[chat] 20090506-15

2009/05/06 [15]

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シノフサさん(仮)
「あとは具体化だっけ?」
玄兎
「そだね。見えるものと、見えないもの。まあ日常と非日常とかでいいかな。それっぽい言葉にすると、シミュレーションとストーリーとか、ドキュメンタリーとフィクションとか?」
シノフサさん(仮)
「いや分かんないから」
玄兎
「そりゃ失敬。で、TRPGの性質上、歴史的にもまず日常に軸足が置かれてデザインされてきたことには違いなくて、そこにどれだけ非日常ってか、フィクションってか、そういう要素がどれだけ介入するかってのがまあ、今のデザインの肝の一つかなあ」
シノフサさん(仮)
「はい質問」
玄兎
「どうぞ」
シノフサさん(仮)
「歴史的な話は置いといて、なんで日常がTRPGの性質上の軸になってるの? TRPGは非日常に旅立つものっつってたじゃん?」
玄兎
「ベリーナイスな質問ありがとう。グッジョブ。なんでかって言ったら、そりゃあメタに見てコンセンサスの問題ね。たとえば高さ3メートルの壁を登って屋敷に侵入しようとしてるキャラがいるとします。このときどうやって壁を乗り越える目標値を決めるかって言ったら、日常の、僕らが3メートルの壁を登る難しさはどれくらいだろうか? って考えて決めるでしょ。そこの思考回路は日常のもんなのよ」
シノフサさん(仮)
「じゃあそこにフィクションが介入するってどういうこと?」
玄兎
「たとえばシナリオ上、壁を乗り越えて侵入してもらえないと困るとする。まあそんなシナリオ書いちゃったシナリオデザイナーもどうよって話ではあるんだけど、とにかく困るとする。このときマスターは、シナリオ進まないと困るから、判定無しで成功させちゃったりする。これはフィクション」
シノフサさん(仮)
「キャラが普通じゃない能力を持ってたら?」
玄兎
「それは問題ないよね。判定にだけ関して言えば、それはきわめてドキュメンタリー。ただ、その普通じゃない能力ってのが既にフィクションだったりするんだけど。それはちょっと次に置いといて。今の話でいくと、シナリオなんてものは現実には無いでしょ?」
シノフサさん(仮)
「運命論者は有るって言うかもよ?」
玄兎
「まあねえ。人間の一挙手一投足が運命の下にあるならそうだわな。でもあれは苛酷な環境下で生きる人たちが、それに耐えるために開発した技術でしょう。それ以外の使い道って、読みびと知らずのジョークくらいの感覚なんじゃなかろうか」
シノフサさん(仮)
「ああ、うん、分かったから。黒く塗らないでいいから(笑)」
玄兎
「織部黒が好きです」
シノフサさん(仮)
「なに?」
玄兎
「ごめん。戻そう。えーとドキュメンタリーとフィクション。それでまあ、シナリオっていう恣意的なものによって、日常的な、常識的な状況を回避できるかどうかってのがひとつの線引き。この辺は判定方式が、上方ロールか下方ロールかでわりと分かりやすく線が引かれる。あとディスカード系はフィクション要素が強いかな」
シノフサさん(仮)
「具体的には?」
玄兎
「上方ロールの目標値って、わりと恣意的に決めやすいんよ。なにせ青天井だから。あと基準になる判定値そのものが、平均点とか基準点を持たないか認識させないものが多いんで、日常との比較がしづらい構造になってる。それに比べると下方ロールってのは天井があるし、基準点があったり振れ幅が小さかったりするのが大半なんで、常識的な評価に変換しやすい。だからマスターも心理的に、あんまり無茶なことが言いにくいってのがある。と思う」
シノフサさん(仮)
「ディスカード系ってのは?」
玄兎
「これは手札の中から目標値以上の目を出すルールで、歴史的にはトーキョーN◎VAが最初なのかな? で、まあプレイヤーがどの手札を切るかが選択できるわけだから、運命論で言うなら自分で運命を決められるってことになる。まあ手札次第ではあるんだけど、自己演出の先駆けだあね」
シノフサさん(仮)
「なるほど。システムデザインで、そういう方向性も決まるってのね」
玄兎
「そゆこと。それとさっきのすげー能力者だったら3メートルの壁なんてちょろい話は、これ魔法みたいなスペシャルパワーとヒーローポイントとかの話になるんだけど、これもフィクション側の話だね。ただ、あれもドキュメンタリー判定が前提にあるんだな。ファイヤーボールにしても、ドキュメンタリー判定では出来ない、っていうのがまず前提にあるから、それを覆すスペシャルパワーとしてのファイヤーボールがある。というか、データ化される」
シノフサさん(仮)
「ふんふん」
玄兎
「スペシャルパワーってのは、システムデザインの観点からすると、どれくらい現実から、ユーザーの身体感からはみ出せるか、って範囲を設定するものとも考えられると思う。その世界での常識が、どれくらいユーザーの常識から乖離してるかってことで、これもコンセンサスを取るのに必要な知識。世界設定の読み込みとは別に、キャラクターの特殊能力についても読み込みのお勉強が必要ってわけ」
シノフサさん(仮)
「じゃあさっきの壁のぼりの話で、シーフだから登れた、とかってのはどうなるの?」
玄兎
「それはシーフなら3メートルくらいの壁は楽に登れる、っていうスペシャルパワーとかフィクション情報による恣意的な演出でしょ。映画のワイヤーアクションとかと同じっすよ(笑)」
シノフサさん(仮)
「武術の達人は空が飛べる(笑)」
玄兎
「あんなん日常にはおらんでしょう(笑)。ワイヤーアクションといえば昔の香港映画は、て、駄目だこの話は確実に脱線する。ジャッキーとリーリンチェイとユンピョウとサモハンキンポーのネタは危険だ(笑)」
シノフサさん(仮)
「好きなんだ(笑)」
玄兎
「大好物です(笑)」
シノフサさん(仮)
「じゃあまた次の機会に聞かせて」
玄兎
「いっそ鑑賞会でもやるか(笑)」
シノフサさん(仮)
「(笑)そんな時間あるの?」
玄兎
「(笑)ねえなあ。まあ入院中にでも見舞いに来てくれたら、一緒に見よう」
シノフサさん(仮)
「オッケー、楽しみにしてる。で、あ、そうだ。ちょっと聞いておきたかったんだけど」
玄兎
「なんじゃろ?」
シノフサさん(仮)
「アラでフェイト使うときロールしなきゃいけないルールとか、オフィシャルにはないよね?」
玄兎
「無かったと思うよ。何度か説明してるけど、たぶんうちの、てか俺ローカル」
シノフサさん(仮)
「なんで(笑)」
玄兎
「いやあ、エフェクト無しにただヒーローポイント使いまーすって、味気ないっしょ?(笑)」
シノフサさん(仮)
「そりだけ?」
玄兎
「うん。でもまあ他に意味があるとすると、リソースの意味を考えて欲しいっていうのは、ちょっとあった。どういう場面で機能するリソースなのかとか。だからロール内容については特に判定しないで、コールされれば全通しにしてるっしょ。どんなにいい加減でも」
シノフサさん(仮)
「ほんとにそれだけ?」
玄兎
「いやあ、あとはフェイトってあれ、使えば使うほど経験値あがるじゃんか。それが嫌だからってのもある(笑)」
シノフサさん(仮)
「やっぱそういう理由か(笑)」
玄兎
「だってさ、ヒーローポイント使って有利になって、しかも経験値も稼ぎましたってなんか変っしょ。極論、無駄遣いしたってルール的には問題ないし。だいいち苦労した方が、経験値多そうなもんじゃね?(笑)」
シノフサさん(仮)
「前に死体に鞭打ってる人とかいたけど。フェイト使うの忘れてて(笑)」
玄兎
「やるやる(笑)。そういうのロールしてもらって、なんでやねんって笑いに変えてもらわんことには納得できんっちゅーのがあったりもした。この辺はまあ単純に僕の美学の問題っす(笑)。だからおかもっちゃんがマスターやるときは特にレギュレーションに入ってなかったと思うけど。えーと、おかもっちのレギュレーションは」
シノフサさん(仮)
「レギュレーションに入ってなくても、みんなやるようになっちゃってるから(笑)」
玄兎
「あらら(笑)」
シノフサさん(仮)
「他所いったときもやっちゃうんじゃん?」
玄兎
「他所行くのかな、あの人たち。つか行く暇あるのか連中(笑)。まあ冗談は置いといて、自分でやる分には問題ないと思うよ。自己演出は、駄目ならマスターがNG出すだろうし。ああでも他のプレイヤーがやんなかったとき、まあやんなくて当たり前なんだけど、そこで注意するとかしたらやだなあ。もう一度ガイダンスしといた方がいいかも」
シノフサさん(仮)
「了解。あとそうだ、もうひとつ質問いい?」
玄兎
「どうぞ」
シノフサさん(仮)
「旦那のマスタリングは、今の話だとドキュメンタリーよりだよね。ってかフィクションぽい演出かけないし」
玄兎
「かけないねえ」
シノフサさん(仮)
「なんでかけないの?」
玄兎
「一番大きな理由は、まあ僕の趣味だわな。本来ストーリーに劇的なものを感じるのは、体験者本人の内面だけの話だと思うんよ。外から見たらどうってことない現象も、その人にとっては大事なことっていうのは、いくらでもあって。だからそんなもんわざわざ演出しなくても、ちゃんと感情移入できてれば、ちゃんと感動できるもんだと思うってわけ。で、そのためには自分で選んだ道である方がいい。たとえば人に命令されてしぶしぶ人助けをしたときと、自分で考えて自分で選んで自分の意志で人助けしたときと、どっちが感動するったら後者でしょ」
シノフサさん(仮)
「旦那、その物言いがすでに演出してない?(笑)」
玄兎
「(笑)まあ今のはちょっとズルしたけど、本質的にはそういうことだと思う。誰に頼まれたのでもなく、ただ自分がそうしたかったから、そうする。だから一喜一憂できる。だから感動する。これがひとつ」
シノフサさん(仮)
「ってことは、もうひとつは?」
玄兎
「プレイヤーがゲーム編制するとき、なるべく余分な情報で迷わせたくないってこと。そこに作劇的な意味を加えると、同じ行動、同じ目的でも難しさが変わっちゃうことがあるでしょ? たとえば情報収集で、事件の真相を的確に突いたとしても、ばれちゃうと作劇的に都合が悪いから、やたら判定が難しくなるとか。それってプレイヤーの頑張りを無にしてるようで嫌なの。俺は」
シノフサさん(仮)
「(笑)なんか旦那らしいっていうか」
玄兎
「まあ、ひとつの考え方でしかないし、たぶんにレトロな思想ではあるんだけどね。あとはルールとマナーの履き違えとか、キャラとプレイヤーを分けすぎるのも、僕個人としてはあんまり好ましくないと思ってる」

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