[chat] 20100731#8

オブジェクトカードの狙い、ゲームスケールに合わせる、シンプルさのデザイン

シノフサさん(仮)
「オブジェクトカードって、それなの?」
玄兎
「うん?」
シノフサさん(仮)
「フェアにするためのものなのって?」
玄兎
「ああ、うん。あれは本来あんまり公平に処理されないゲームマスターの裁量を、ローカルではあるけど可能な限りフェアな状態に近付けるための、一種のマジックアイテムというか」
シノフサさん(仮)
「ゲームマスターの裁量で動いてたものを、定数にするわけでしょ?」
玄兎
「そうそう」
シノフサさん(仮)
「戦闘ルールと同じ土俵にあげちゃうわけ?」
玄兎
「そんなところ。まあ要するにゲームシステムそのものをみんなで作ってるようなもんなんだけど。運用面での違いは、オブジェクトカードは戦闘スキルみたいなPC固有のデータじゃなくて、ステージデータを使うってこと。ステージデータの生成は、大道具をゲームマスターが、小道具をゲームマスターとプレイヤーがそれぞれ半々で行う。てことは、大道具と小道具の比率が半々だったとして、ゲームマスターは半数以上の確率で、ゲームの主導権を握ることになる。でも逆にステージそのものをプレイヤー側がセッティングできる状況にされれば、プレイヤーが主導権を握って進めることも出来る。この辺はPCのデータ制限を超えたところで、機転を利かせる面白さがある、と思う。あとはまあ、マスターの出すお題を使ってプレイヤーがどう答えるかっていう、一種のお座敷芸になってたりもするんだけど。他にも目的有るんだけどね」
シノフサさん(仮)
「ていうと、どんな?」
玄兎
「話題にする。前に話したかも知れないけど、あれも小さなリプレイみたいなものだから。んで僕が大きくタッチしてるプレイグループが都合、ええと、明星と羽根と雛鳥と、あと石版か。それで四つ。シノのところも入れれば五つだけど」
シノフサさん(仮)
「うちのは旦那と顔合わせると、ねー(笑)」
玄兎
「(笑)逃げてるわけじゃないんだよ? ただそのちょっとなんだ、遊んでるとこ見られると、遊んでる暇あるならって言われるのが嫌なだけで。ちゃんと納期守ってんだからいいじゃんかって言っても、仕事増やされるのがオチだし。まあだからそのあのそれはいいんだ。とにかくメインで関わってるのが四つ。総勢31人。実際はお互い多少ブリッジがあるんで、大きなプレイグループとみなしてもいいんだけど、まあ年齢とか仕事のつながりとかで普段は分かれてるんで。とにかくそのどこかでセッションが行われると、作られたオブジェクトカードの交換が行われたりする。ついでにその時の状況とかが話題になったりする。ゲーム外でもゲームの話題で話せるっていうのが、プレイグループ存続のコツだと思ってるんで、まあそういう目的だよね。ゲームマスター同士で、なんでそういう判断になったのかを話し合ったりすることもあるし」
シノフサさん(仮)
「旦那んとこってあれ? けっこう真面目にゲームやってる感じ?」
玄兎
「どうなんだろうねえ。あんまりガチガチにルール運用したり、シビアなゲーム展開したりっていうのは、やってるつもりないんだけどね。僕がマスターしてるときは、のんびりキャラゲーやりながら、たまにパーティゲームで遊ぶくらいの感覚かなあ」
シノフサさん(仮)
「パーティゲーム?」
玄兎
「あんまりこう、真剣勝負って感覚がないんだよね。それが出来るのは敵のデータの設定権を僕が持ってない時だけっていうか」
シノフサさん(仮)
「そんな状況有る?」
玄兎
「あるよ。商業シナリオ使うときなんかは、ガチでやります。ストーリーラインは適当に改変することもあるけど、判定系と戦闘はガチ」
シノフサさん(仮)
「なんで?」
玄兎
「なんでって言われても。なんかこう、商業シナリオってプレイヤーが挑戦するもの、みたいなイメージが強いんだよね。いつの頃からか知らんけど、そういう感覚があって、だからバランス調節とかもしないで遊んで、失敗したらまた挑戦するとか。他人のシナリオ遊ぶときは、ゲームマスターじゃなくてレフェリーに徹する感じ」
シノフサさん(仮)
「その感覚は、分かんないかも」
玄兎
「まあ、そうなのかなあ。古い人に共通するもんなのか、それとも僕だけなのか。どっかで機会があったら商業シナリオをどう扱ってるのか、世代別とか主要システム別とかで聞いてみたい気もする。『ミストキャッスル』とか『フェアリーガーデン』とか考えると、そんなに特殊な考えじゃない気もするんだけど。いや、そう思いたい(笑)」
シノフサさん(仮)
「それは諦めたほうがいいんじゃん?」
玄兎
「そう考えると知りたくないかもしんない。チキンハート(笑)」
シノフサさん(仮)
「かっこわる!(笑)」
シノフサさん(仮)
「そういやあれは? ライフワークだっけ? あれもパーティゲー?」
玄兎
「いや、ライフワークスは別。どのシリーズも基本ガチでやってる。あれはPCがパンピースタートの死んで当たり前のゲームだから。放っておいたってガチガチに守ったって、どうせ老衰で死ぬんだし(笑)。サバイバル要素の強い社会だから、頑張って生きないと良い人生だった、て言える死は迎えられないし」
シノフサさん(仮)
「具体的には?」
玄兎
「逃げまわってると大概が孤独死になって、CPを継承できずに終わる」
シノフサさん(仮)
「あれって何年分くらい遊ぶもんなの?」
玄兎
「ものによるかなあ。一世代を必死に遊ぶ大戦級の場合だと、まあ30年から50年くらいの話だけど、最長のキャンペーンはゲーム内で1200年くらい経ってるし」
シノフサさん(仮)
「1200年って。どんなゲームよそれ」
玄兎
「分かりやすく言えば『ロマサガ2』みたいなもんだよね。だいたい二世代くらいやって、ひとつの集団の大事件に区切りがついたら2D4×20年後、とか。一番最初の家族なんかは石器時代で黒曜石のナイフで呪術大戦やってたけど、今は騎兵隊が当たらないマスケット銃撃ちまくったりしてるよ」
シノフサさん(仮)
「魔法は?」
玄兎
「有るっちゃ有るけど、古き良き魔術師は異端扱いされてるから、使い手は減りまくってる。レトロな魔術師はコストパフォーマンス悪いから国家も養護してくれないし。魔法使いを養護するくらいなら、鍛冶屋と炭鉱掘りを養護するよ、連中は」
シノフサさん(仮)
「じゃあ事実上の壊滅状態?」
玄兎
「うんにゃ。教会に帰順した魔術師は生き残ってるよ。だって使いようによっては便利だし。といって奇跡を勝手に起こされたら困るから、その辺は管理下に収めておきたいって都合もあるし」
シノフサさん(仮)
「なにその生々しい魔女狩り」
玄兎
「いや、普通に考えたら普通にそうなるって。第一その教会で神とか言われてるのって、最初期の魔法使いPCだったりするし」
シノフサさん(仮)
「えー(笑)」
玄兎
「いや、まあそうなんだよ。一時代終わったときに継承判定ってのがあって、PCそれぞれの実績がどれだけ未来に影響するかってのを決めるんだけどね。それで女賢者のPCがクリティカルして、詩文を残したんだけど、プレイ中に書いてた詩文ってのが仲間の魔法使いのエピソードでさ。神話になっちったの(笑)」
シノフサさん(仮)
「な、なんだってー(笑)」
玄兎
「そしたら次の時代に、その魔法使いの子孫てのが、神話をバックに地位レベル上げてきやがって。神権政治じゃん。落ちぶれてた先祖の仲間の子孫、まあ要するに前世代のPCの末裔をかき集めて変な教団作っちゃってさ。でも目障りだってんで、時の権力者に追放されたらモーゼよろしく信者連れて逃げやがった(笑)」
シノフサさん(仮)
「もうどこから突っ込んでいいの」
玄兎
「そいつもまあ逃げ切れずに最後は野垂れ死にするんだけど、信徒使って祈願の魔化品作ってやがって、継承判定で通常成功をクリティカルにしやがって。結果、内海を挟んだ隣の国に行って存続しちゃって。次の時代ではその国の権力者と結びついて返り咲き、更にその次の時代には聖戦だとか言って元の国に軍隊率いて戻ってきやがった」
シノフサさん(仮)
「それTRPGなの?」
玄兎
「TRPGだよ。シンプルなフレームさえあれば、張るテクスチャを変えるだけで、どういう風にだって遊べる。ライフワークス・ヒストリカルエイジは全部『ガープス』で賄ってるから、『ガープス』の四つの能力を、それぞれ組織の結束力、行動力、政治力、経済力に置き換えてパラメータ化して、一人のキャラクターとして扱っただけ。難しいことはなんにもしてない。法人って言葉があるように、組織をひとつのキャラクターとみなせばいいだけで」
シノフサさん(仮)
「それで遊べちゃうんだ」
玄兎
「それで遊べちゃうんです。マネーゲームとかさ、漫画なんかでもあるでしょう。それこそ『ロマサガ3』の買収ゲームとかでもいいんだけど、ああいうのは会社やら企業やら商会やら、とにかくまあそういう組織が一キャラクターの単位として扱われてるわけで。TRPGのキャラクターのヒットポイントの原型は、ウォーゲームのユニットの兵数だったってんだから、逆流させるのは簡単だよ」
シノフサさん(仮)
「それがさっき言ってた戦闘以外のシチュエーションも、戦闘ルールと同じようにやるっていうやつ?」
玄兎
「そうそう。それも『ガープス』のコアフレームがシンプルに作られてるお陰。あのシステムは馬鹿馬鹿しいまでの拡張性が売りではあるんだけど、ちゃんと解体して見れば、コアフレームからどのレベルでもデザイン次第で遊べるように出来てる。シンプルなデザインの心得っていうのがあって、何年か前に聞いた話なんだけど。最後にこの辺を話して終わろう」
シノフサさん(仮)
「はーい」
玄兎
「ツールとインターフェイスのデザインについて考えたとき、それをシンプルに、スマートにするために最初に考えるべきことは、主語と述語、あるいは対象と技術で2×3のマトリックスになってる。まず主語、デザイン対象は、時間と機能。それから述語、デザイン技術は、削る、隠す、明瞭化する。この2×3で、デザインがシンプルなものとして受け入れられる」
シノフサさん(仮)
「時間を削る、時間を隠す、時間をはっきり見せる?」
玄兎
「イエス。同じように、機能を削り、機能を隠し、機能を明瞭化することが、機能デザインをシンプルなものとして受け入れてもらいやすくする。これはOSのGUIモデルなんかを考えると、分かりやすい。まず時間を削る。つまり可能な限り短縮する。ハードウェアの効率的な運用によって、可能な限り処理を高速化する。それから時間を隠す。これは必要な処理を裏側でこっそり並列処理することで、処理してることを意識させない。最後に時間の可視化。実際に処理していることについて、残り時間がどれくらいかを見えるようにする」
シノフサさん(仮)
「可視化と隠すのって矛盾してない?」
玄兎
「これは目的次第なんだよね。隠していいものは隠すし、隠せないものははっきり見せる。隠せるものっていうのは、隠してもユーザに不利益が生じないもの。可視化するものは、隠すことでユーザが不利益を被るもの。まあ実際にはユーザじゃなくてメーカーの利益、不利益の基準だったりするケースもあるんだけど。海賊版対策の自動アップデートとか」
シノフサさん(仮)
「(笑)セコい」
玄兎
「死活問題なんだからセコい言うな(笑)。まあ、機能の方について考えちゃったほうが早いかも知れない。この利益、不利益については機能の方で基準になってくる、ターゲットユーザとかシェアとか、そういうものに関する話だから。もっと言うと、ターゲットユーザをペルソナとするペルソナシナリオ、なんて話になってくるんだけど、これはシノには話してないよね?」
シノフサさん(仮)
「ブログでは読んだけど」
玄兎
「あ、読んでくれてるのか。なら話は早いんだけど、つまりああ言う具体化されたモデルから、基準を作ってデザインする。まずは必要のない機能を削る。次に削れないけど優先順位の低いものは隠す。削ることも隠すことも出来ないものは可視化する。テレビリモコンとか、iPodなんかを考えると分かりやすい。あるいは携帯電話でもいいや」
シノフサさん(仮)
「削るのと見せるのは分かるけど、隠すってどういうこと?」
玄兎
「言葉通り、リモコンならボタンを隠しちゃう。多機能リモコンでも、普段あんまり使わないようなボタン、モニタの輝度調整とか色彩調整とか、あるいはボタンとチャンネルのセットとか、そういうのはシャッターで隠してたのが、結構有った。あるいは携帯電話なんかで考えると、アプリとかファイル閲覧とか設定変更とかやるためのボタンは、そういうメニューを呼び出すためのボタンにまとめて、その中に隠しちゃった。これはWindowsのスタートボタンなんかも同じ原理だね」
シノフサさん(仮)
「何となく分かったかも。その隠すものを選ぶ基準が、ペルソナシナリオなのね」
玄兎
「そう。で、更にもうひとつ、隠すプロセスで重要になることがある」
シノフサさん(仮)
「ていうと?」
玄兎
「機能を全部並列にして、ずらっと並べると手間なんだよね。だから、構造化する。構造化されてない場合、たとえばWindowsでスタートボタンを押したら、Windowsで出来ることが全部一気にズラっと並んじゃうようなもの。たとえばファイル1をディレクトリAからディレクトリBにコピー、ファイル1をディレクトリAからディレクトリCにコピー、ファイル1をディレクトリAからディレクトリBにコピーしてディレクトリAのファイル1を削除、ファイル2をディレクトリAからディレクトリBにコピー、ファイル2をディレクトリAからディレクトリCにコピー、ファイル2を」
シノフサさん(仮)
「もういい。じゃあ構造化するとどうなるわけ?」
玄兎
「たとえばだけどね。スタートボタンを押すと、ファイルのコピー、ファイルの移動、てメニューが出る。そこからファイルをコピーを選択すると、次にどのファイルをコピーするのかを選択する画面になって、その次にファイルをコピーする先を選択する画面になる。最後に決定ボタンを押すと、晴れてファイルが指定の場所にコピーされる、となる」
シノフサさん(仮)
「余計に手間かかってない?」
玄兎
「でも膨大なメニューの中から必要なものを探して実行するより、簡単そうでしょ? 覚えることも少ないし」
シノフサさん(仮)
「それはそうかもだけど」
玄兎
「まあ慣れてる人にとっては、コマンドラインから一気にCUIで叩いちゃったほうが早いんだけどさ。かくいうコマンドラインにしても、構造化されてるんだよね。たとえばコピー、スペース、ディレクトリAファイル1、スペース、ディレクトリB。で、エンター。あるいはムーブ、スペース、ディレクトリAファイル1、スペース、ディレクトリB、エンター。言語っていうのは構造化された最たるもののひとつで、単語それぞれに与えられた属性と、構文によって決められた配列の組み合わせで、意味を形成する。意味を形成するっていうのは、言い換えると言語としての機能を発揮するってことで、目的を達成する、と言ってもいい。さっきの例示では、ファイル1をどうする、対象ディレクトリはアルファベット順、コピー、次に移動、なんて序列を整理されたものとして話しちゃったけど、そういう属性と構文が整理されてなかった場合、探すのはより困難になった。構文が整理されていたとしても、属性が序列化されてなかったら、まず戦闘にファイル1って書いてあるメニューを探して、見つかったら次にそれがディレクトリAって書いてあるか、更にディレクトリBって書いてあるか、最後にコピーって書いてあるか、ていうのを虱潰しに調べないといけない。大きさと柄が微妙に違ったトランプのセットを全部ばら蒔いて、未整理状態でばらまかれたカードの中から、テレホンカードサイズで裏面がトリコロールカラーのスペードのエースを探してください、て言われるようなもんだ。これならどう?」
シノフサさん(仮)
「手順が多くてもいいです(笑)」
玄兎
「まあ、そういう次第。さっきは何気なく話したけど、携帯電話で隠された機能、アプリケーションとか、設定変更とか、あとなんだっけ? なんかまあ、とにかくそういうのも構造化によって分類、整理されたあとの状態なわけで。そして構造化されちゃえば階層化、手続き化っていうんだっけ? ユーザは操作についてのリテラシーさえ覚えれば、後はダイアログ形式に沿って操作するだけで目的が達成できる。より簡単になるって話」
シノフサさん(仮)
「それはでも時間かかるじゃん。さっきCUIの方が早いみたいなこと言ってたでしょ?」
玄兎
「そうだよ。でもそれがペルソナシナリオ上、必要と判断されたら、それはもうどうしようもない。機能的に必要なものとして、その中で可能な限り削減する方法で進めるしかない。だから普通は機能が優先されて、時間は機能要求の制限の中での努力ってことになる。でもそれはツールデザインの話なんだから、ツールに必要とされる機能を削減しちゃったら、ねえ(笑)」
シノフサさん(仮)
「そっか。本末転倒なんだ」
玄兎
「そういう話。この辺はシステムデザインにも、テキストデザインにも使えると思うんで、なんかしら企んでる人には役に立つんじゃないかなー、とか。それじゃあ本日はお疲れさまでした、てことで」
シノフサさん(仮)
「長い時間ありがとうございました」
玄兎
「いや、それはこっちの台詞。ぐだぐだ長話になっちゃってごめんね」
シノフサさん(仮)
「最後にいい話聞けたし」
玄兎
「ちょっとだけだったけどね(笑)」
シノフサさん(仮)
「もしかして、まだしゃべり足りないの?」
玄兎
「リプレイとシンプルさの話が出たから、あと何だろう。スタディの話くらい? まあ時間ないからいいよ」
シノフサさん(仮)
「今回も時間いっぱいまで喋られちゃいました。でも珍しい話も聞けたし、面白かったし」
玄兎
「そう言ってもらえれば。文字おこしは、またケイさんあたりがやってくれるかな。その折はよろしくってことで。じゃあ、本当にお疲れ様でした」

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