[note] マスタリングの枝葉末節

ほとんど言語化されてない気がする、マスタリングの作文法。

まあ「実際のセッションでここまで形式化する必要があるのか?」と問われれば、基本的には「無い」と答えるのだけども。それは人それぞれの遊び方を阻害したくないからであって、僕個人としては必要だと思ってたりする。

マスタリングのテンポ、言い換えると場面の解像度のコントロールについては、この辺を考えないと始まらん……というのが僕のマスタリング技法の骨子なので。遊ぶゲームシステムごとの特性や、参加者のスタイルに合わせた場の構築は、コレのコントロールが全ての基盤になっている。

ということでリハビリがてら、ちょっと書いてみようか、というマスタリングの作文法。

マスタリングと遊びの解体。

マスタリングの作文法

そもそも「マスタリングの作文法」とは何か。

これはセッション中にゲームの状況を構築し、ゲームプレイによって改変する、その一連の流れを「一つの文章を作るプロセス」と見做して整理したもののことです。

これを行うため、まずはプロセスを文節に解体していきます。

マスタリングの文節

文法における「文節」とは、「文章を意味が通じる範囲で分割した最小単位のもの」のことを指します。

ただしマスタリングの文節について言うと、そもそもの「文章」が随分と大きなものになるので、文節ももう少しアバウトに捉える必要があります。そこで本稿ではマスタリングの文節を──

「ゲームマスター、またはプレイヤーの振る舞いの最小単位」

──と定義しておきます。

文節の分類

マスタリングの文節には、大きく分けて以下の6種類があります。

  1. ゲームの状況を説明する
  2. プレイヤーに質問する
  3. プレイヤーに応答する
  4. ルール適用を宣言する
  5. 行為判定のためランダマイザの使用を催促する
  6. 雑談

これらは更に、以下のように細分化できます。

  1. ゲームの状況を説明する
    1. 時間
    2. 場所
    3. 空間(ルール)
    4. 五感(フレーバー)
    5. キャラクターやオブジェクト
    6. リソース
    7. シナリオの背景
    8. プレイヤーへの要請
    9. 予言
  2. プレイヤーに質問する
    1. 行動
    2. 目的
    3. リソース
    4. 希望
  3. プレイヤーに応答する
    1. 状況説明の詳細
    2. 結果の予想
    3. 変動するリソース
  4. ルールの適用を宣言する
    1. ルールの適用範囲
    2. 判定の方法
    3. 必要なデータ
    4. リソースの増減
  5. 判定のためランダマイザの使用を催促する
    1. 口頭で催促する
    2. 必要なランダマイザを操作する
    3. 使い方を説明する
  6. 雑談

文節を活用する二つのマスタリング

マスタリングをする際、これら文節を意識的に扱うことで、より効果的に、スマートなマスタリングが出来るようになります。

(逆にこれら文節を理解せず、漫然としたマスタリングを行っていると、プレイヤーに伝える情報の焦点がボヤけ、ゲームマスターの意図が上手く伝わらなくなってしまいます)

文節を活用するマスタリングには、大きく分けて二つの流儀があります。

  1. ゲームマスターの説明を優先する(プレモダン)
  2. プレイヤーの質問を優先する(オールドスクール)

ゲームマスターの説明を優先する

「ゲームマスターの説明を優先する」マスタリングとは、ゲームの状況ごとにゲームマスターが基礎情報を全て公開するまでプレイヤーの質問を保留するマスタリングのことです。

マスタリングの最中にプレイヤーから質問されても「話し終わるまで待ってください」として、ゲームの状況を参加者全員で把握することを目的とします。

ゲームシナリオが予め用意されており、状況ごとにゲームマスターが何をするのか、プレイヤーに何をして欲しいのかが決まっている際、特に有効な手法となります。

プレイヤーの質問を優先する

「プレイヤーの質問を優先する」マスタリングとは、ゲームマスターが基礎情報を公開している最中でも、プレイヤーの発言を認めてその質問に応答していくマスタリングのことです。

プレイヤーの質問に適宜応答することで、状況をリアルタイムに生成します。プレイヤーの行動を優先し、プレイヤーの関心に沿ったゲームの状況を生成することを目的とします。

ゲームの状況が確定的でない──いわゆる「アドリブ」的な──マスタリング、あるいは物語をプレイヤーたちの語りによって作っていくナラティブゲームの楽しみを演出する際、特に有効な手法となります。