで。

otneg : しのびねえな。

robin.gj : 構わんよ(笑)

otneg : 先輩、トータルテンボス知ってるんすか。ちょっと意外(笑)

orihataya : それで、あの。

otneg : ああ、どうしようかね。なんか質問ある?

orihataya : 質問。えーと。

robin.gj : 急に言われたって思い浮かばないよねえ。気が利かないやつだなあ(笑)

otneg : 急に来ていきなり収録するからなんか喋れって方が困るじゃん。ねえ?

orihataya : それは、まあ、はい(笑)

robin.gj : あら、はっきり言っちゃうんだ。いい子だねえ。

otneg : 先輩、笑うと怖いの自覚してます?

robin.gj : そうか? まあいいや。あんまりふざけてるのもどうかってなもんだよ。

otneg : 今この時にも、インフルエンザで寝込んでる人がいるかもしれないし。

orihataya : おあとがよろしいようで?

otneg : これだけで分かっちゃうのか(笑)

robin.gj : 何の話だ?

otneg : 『じょしらく』の、あれ何話だっけ? 風邪娘って回のセリフです。近かったんでつなげてみました。

robin.gj : わからねえよ。

otneg : わかってたじゃん。ねえ。

orihataya : ねえ。

robin.gj : で、なんかネタ。

otneg : そうだなあ。コアな部分については読本に書くつもりなんで。

robin.gj : そこ、もったいぶらないで。ちょっとくらい話しちゃっても問題ないだろ?

otneg : うーん。まあ、この三人でってことも考えると、そうだなあ。

orihataya : あれはどうです? あれ。

otneg : あれ?

orihataya : 妖怪の。

otneg : ウォッチ?

orihataya : じゃなくて。

otneg : あ、妖魔夜行。妖魔夜行っていうかガープスの話かなあ、その場合。それでいい?

robin.gj : いいんじゃね?

orihataya : じゃあゲームマスターやるコツとか聞きたい。

otneg : コツかあ。妖魔夜行ってあれ、色んな遊び方があって、どんな遊び方をするかによって変わるのね。怪獣映画みたいな超人バトルをやりたいのか、それともワールド・オブ・ダークネスみたいなストーリーテリングをやりたいのか、それでまず大きくフォークする。

orihataya : どっちもできると。

otneg : できる。ただ、あんまりその辺のやり方について理解されてないというか、ロジックが開示されてないというか。いや開示できないのかな。

robin.gj : 開示できない?

otneg : たぶん、負担が大きいと考えられてるんじゃないかと思うんですよね。ストーリーテリングは。

orihataya : ゲームマスターの?

otneg : いやガープスの場合、ゲームマスターも負担は大きいんだけど、プレイヤーもキャラクターメイキングの段階で結構負担は大きいんだよ。ちゃんと打合せておかないと。

orihataya : シナリオハンドアウトみたいなやつですか?

otneg : そうそう。あれは解法の一つではある。最初にどっちに寄せるのか、の問題があるんだ。

robin.gj : どっちってのは?

otneg : シナリオをどこで作るのかって話で。先にシナリオがあって、それにキャラクターが合わせるのか、先にキャラクターがあって、それにシナリオが合わせるのか。前者はT3型、後者はT2型の遊び方になりやすい。

orihataya : ならないこともあるんですか?

otneg : データのアジャストが早いベテラン勢だと、キャラクターにシナリオを合わせる形でもきっちりT3型を組んでくる場合があるんだこれが。まあその手法の断片が、シナリオ作成大全4に寄稿した記事なんだけども。

robin.gj : ステマか(笑)

otneg : いやめっちゃダイレクトマーケティングじゃないですか(笑)。このへんは読本の2巻からはじめるテーブルトークRPG攻略記事の方でも扱っていこうかと思ってますが、当分先のことなので、早く知りたい場合はまず作成大全4を手に入れていただいてですね。

robin.gj : でも断片なんだろ?

otneg : 主題じゃないですからね。

orihataya : あの、あれですよね、一対一の。

otneg : そうそう。ガープスの場合はキャラクターデータがやたら細かくなるんで、必ずしも一対一にはならないんだけどね。慣れてるとその辺の割り出しがパパっと処理できるんで、結果的に同じことができちゃうわけ。T2型でアドリブ磨いてきた達人クラスには結構いる(笑)

orihataya : そこは慣れですか。

otneg : だね。ガープスに関して言うと、ひとつはスキルパスを覚えること。技能無し値のパスを漠然とでも理解してれば、技能ごとの記述力が桁違いに広がるから。それと、技能の粒度について理解すること。

orihataya : りゅうど?

otneg : 粒の度合いで粒度。細かさとか、スケールの大きさの違い、みたいなもんだと思って。ガープスの技能って、いやこれBRPとか色んなゲームでそうなんだけど、結構一つ一つの技能がカバーする範囲ってまちまちなわけね。これは行為としての効力の差なんかもあるし、ゲームシステムごと、それとかキャンペーンごとの世界観によって、よく使う技能、使わない技能みたいな差も出てくる。で、その粒度の違いを理解しておくと、ある技能の代替を、別の技能とロールプレイの組み合わせで補う、みたいなことが可能になるわけ。

orihataya : たとえばどんな風に?

otneg : たとえば。うーん、たとえば情報収集でさ、裏社会の技能でパッと、裏社会のコネから情報を拾ってくる、みたいなプレイを考えた時に、でも裏社会の技能持ってないぞとか。そういう時にもスラムとかストリートとかに踏み込んで、チンピラ蹴散らして脅迫技能で情報を得る、みたいな方法でケアできたりする、かもしれない。

orihataya : かも。

robin.gj : まあGMの判断次第だよな、その辺は。

otneg : ですね。必要な情報をチンピラが持っているのかどうか、とかになるでしょう。ただまあ上手い人だとそこにチンピラの元締めとか、あるいは物見高いニュービーとか、潜入してたパパラッチとかを混ぜ込んで、判定の結果次第では近い情報を得ることが出来たり、情報を知ってる人間へのアクセスパスを出したりして答えるんだわ。

orihataya : そういうことを思いつくために、技能のことを知っておく必要がある?

otneg : そうそう。ガープスって基本的に全部一般行為判定、技能判定で処理できるゲームだから。ストーリーテリング、T3型をガープスでやろうと考えるなら、特にその辺は重要になってくるわけ。キャラクターの技能を見れば、何ができるのかが分かる、というよりプレイヤーが何をしたいのかが分かる、の方がいいか。その可能性に対してバイアスをかけるのが特徴。特に社会的特徴。そうやってプレイヤーの欲求というか、ゲームプランを読み取るために、技能はしっかり自分なりにマッピングしておくことが大事ってこと。どうしても属人技術になっちゃうんですよね、この辺。

robin.gj : まあ設計思想もそんなに新しくねえだろうからなあ。

otneg : だからこそやり甲斐がある、と思うのはもう判官びいきのたぐいになっちゃうんだけど(笑)

orihataya : 簡単にできるならその方がいいですよね(笑)

otneg : まあ、そうなっちゃうよなあ。そうそう、ガープスの近縁にあるシステムで言うと、よりT3型へ傾斜を進めつつ、ガープスの神経質な記述に近いことをやってるシステムに『アルスマギカ』ってのがあって。あっちはCPの設定基準がストーリーテリング寄りなんですね。同じく『カルト』なんてゲームでも、やっぱりゲームの世界観に沿ったポイントの割り振りになってます。この辺はガープスが汎用システムである、ということが原因なんですが。そうするとまあ、ガープスの欠点というか、足りないもの、補う必要のあるものが浮かんでくるわけで。

orihataya : 世界観?

otneg : うん、それ。とはいってもガープスにも世界観はあるんだけどね。現実っぽいっていう。

robin.gj : 物語っぽくはないよな。

otneg : ないですね。ちょっときつい言い方をすれば、ガープスは物語に合わせる柔軟性が欠けている、と見ることも出来ちゃうわけで。ただまあこのとき、物語って言われてるものが狭すぎるってのはあるんですよ。敢えて区別するんで、僕はそういうのは、おはなし、と呼ぶようにしてますが。

orihataya : ストーリーコンテンツとかは?

otneg : ああ、それも同じ。で、そういうおはなし、ストーリーコンテンツに沿わせる力は、ガープスにはないんです。だから自分で作らなくちゃいけない。そこがガープスの重さであったり負担であったりして、ガープスを楽しむ上での個人差になってくるんだけど。ガープスと他のTRPGの違いとして、まあ主観的な話とか、経験則でしかないんだけど、感じてることがあってね。ガープスって、なにげにゲーム経験のない人でも上手かったりすんのよ。

robin.gj : ほう。どういう?

otneg : これ、成功体験の物語化技術とも関連した話なんですけどね。ガープスって、おはなしらしく振る舞うことは無いんです。おはなしらしく振る舞うことは無いんだけど、成功物語を書くための道具は揃ってるんです。それも現実にかなり近いところにあって、普段から普通に社会生活の中で意識できるレベルのものが。まあそれが技能だったり特徴だったりなんですけど。

robin.gj : 現実の人間を書けるってやつだな。

otneg : ただし若干、デフォルメがかかります。このデフォルメが、ゲーム的におはなしを記述する上での後押しをしてくれる、ほんの僅かな力で。だからそれ以外の足りない分、その物語の説得力をどうやって引き出すか。それはプレイヤーのプレイングにかかっていて。で、そこに成功体験の物語化、要はおはなしとして説得力のある形、もっと言うならヒーローズ・ジャーニーなんだけど、その形にゲームの状況を組み上げていく。そういうプレイングが重要になるわけです。普通はその辺、漠然と理解してるだけで、後から考えて、こういうことがあったんだから成功するよな、みたいな、立ったフラグに気付いて、そこからコンボでフラグを立てていくくらいが関の山なんだけど、たまに自分で最初の一本目のフラグを立てられる人っていうのがいて。これがガープスユーザーとして上手いかどうかを分ける分水嶺になってると思うんですね。

orihataya : そういうのって普通、シナリオで用意しますよね?

otneg : 今はそうだね。それが負担というか、お仕着せがましくて個人的には好きじゃないんだけど(笑)

robin.gj : だよなあ。

otneg : 楽しみの性質の違いなんですよね。出された状況をクリアする、課題解決型の遊び方と、おはなしの主人公になる、物語記述型の遊び方と。今は後者の全盛期で、そちらの方が面白い、とされていて。まあエッジのきいた課題解決型ゲームシステムもあるんですけどね。

robin.gj : あるのか。

otneg : ありますよ。サイコロ・フィクション系が主戦場になってますけど、特に齊藤高吉ゲーがオススメです。

orihataya : ハンタムとか?

otneg : そうそう。ハンタムとか。あの辺はボードゲームっぽいって言われたりするけど、それはそういうゲームだからだね。昔の、それこそボードRPGとかもそんな感じだった。ていうかD&Dにしてからが、そういう課題解決の合間にキャラクターたちを描く遊びだったわけだし。

orihataya : そっか。

robin.gj : 昔はストーリーとか言っても、レイダースとかそんなもんだったよなあ。

otneg : 『クロちゃんのRPG千夜一夜』とか『ダンジョン・シネマティーク』とかの時代ね(笑)。ガープスも、その時代にものすごく近いところにあるゲームだから。CPの発想はあの時点だとわりと新しいものだけど、ルール構築はBRPフォロワーだし。

orihataya : BRPってクトゥルフとかの?

otneg : そうそう。

robin.gj : あ、やっぱそうなのか。

otneg : まあ個人的な感想でしか無いんですけど、細かいルールの部分を見ていくと、露骨にBRPと合わせてるというか、対抗してるというか、そういう部分があるんで。あ、これ対抗意識バリバリだなっていう(笑)

orihataya : そうなんだ(笑)

otneg : 汎用システムとして先行してたBRPに、追いつけ追い越せだったんだろうし。最終的にはBRPはコア汎用型、ガープスは網羅型に棲み分けたわけだけど、レガシーなところを見ると笑っちゃうくらい近くて。だから今いった話は、大体BRPで遊ぶときのコツにもつながってたりするんよ。ただまあBRPは技能もパッケージごとに別なんで、その辺でちょっとだけ感覚が違う部分もあるんだけど。

robin.gj : まあルンケとクトゥルフの違いとかはな。技能で世界観の違いを表してるし。

otneg : その辺ですね。あとまあ能力値の扱いとかも、最新版だとクトゥルフはかなりダイナミックなアプローチしてるし。

orihataya : そういうのを覚えておかないといけないってこと、ですか?

otneg : 覚えるっていうか、まあ、そうなるかな。システムとか世界観とかごとに、そういう記述の方法だったり、傾向だったりの違いがあるんで、それはルールブックをちゃんと読んで自分なりに解釈して飲み込んでいくことが大事で。その辺が属人技術としての重さってことになったりするんだろうなあ。個人的には戦闘用のデータ読み込んで強いだ弱いだコンボがどうだ考える方が、よっぽど重ったるいと思うんだけど、それはそれを遊ぶゲームだからって言われんだよなあ。

robin.gj : 本質的にナラティブゲーマーだよな、お前。

otneg : どうだろう。自分ではシミュレーションゲーマーだと思ってんですけどね。まあでも、ゲームよりはナラティブ傾向のが強いですね、確かに。

orihataya : ていうかゲーム部分は手抜いてますよね、大抵。

otneg : うん、まあデザインコンセプトが楽しく遊んで気分よく帰ってもらう、みたいなゲームだとそうだね。それこそ古代のシミュレーションゲーマーというか、ゲームマスターのはじまりは上手い負けロールプレイヤー伝説とか。

robin.gj : ウォーシミュレーションで上手く負けるやつだな。

otneg : そうそう。普通に進めると勝てるんだけど、そこに敢えて別の仮定を入れ込んで最善手を打たないっていう。それも突然わけわかんない状況を入れこんじゃうと、あからさま過ぎて興ざめだから、予め布石を打っておく。戦場の霧にやられてるとか、本国との架空の通信とか、そういうロールプレイを入れこんで。そうやって少しずつ最適解から離れていって、決定的な瞬間を作り出す。そういうプレイング。勝つこと、成功することにヒーローズ・ジャーニーがあるように、負けることにもやっぱりそれなりの物語があって、それによって説得力が増すっていうのはあるんで。

orihataya : 負ける物語ですか。

otneg : そう。上手く負けるのって、本来、上手く勝つのと同じくらい難しい。自分のテーマの一つでもあって、わりと何度もトライしてるんだけど、よっぽど上手く書かないと、なかなか面白がってもらえないんだよね。そこの難しさを、おやくそくだから、そういうおはなしだから、ていう枠にはめ込んで投げ捨てると、そのおはなしの外側にいる人たちには全く理解されない遊びになっちゃうんだけど。TRPGは、特に今のゲームが数的に希釈されてるのは、そういう調整をしやすくしてるって部分があるんだと思うんよね。扱う数値の小さいゲームは、どうしても一点の差が大きくてピーキーになりやすいんで、そういう調整にも限界があって。逆に数値が小さいと意思決定が重要になる分、ゲームとしてはセメントに楽しめるようになってるし、だからそういうゲームではセメントにプレイするようにしてるんだけど。で、妖魔夜行の戦闘って追加ヒットポイントで希釈されてるでしょ?

orihataya : あ、そういうことなんだ。

otneg : うん。しかも攻撃はダイスの数が増えるんで、分布が安定しやすかったりする。たまにぶっ壊れた目が出てパニクることもあるけど(笑)。そういう部分にも世界観って埋め込まれてるんで。ちゃんと読めば、ちゃんと書いてある。

orihataya : はい、せんせえ!

otneg : なんだその頭悪そうな発音は(笑)

orihataya : むずかしいです(笑)

otneg : うん。だと思う。この辺の話は、だからいつかちゃんと読めるものにまとめたいなーと思ってる話。こういう視点も基本的には昔、先輩たちに聞いてきた断片的な話をまとめて掘り下げた、てか地盤沈下したようなもんだし。古い古い知恵なんだ。

robin.gj : あの頃はそういう話、よくしてたもんなあ。

otneg : まあそれで頭でっかちになって、べき論同士の水かけバトルみたいになったりもしたんで、良し悪しではあるんでしょうけどね。

robin.gj : あったあった。今考えるとアホくさかった(笑)

orihataya : なんかめんどくさそうですね(笑)

otneg : うん。超めんどくさかった。思い出としてはいいけど二度とやりたくない(笑)。まあそもそもの話、そういう読み方にしたって正解は一つじゃないと思うし、いくつかの解釈の中から自分なりに選びとるもんだと思うんで。特にテーブルトークはね。最終的には自分が遊びたいように遊べば、それが正解なんだよ。だから今の話にしても読本にまとめようと思ってるものにしても、それは僕の、なんてーかあれだ、俺流解釈にすぎない。そういう俺流解釈によって掘り起こされる遊びもあるし、そうやって一人ひとりが遊び方を探して、見つけて広げてきた歴史があるわけで。そういう気風は残したいし、一人ひとりに持ってて欲しいと思う。1巻で世界観、とかいって思いっきり投げたのはその辺ね。不親切って言われちゃったけど(笑)

orihataya : そこまでちゃんと説明すればよかったのに。

otneg : うん。ポリシーとして書いとくべきだったなあ、とは指摘されてから思った。まあであれだよ、ちゃんと書いたら何ページなるか分かんないし、最初っから知る必要のないことではあったんでってことで。

orihataya : そういう体で(笑)

otneg : そういう体で(笑)

robin.gj : これはあれだな、パワーアップキットだな。

otneg : せめて改訂版くらいにして下さい。そんな露骨に嫌われそうな言い方しないで(笑)

orihataya : エンパイアとかも(笑)

robin.gj : 売上出さなきゃならんのだろ?

orihataya : どれくらい?

otneg : 印刷関連の費用分以上の額で100部頒布。一年以内。

robin.gj : 少ないんじゃね?

otneg : そうでもないんだこれが。活字で100部って、そこそこのハードルなんよ。

robin.gj : そんなもんか。

orihataya : 売れ筋ジャンルの成人向けとかなら、すぐ出ちゃいそうですよね。

otneg : まあその辺は市場の大きさが全然違うからなあ。どれくらいなんでしょうねえ。わかんない(笑)

robin.gj : 逃げやがった(笑)

orihataya : 5倍くらい?

otneg : 5倍だと500部か。いやそこまでではないかなあ。エロは鮮度が命な部分が大きいんで、一年スパンがあっても実際に捌けるのは新刊時メインだとか、ちゃんと考えるならもうちょっと少なめに見積もったほうが良いだろうし。読本なんかロングテールなテーマだからまあ、もうちょっと楽かも。あと今はTRPGの同人界隈は結構賑わってるってのもあって、だからまあ、それくらいの差で済んでると思う。10年前だったらもっときつかったんじゃないかね。

orihataya : 改訂版は出さないんですか?

otneg : 出したいなあ、とは思ってる。もっと具体的な例を入れこんだやつ。でもまあそれは博物小誌の方でケアできればいいかとも思うんで。

orihataya : 博物小誌って?

otneg : 今話してるようなのをまとめた感じの。一つのテーマ、ルール、概念とかについて、自分の経験則をベースにだらだら語るエッセイ集、みたいな。

orihataya : それは面白そうだなあ。読んでみたいです。

robin.gj : 多分そっちのほうが需要はあるよな。

otneg : まだ推敲段階だけど、70項目くらいは初稿が上がってるから、今度ドロップボックスの方に上げときますね。

orihataya : お願いします。

robin.gj : あくまで小誌なのな(笑)

otneg : 博物誌を名乗れるような度胸はない(笑)

robin.gj : チキンだなあ(笑)

otneg : 小誌でも名前負けだと思うくらいだからなあ。誰かがちゃんと調べて本物を書いてくれたらいいなあ、とは思いますけど。商業で儲けてる人間がやってくれりゃあ、こんなに楽なことはないのに。

orihataya : 売れないんじゃないですか?

otneg : たぶんね。あと間違いが有った時のダメージが段違いに大きいとか、なんかまあ色々と事情があるんでしょう。

robin.gj : ああ、あるよなあ。本出すと大概、後で指摘されたりするし。よっぽどきっちり調査しないとだしな。

otneg : なんであくまで主観として、エンドユーザーとして遊んできた個人が、どういう風に見てきたのかをまとめるだけです。言葉選びは慎重に(笑)

orihataya : たとえば? たとえばどんなところを慎重にします?

otneg : うーん。今んところ警戒してるのは、影響って言葉。影響、ではなく傾向と書く。

robin.gj : まあわかんねえよな、影響なんて。

otneg : インスピレーションを受けたものとか、覚えてないことも多いですし、他人に言われると良い気がしないこともありますし。イラストでも自分が知らない人の絵の真似だとか言われると、軽くカチンと来ることがあったり(笑)

orihataya : あるある(笑)

otneg : そういうのはちゃんと調べないと言えない話だし、でもまあ取材とかすんの面倒なんで(笑)

robin.gj : ひでえな(笑)

otneg : なんでまあ、影響ではなく傾向と。より大きな、ジャンルとかの時代性として、そういうバイアスに対応したんだろうな。くらいの感想として。それだってねーよって言われるんでしょうけど。

robin.gj : 面倒そうだなあおい。

otneg : 果てしなく面倒だと思います。でもまあ書きたいんで。

orihataya : じゃあしょうがないですね(笑)

otneg : そう。しょうがないの。色々フラストレーション溜まってるし。

robin.gj : まあそれはいいから、別の話。てか前の話終わってねえよな?

otneg : あれ、終わってない?

robin.gj : 物語化技術だっけか。そっちの話は。あとゲーマーでなくても上手く遊べるとか。

otneg : ああ、それかあ。えーと、じゃあちょっと脱線するけど、『おおきく振りかぶって』って漫画の、外伝、番外編かな? あれに「基本のキホン!」って話があって。連載前のパイロット版だっけ。その中で、高校球児として抜きん出た能力のある椎名ってのが、自分の苦労話をするのね。それを聞いた、まああんまり才能がなくて野球辞めようかとか思っちゃってた香具山って先輩が、卑屈に笑うんだな。そういう思い出があっていいね、嫌なことがあっても頑張ろうって思えるだろうね、とかそんな感じで。これ物語の力というか、椎名の苦労話を香具山はサクセスストーリーとして受け取ったわけです。椎名の話はグダグダな話なんだけど、それをサクセスストーリーとしてヒーローズ・ジャーニーの枠組みに取り込んで理解する。成功者には理由がある。

robin.gj : なるほど。

otneg : で、読本のコラムでちょろっと触れたんだけど、テーブルトークって説得力のゲームって側面があるわけです。テーブルトークっていうか、ロールプレイングっていうか。成功者が何故成功したのか、というのを納得できる形のおはなしにするとき、たとえば苦難があった方がいい。苦労したから成功したんだって形ね。それから、協力者がいたから、理解者がいたから、そういう形。これ全部ヒーローズ・ジャーニーの要素で、読本でも三幕構成の展開図とか、それぞれの場面に登場するキャラクターの振る舞いとかって形で開示してるんだけど、そういうプロセスを踏むことでおはなしの観客は納得する。あるいはきついことを言えば、自分にはそういう存在がいないからなとか、そういう状況に放り込まれたこと無いからなと慰めたりする。

robin.gj : あるよな、そういうことは。

orihataya : でもゲームは参加者って当事者ですよね。観客じゃなくて。

otneg : ああ、そこなんだけどさ。テーブルトークって常に当事者のスタンスと、観客のスタンスがあるでしょう。他人の話を鑑賞するというか。ゲームマスターの語りを聞くのもそうだし、自分のPCが当事者になってるときでも、データを精査して客観的に何が出来るか考えたり。セッション後にもセッションを思い出して、どういう話だったか、なんて考えるのもそうだし。

orihataya : あ、そういう。

otneg : うん。そういう話。それから昔から言われる、ゲームマスターはその場のノリを壊さないように、とかそういうやつね。あれもつまるところ、説得力の話なんだと思うんよ。場のプレイヤーが納得できる形になったかどうか、ゲームマスターとしてシナリオディレクターとして納得できるプレイかどうか、そういうところで判断する。サイコロ・フィクションのルールにあるゲームマスターのツッコミってのも、これだね。

orihataya : それは納得です。

otneg : だからね、実はおはなしの体裁をとるってのは、なにもストーリーテラー志向だなんだって話じゃなく、ゲーム攻略の手段の一つなの。その説得力を、ゲームデータを中心にするか、ロールプレイを中心にするかの違い、みたいな。ワンダーローズは抽出した言葉を使って記述するし、サイコロ・フィクションはスキルパスならぬスキル曼荼羅、特技表ってキーフレーズを使って記述するし。

robin.gj : だから分かってれば初心者でも上手い人間がいると。

otneg : そういうことです。と、ひとまず休憩にしましょう。ちょっと疲れた。

orihataya : はーい。