[chat] 20090506-14

2009/05/06 [14]

prev

玄兎
「システムを作るとき、どこに力を入れるかって話なんだけど。たとえば物語を描こうとする時、物語そのものの形を示唆する方法と、物語を作るためのパーツをたくさん用意する方法ってのがあるでしょ。あと物語記述の上で理想的なのは、普通に遊んでるだけで作劇に適したエフェクトがかかって、どんどん作劇的な物語が出来上がっていくようなシステムだって考えられる」
シノフサさん(仮)
「でも旦那はそれに価値を見出してない」
玄兎
「価値を見出してないってか、ストーリードラマを考えるとゲームってノイズだと思ってんの」
シノフサさん(仮)
「どういうこと?」
玄兎
「親和性が低いってか。ドラマチックなRPGって、コンシューマでもドラマ部分にはプレイヤーが介入できないでしょ。インタラクティブムービーとか揶揄されることもあるけど、ストーリーを見たい人にとってはゲーム部分って大多数のユーザーには邪魔なんだと思う。ユーザのターゲット範囲を広げるほど、ゲームがぬるくなっていくのもそのへんの都合があって」
シノフサさん(仮)
「FFとか(笑)」
玄兎
「FFとか(笑)。まあFFに関して言うと、8が受け入れられなかった時点で完全にストーリーメインにシフトしたんじゃないかとか思う。たぶん。効率化を考えると面白いんだけど、正直あれは効率化のための情報が分散配置されすぎて、全体像が見えなくなっちゃってて。歴史的にはウォーゲームでビッグゲームがやらかした失敗と、かなり似たようなことになってる」
シノフサさん(仮)
「どゆこと?」
玄兎
「分散配置された情報が、それぞれ連携して意味を持つんだけど、そのことに気付かないとただのクソゲーにしかなんないって話。ビッグゲームなら元々あれディレッタントのゲームだから、まだプレイ外の時間に研究することもあるんだけど、コンシューマーって電源入れてる間だけしかゲームが存在しないからさ、データ集めが好きな解析屋でもないと、静的に検証できないんよ。コンシューマってたいがいコンソールで両手が塞がるから、データ取りをするときのペルソナシナリオを考えると、馬鹿馬鹿しいほどかったるい。ファミコンの頃からコンシューマはこの問題を抱えてて、まあ両手が塞がるっていうのは一点集中させるには、うん、効率的なんだけど、それが仇になってるケースね。ファミコン版のウィズなんかはオートマッピングも無かったから、ダンジョン構造は何度も往復して丸暗記するか、ちょくちょく止まって方眼用紙にマッピングしていくしかなかった。それように左手だけで操作できるコンソール、L5なんてのまで発売されてね。重宝しました(笑)」
シノフサさん(仮)
「昔からデータとったりマップ書いたりしてたんだ?(笑)」
玄兎
「ゲームブックとかでもそうだけど、自分の手製の記録が出来るのって楽しいもんだよ? て、まあそれはいいや。とにかくそういう都合があって、データを分析しないとゲームの効率的なプレーが分からなかったから、FF8は、だから非効率なプレーが横行した。それでかったるいって言われたわけで、たぶんデザイナーはそうじゃねえだろ、お前ら分かってねえよって思ってたに違いない(笑)」
シノフサさん(仮)
「(笑)へぼ将棋みたいなもん?」
玄兎
「ああ、いい得て妙だね。ドローがタルイって話があるんだけど、そのへん効率化を考えると的外れな話で。なんだっけな、FF8、考察、かなんかで検索すると、ドローとアイテム精製のシステム解析の解説してるページがあるんで、興味があったら調べてみ」
シノフサさん(仮)
「ドローで魔法を溜めるやり方は違ってるってこと?」
玄兎
「てか効率が悪いって話。工夫の凝らし方でいったら、たぶんシリーズ随一の出来だったと思うんだけど、システム的に大きなミスだったのは、非効率なプレーのリスクが時間だけっていう点でさ。リスクが戦闘でキャラがぽこぽこ死ぬとかだったら、ちゃんと解析した効率プレーが研究されて、それが情報誌なり口コミなりで普及して、もうちょっと評価が変わってたと思うんだけど。システムの出来は良かったんだけど、それに気付かせるためのチュートリアルが死ぬほど下手だった」
シノフサさん(仮)
「よく出来たゲームほど、チュートリアルが大事ってこと」
玄兎
「そうだね。それがちゃんと出来ないと、いまいち評価されないで終わっちゃう。D&Dが3.5から4にシフトしたときの、戦闘コンセプトの変更なんかもちゃんと伝えられてなかったから、旧版にくらべて4版はもっさりしてるとか、戦闘がたるいとか言われちゃってたみたいだし」
シノフサさん(仮)
「でもTRPGの場合は、そういうの探すのが楽しいんじゃん?」
玄兎
「あのねシノフサ、それはヘビーゲーマーの意見っすよ」
シノフサさん(仮)
「いやいや普通ですから(笑)」
玄兎
「あんたが普通なら俺なんか超ライトじゃねえか(笑)」
シノフサさん(仮)
「いや旦那がライトとかありえないから(笑)」
玄兎
「おいこら、どこ見てる(笑)」
シノフサさん(仮)
「(笑)」
玄兎
「まったく。で、話を戻そう。なんかもう脱線しまくりだから一気にいくけど」
シノフサさん(仮)
「ほーい」
玄兎
「TRPGの楽しみ方をどう分けるかっていうことで、まあ2の2のマトリクスを作ってみると、一つは抽象軸で、即興的な楽しみと、戦術戦略的な楽しみ。パイディアとルドゥスとか言ってもいいかもしんない。もう一つが具体軸で、目に見える事実と、目に見えない真実って分け方があると思うわけですよ」
シノフサさん(仮)
「ふんふん」
玄兎
「で、まあまず抽象軸の方を考えてみると、即興性と戦術性ってのは、そうだな、たとえばタクティカルコンバットでのダイスロールと位置取りだと思ったらいい。ダイスの出目に一喜一憂するのが即興、先々を考えながら動いてそれが成功したときの快感を得るのが戦術ね。で、ある程度のところまではこの二つは協調関係を保てるんだけど、その線を越えると相反するようになってくる。まあウォーゲームにおけるプレーアビリティとシミュレーション性みたいなもんでさ」
シノフサさん(仮)
「そのどっちに軸足を置くかって事?」
玄兎
「そうそう。デザインするとき抽象軸のどっちに軸足を置くかっていうのは、ゲームのやりこみ度を決めるから」
シノフサさん(仮)
「やりこみ度って?」
玄兎
「さっきのチュートリアルとリテラシーの話とつながるんだけど、よく出来た構造をしていても、その情報が分散配置されてると読み解くのに一苦労でさ。ヒントが無いと先に進めないわけ。しかも読み込めば読み込むほど腕が上がる、っていうか効率的な最善手らしきものに近付いていくっていう構造は、まあようするにどれだけやりこんだか、のめりこんだかで面白さが変わるっていうことで」
シノフサさん(仮)
「底の深さってこと?」
玄兎
「あと間口の狭さもね。でもまあこれってやりすぎるとビギナーとベテランの差が開きすぎて、一緒に遊びづらくなるんよ。ファミリーゲームと比較したウォーゲームの、ハードルの高さみたいなもんかな。とにかく戦術に軸足を置くと経験がそのまま腕の差になる、っていう構造になるわけ」
シノフサさん(仮)
「なるほどなるほど」
玄兎
「対する即興性ってのは、これランダマイザの、たとえばダイスの出目に全てかかってくるから、プレーの腕前っていうのは最終的には関係ないのね。すべて運任せ。だがダイスは無情だった、ですよ。これはビギナーに何のハンデもないから、ビギナーとベテランは一緒に遊ぶことが出来る。ファミリーゲームの類だね。経験には大した意味が無くて、まあせいぜいが遊び方をガイダンスできるかどうか、くらいのもんになる」
シノフサさん(仮)
「両方が協力できるって言うのは、前に言ってたガープスの上手いプレーみたいな話?」
玄兎
「そうそう。ガープスの例で言うと、最終的にはダイスを振るとしても、そのダイスロールの成功率を、それまでのプレーで上げておくっていうのは戦術性ですよ。でもまあ最終的にはダイスを振ってその結果に従わなくちゃいけない。そこが即興性。その戦術性の効果と、即興性の運否天賦のバランスっていうのが、バランスの分水嶺になったりする」
シノフサさん(仮)
「それってどんなゲームでも同じじゃないの?」
玄兎
「まあね。ただその事前準備、タクティカルとアドリブのバランスは、ダイスロールで考えてみると、事前準備で稼げるボーナスの性質にもよるもんで。まあぶっちゃければ知識によって稼げる定数ボーナスが、どれくらいダイスロールに影響するかって話なんだけど」
シノフサさん(仮)
「それがデータの読み込み?」
玄兎
「そう。んでまあここからは持論というか、ちょっと突っ込んだ話になるんだけど、人間心理の面白い機能というか、賭けに出る人間の経験心理の構造ってか、3割の法則ってのがギャンブルの心理の世界にもあるんじゃないかと思ってて。元はダブルムーン伝説で大貫さんが提唱してた話なんだけど、確率3割くらいが人間、一番ドキドキするっていう話」
シノフサさん(仮)
「野球?」
玄兎
「いやあれは3回まで試せるから1回の成功率はもっと低く設定されてるんだけど、ちょっとそれは置いといて3割。まあ3分の1から4分の1くらいの確率だあね。これくらいが一番ドキドキするっていうんだな。即興性の楽しみ、ダイスの出目で一喜一憂するとこには、その前のドキドキ感ってのも大事だから、この確率は大事。シャドウランの4版が、D6でヒットが5と6っていうのも3分の1比率で、これが実に緊張感のあるダイスロールになってる、と思うんだけどまあそれいいや。で、戦術の知識によって定数を稼いだ結果が、この3分の1から4分の1の比率を大きくはみ出しちゃうと、ダイスロールでドキドキできる量が減っちゃうわけ。ガープスで判定値15を超えるとダイス振るのに緊張しなくなるってのも、大体そのへん」
シノフサさん(仮)
「投機の話ともつながってる?」
玄兎
「かもしんない。あれはあれでまたちょっと、ってまた脱線しそうになった(笑)」
シノフサさん(仮)
「システムをデザインするときは、システムを勉強した量で稼げる定数ボーナスに差がありすぎると、初心者とベテランが一緒に遊びにくくなるって話でオッケー?」
玄兎
「そう。で、それでプレイヤーに猛勉強を要求するか、もっと気楽にその場で楽しめるようにするか、どっちをコアに据えるかってことを考えておかないと、チュートリアルのやり方も計画できなくなってぐだぐだになるって話。これが抽象軸」
シノフサさん(仮)
「あとは具体軸だっけ?」

next