振り返ってみると『MAGIUS』なんかもそうだけど、微妙にこう、日の当たらなかったタイトルばっかり調べてる気もしますが(笑)
なんの勢いなのか、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』を入手してしまいまして。
読んでみたら興味深かったり、遊んでみたら地味に面白かったりしたので、簡単なレビューを…… 5分くらいでサッと済ませるはずが全部書いちゃったよ!
ページの内容
原作アリ
えーと、これは『甲竜伝説ヴィルガスト』っていう原作があるんですね。
僕らの世代だとそれなりに人気があったタイトル……らしいです。
……いや、でも全然知らなかったんですが。
かなり後になって、「ケイブンシャから出てる TRPG のルールは『恐竜戦隊ジュウレンジャーRPG』以外にも有る」ってトリビアから知ったくらい、全く知らなかった(^^;
判定ルール
戦闘ルールしかありません(笑)
しかも TRPG としては相当ユニークな、チキンレース的な戦闘です。
リソースは HP のみ。
データは AD(攻撃が成功したときに与えるダメージポイント。素手の場合は基本 HP と同値)、DP(攻撃を受けたときに減らせるダメージポイント。盾を装備しないと関係ない)の二つだけ。
実に分かりやすい(笑)
ランダマイザは使いません。
さてその戦闘ですが。
「対決する両方のキャラクターが、互いに攻撃時に消費する HP をコールし、その値が大きい方が攻撃を成功させる=ダメージを与える」というルールです。
『T&T』のように、ポイントで上回った一方だけが殴れます。
というか、たぶん元は『T&T』なんじゃないかと勘繰ってます(笑)
プレイヤーVSゲームマスターの構図がハッキリしてて、プレイヤーがマスターの性格を読み込むあたりは『Aの魔法陣』に近いかもしんない(笑)
ちなみに攻撃に費やした HP は、勝とうが負けようがお構いなしに減ります。
また、消費した HP が同じだった場合は引き分けで、両者の攻撃が失敗に終わります。
基本的には一騎打ちの構造になるようにしますが、1人対複数の処理式もあります。その辺はちょっとだけ複雑なので省略。
戦闘の戦術性というか、悩みどころというか
非常にシンプルで、現在の戦闘なんかと比べても戦術性に欠けるといえば欠けるんですが、これが地味に面白かったりします。やってみると分かるんだけど、これ、それぞれのバトルの結果によって戦場が流動的になるんですね。
一騎打ちなら単純に HP 残量が多い方が勝ちます。
ただし与えられるダメージ以上に自分が消費しても、相手の消費 HP が少なかったらバカを見るだけなので、「大体これくらい消費してくるだろうな」という予測を立てておかないと、逆に差が縮まってしまうケースもあります。
その辺の駆け引きは心理戦です。
また雑魚戦なんかは HP を大量消費で一撃必殺してもいいんですが、そうすると次のターンで他の敵に狙われたらアウトです。ですからやっぱり適正値を見計らっておかないと、後で痛い目を見ます。
ちなみに HP は、戦闘終了後に最大 HP の半分の値だけ回復します。
この辺がまた、継戦を考えるときの頭痛の種だったりして。
この戦闘を楽しむヒント
実際にやってみたときは、ゲームチップを使用しました。*1[ゲームチップ] = 今回は硬貨(10円玉)でやったけど、出来れば26mmチップあたりが取回しがいいかな。環境にもよりますが
ダイスレスなので基本、コールだけなんですが、そこでこの手の小道具をひとつ噛ませると、それだけでちょっと違った味になります。実際にやったのは、
- HP と同値のチップを持ってスタート
- 消費 HP 相当のチップを用意
- コールと同時にチップをテーブル中央へ
- 枚数を確認して、チップは墓場行き
- 負けた側は、受けたダメージ分のチップを支払う(これも確認後に墓場行き)
とかまぁ、そんな程度なんですが。
そんな程度でも小道具でやり取りすると、ただ引き算するよりも楽しかったりするから不思議です(笑)
データ
データ(数量化されるもの)は、PC、アイテム、モンスターくらいのもので。
この辺はあんまり書くことも無いんだけど、強いて言うとアイテム管理のルールがちょっと面白くて……
- 武装は装備しているものしか持ち歩けない
- 重要アイテムは 1キャラ 1個だけ持ち歩ける
- 消耗アイテムは制限なし
こんな感じなんですね。
ちなみに装備出来ない武装は捨てていかなきゃいけません。
この辺なんかファミコンちっく(笑)
あたしゃ『ダブルムーン伝説』を思い出しましたよ。
あれも意図的にファミコンっぽさを取り込んでたっけなァ。
所持金代わりの「経験ポイント」
あ、そうそう。所持金の概念はありません。
代わりに「経験ポイント」ってリソースがあります。
アイテムリストにも価格が書いてないんで最初「どーすんだ?」って思ったんだけど、経験ポイントでやりくりするようですね。
ちなみにキャラが死んだ場合、蘇生アイテムを使うか、経験ポイントをゼロにすることで復活します。
さすがバトルオンリーなだけあって、実はパンクな世界っぽいです(笑)
ワールドガイド
なんだろう、このワールドセットだけ微妙に細かいのは(笑)
いかにも「ファミコン世代のファンタジー」って感じの PC 設定に比べて、ワールドセットについては挿絵(キャライラ)入りで各センテンス 1~2ページ程度、トータルでも10ページしかないけど、妙にきちんと要点を抑えていて、地味ながら想像力をチクチク刺激してくれるテキストがいい感じ。
たとえば以下のような感じで。
活気あふれる街
城下町は活気にあふれている。教会を中心に、宿屋、食堂、酒場、鍛冶屋、仕立屋、野菜売り、魚屋、病院、見せ物小屋などなどが軒を連ねる。大人たちが商売談義をしている中を、子供たちが歓声をあげながら走り抜けていく。
しかし、最近は交易用の馬車がモンスターに襲われたり、旅行者の数が減るなど、邪神の影響が街に不吉な影をなげかけている。(『甲竜伝説ヴィルガストRPG』 p.107)
……なんだろう、この店舗のラインナップ。
とてもじゃないけど子供向けの設定とは思えない(笑)
「仕立屋、野菜売り、魚屋~」ときて、更に「交易用の馬車がモンスターに襲われたり」と合わせがあって、シナリオフックになりそうな話に生活感バリバリ。
こういうのは大好物です(笑)
で、この「活気あふれる街」と同じページ、その下半分は
村の人々
村の地理上の位置づけとしては、城から放射状に伸びる街道沿いに点在しているタイプと、まったく人里離れたところにポツンと小さな共同体を作っているいわゆる「ねこまた村タイプ」とにわけることが可能だ。
いずれにしても、村の主な収益は畑で作られる作物の収穫や、海の近くであれば漁業、山の近くでは林業といったものとなっている。
村は面積が狭く、人口も少ないために、モンスターの一群の襲撃によって、あっという間に滅ぼされてしまうことも多い。(『甲竜伝説ヴィルガストRPG』 p.107)
……絶対に子供向けじゃないと思うんだ(笑)
なんかこう、「ゲームに関係ない細かいことはどうでもいい」みたいな風潮に喧嘩売ってるというか、いや、僕はこういう姿勢はものすごく好きだし、自分の経験で言えば「これくらいおさえておけ」って容赦ない先輩方につっこまれる内容なんですが。いやでも、当時ですらこれは受け入れられたんだろうか? とか考えると色々と心配になってきた。今更すぎるけど。
そして極めつけは、
野外での生活
旅の途中は、毎日毎日きちんと宿屋に泊まれるとは限らない。人里離れた場所で野宿をしなければならないことも多いだろう。そんなときに、必要最低限なサバイバル技術を身につけているかいないかでは大違いである。
野外での生活に耐えうる知恵と勇気とアイテム類は必須である。
例えばそれは火の起こしかたひとつにも言える。人気のない森で夜を明かすはめになった君たちは、荷物の袋の中から火打ち石が無くなっているのに気づく。雨降りの夕暮れは日の光もなく、木の枝も湿っている。このあたりにはリュカオンの群れがいるらしい。なんていうシチュエーションも考えられるのだ。さて、あなたならどうする?(『甲竜伝説ヴィルガストRPG』 p.109)
……ごめんなさい子供向けとか侮ってました(平伏)
原作ファンの子供が読んで、分かったんだろうか、これ?
……とか思わないでも無いけど、たぶん分かんなければ飛ばしてたんだろうな。
ツッコミどころ
まあ問題があるとすると、アイテムリストに「火打ち石」なんて無い(!)*2[アイテムリストに火打ち石なんて無い] = 一応擁護すると、アイテムリストってのが「武器・よろい店」の商品ラインナップって体裁になってるので、装備品(武器・防具・魔法書・回復アイテム)しか掲載出来なかったって部分もあるのかもしんない。
この辺がなんか間が抜けているんだけども(笑)
と、いうことで
自分はいったいナニをやってるんでしょうか(爆死)
今さら遊ばないだろう、コレは。
……とも思ったんだけど、「肉を切らせて骨を断つ」ユニークな戦闘ルール(シンプルだけど意外と楽しめる)とか、子供向けっぽいタイトルなのに妙にポイントを押さえた世界設定とか、ただ「イロモノ」として忘れられるのも勿体無いかなーと。
念のために検索してみると、TRPG.NET の方で1998年から2001年にかけて話題にされていたんで、誰も知らないってことは無いようです。ただ、どうもレビューっぽい記事は見当たらなかったんで、まあ一本くらい有ってもバチは当たるまいと。
まあ勢いです、勢い(笑)