[chat] 20090731#8

『GURPS』の創作への応用
玄兎
「そうそう。ストーリーモデルで思い出した。小説でも漫画でも映画でもアニメでも良いんだけど、創作について多少なりと理解があれば、おはなしを作るときは便利だと思いますよ、『GURPS』は」
ケイ
「どういう風に便利だと?」
玄兎
「推敲に。ひとつには、キャラクターの運動に一貫性を持たせられること。特徴で制御されますんで、どこで葛藤してどこで振り切って、あるいは囚われて暴走して、とかそんなエフェクトが自然にかかります」
ケイ
「ふんふん。それから?」
玄兎
「あとはまあ、大きいところはリアリティですかね。ルールが物語ではなく現実の現象をベースに構築されてますんで、ストーリーテリングとリアリティのすり合せが、自動的に行われることになります。パーフェクトではないにしても」
ケイ
「なるほど」
玄兎
「『GURPS』の面白いところのひとつが精神的な特徴にあって、不利な精神的特徴は内向的にこう、プレイヤーがダイレクトに被害を蒙る方向で機能するんですが、有利な特徴は拡張的に、社会に対する影響力として機能してその、利益があくまで相手任せになるんですよね。第三世代以降の、もっと数学的なゲームシステムでは、この手の処理って敬遠されがちなんですが、この旧世代型の人間任せの処理が、むしろ社会的というか、僕としては現実寄りのリアリティがある、と考えるところで」
ケイ
「コントロールしやすいところでもあるし、しにくいところでもあるわな。コンセンサス任せってのは」
玄兎
「その手の掛け合いが、ひとつの醍醐味だと思うんですけどねえ。えーまあそれは置いとくとして。それから、同じくリアリティに属する話としては、モブとキャストの格差を意識的に構築するところとか。このとき役に立つのが【特殊な背景】です」
ケイ
「どういうことだ?」
玄兎
「ワールドセットのモデリングをどれくらい意識的に行うか、って話なんですが。たとえば錬金術という技術があるとして、それは一般にどれくらい膾炙していて、また逆に秘匿されているのかとか、そういうことが【特殊な背景・錬金術を習得している】に必要なCPに、まるごと集約されるわけです。CPの格差について理解していれば、たとえばオーバーテクノロジーを修得するときのCPとどれくらい違うかで、それがどれくらい社会的なズレがあるのか、とかいうことを分かります」
ケイ
「そこはゲーム的な解釈は入らないのか? PCみんな錬金術師だから【特殊な背景】要らないとか」
玄兎
「そういう処理をする人もいますね。けどまあ逆に、たとえばPCはみんな錬金術師でも、世間的に錬金術師が特殊であるなら、初期CPを上げて均一に払わせるって処理があるわけで。ああ、えーとだからつまり、たとえばPCが武装錬金術師になる話があるとして、錬金術師を学ぶには【特殊な背景】に20CP必要としたら、キャラクター作成時のCPを20点底上げする、って処理をすれば問題ないわけで」
ケイ
「その20CP底上げするところが、ゲーム的な処理ってわけだ」
玄兎
「ですね。ゲームのキャラクターと、ゲーム世界の一般人とを乖離させるプロセスになります。【特殊な背景】は、社会とキャラクターとの乖離とか、ある種の可能性みたいなもんを相対評価したもの、ってことになるかと。ああ、でも【特殊な背景】が特殊なだけで、なんも利点がなければ0CPなんですが」
ケイ
「たとえば親が権力者、とかいうのは【特殊な背景】になるのか?」
玄兎
「それにしても、いくつかの表現方法があるんですけど、それによって社会的な権力を行使できるなら、【地位】やら【階級】やらを取るとか、ちょっと敬われるだけなら場面によって【名誉階級】とか【社会的尊重】とか。経済的なものなら【財産】とか、小遣いが多いだけなら【副収入】とか、わりかし色々と【特殊な背景】以外の特徴で表現できますんで、それ以外の特権的な構成要素を扱う時に使うもんでしょうね」
ケイ
「じゃあ、どんなのが【特殊な背景】になる」
玄兎
「まあ、さっきの錬金術みたいな、技術とか能力とかに関係するものを特権的に取れる権利とか。妖魔の【特殊な背景・妖怪である】なんかも、妖力とか妖術が取得できるっていう特権を表すもんですわな」
ケイ
「要はオプションを拡張するためのもんか」
玄兎
「あとは、キャラクターデータにならない、常識を書き換えるときにも使います」
ケイ
「常識の書き換えってな何だ」
玄兎
「えーとですね。たとえばタイムトラベラーが能力を失ったとしても、未来や過去の知識は持ってるわけですよ。んでまあ、そういう知識ってデータにならない部分があるわけですけど、データにならなくても知ってることで、本来取りえない行動が発生することがあるわけで」
ケイ
「ああ、なるほど」
玄兎
「まあこれにしても、たとえば統合技能として《義務教育》とか取って表現することも可能なわけですが」
ケイ
「《義務教育》なんて技能、あったか?」
玄兎
「ないですよ」
ケイ
「ねえのかよ」
玄兎
「ないです。でもまあ、それくらい作ってくださいよ。ファンジンの『ガープス・リリアン』でも、国語数学理科社会、あと英語もか、追加技能としてちゃんと搭載されてましたし。ここんとこ触ってないんで記憶はあやふやですけど、確か『ガープス・リリカルスクールテイル』だったか、すげえ出来のいい学園もののファンジンサプリでも、確かそんなのが有ったような気がします」
ケイ
「ああ、それなりに一般的な発想なのな」
玄兎
「『GURPS』扱ってると、そういうの気になるようになりますんで。その手の常識について、どこまでデータでフォローしていくかってのは、ワールドセットのデザインをするときには考えます」
ケイ
「そういうもんなんだな」
玄兎
「まあ『GURPS』に触れたら、大抵の人が自分のデータ化の道を通りますんで。学力とか気になる世代は、一度は通る道じゃないかと」
ケイ
「で、その技能にはどれくらいCP食われるんだ?」
玄兎
「そうですねえ。まあ難易度は易として、1CPで小学校低学年、2CPで高学年、4CPで中学卒業、8CPでほどほどに真面目、12CPでがり勉、くらいでしょうか」
ケイ
「どういう計算だそれは」
玄兎
「キャラ作成の段階で1歳あたり2CP使えるんですが、逆に1CPごとに起きてる時間の半分を、その技能に突っ込んでると考えて。まあ実際には、起きてる時間の半分どころか30%くらいで割り当てられるもんだと思いますが。人間、技能にならんような無駄な行動って多いし」
ケイ
「でもそれ知力が高かったら違うだろ」
玄兎
「まあそうですね。平均値で考えてます。小学校のテストは、低学年で+6、高学年で+3、中学はボーナス無しとか。まあ1年ごとにボーナスを1ずつ減らしていくようにすりゃ、だいたい判定値10から14くらいの枠に入るかなと。判定値のパーセンテージがそのまま得点と考えると、平均ってだいたいそんなもんなんじゃないかな。もっと難しかったっけ?」
ケイ
「赤点は平均点の半分とか、そんなだった気がするな。そうするとまあ、それくらいか?」
玄兎
「あれ、赤点って30固定じゃありませんでした?」
ケイ
「そうなのか? うちは毎回変わってたけどなあ。その辺は学校によって違うのかもな」
玄兎
「赤点が変動するのって高校からだとばっかり。まあいいや。とにかく技能一つでそういうことも表現できますんで」
ケイ
「なんだっけ?」
玄兎
「だから。『GURPS』のワールドセットの表現力とか」
ケイ
「ああ、創作に役に立つって話だったな」
玄兎
「そうそう。たぶん」
ケイ
「たぶんかよ」
玄兎
「まあ、この手の話はどんどん流れて変わっていってナンボですから」
ケイ
「ログ起こしたら大変なことになってるぞ」
玄兎
「お任せします。適当に更新しといてくれると、僕が楽で良い。印象論が多いから、なんぞ叩かれるかも知れんのは、怖いですけど。ああそうだ。あと、できればサブタイ付けて分けてくれるとありがたい」
ケイ
「好き勝手言ってやがんな」
玄兎
「まあ、お願いしますよ」
ケイ
「考えとく」
玄兎
「よろしくお願いします」

「[chat] 20090731#8」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ペテン師の戯言。 :: [index] 20090731

コメントは受け付けていません。