性同一性障害(GID)の男性が、解雇不当で弁護士を通じて提訴した、らしい。
……というところから話をしますが、最初に断っておくことがあります。
僕はとても利己的で自己中心的で、なにより臆病です。
嫌なことは、したくありません。
責任の取りようが無いことも、したくありません。
そういう人間が考えたことなので、話半分に読んでください。
性同一性障害(GID)の男性が、解雇不当で弁護士を通じて提訴した、らしい。
難しい問題で、たぶん現段階で話に決着はつかない。
言ってはなんだが面倒な案件を持ち込まれたものだと裁判官に同情する。
まず就職、職能についてだけど。
これはもう、適職という誰にでもあるものにたどり着けるか。
その一点に尽きると思う。
そこに到るまでの道のりが大変で、大抵の人間は挫折する……らしい。
また社会にもそれほどの許容力が無いため、篩(ふるい)は奇矯な働きをする。
社会における組織は、所属する社会の“常識”に支配される。
また雇用はそうした社会に属する個々人が“常識”的に判断する。
脱常識的な奇抜な人間は少ないし、そういう人間が雇用担当になることはもっと少ない。
縁故採用という問題もある。
適性が無くとも縁故というだけで採用し、組織の利益を少しずつ損なっていく。
ただ保証、保険という意味合いだけで、不況の最中に守りの雇用を進めていって自滅するのでは、なんとも間の抜けた話のような気もするが、不況だからこそ保険が欲しい人間心理は正当だ。
バブル期の、無計画に無用心に雇用しまくってた時代を思うと、悪いのは不況なんじゃないかという気もする。その点が解決されて、人間心理が攻めに向かえば、いろんな問題を解決する糸口も見えてくるのかもしれない。
あまりに楽天的な発想だと、自分でも思うけど。
それから性別問題。
アホなたとえ話と思うかも知れないが、当人達にとっては真剣な話題である「トイレ問題」について、ちょっと書いてみる。僕も友人に聞いただけで、当事者ではないので想像が大いに含まれるところだけど。
例えば GID の男性が女子トイレに入れば、そりゃもう男性が GID と知らない女性達にとっては単なる痴漢にしか見えない。通報されるか、ブン殴られるか、騒がれるか、逃げられるか、恐怖に脅えられるか、反応は様々だろうけど基本的に痴漢である。
当人にとっては屈辱的だろうけど、多くの性犯罪は、男性が女性に行うものという認識は拭いがたい。女性にとって危機意識を持つのは当然で、当世それくらいの意識が無ければ危なくて仕方が無い。
では逆に GID の女性が男子トイレに入れば……どうなんだろう? まあ痴女扱いで変な目で見られたり、場合によっては性犯罪に発展するんだろうか。友人の GID の女性は、外では極力我慢して、ダメなときは近くの小さな喫茶店のトイレ(個室/男女兼用)を借りるらしい。
一緒にデパートに買い物に行った時は、一緒に男子トイレに入ったこともあったが、出入りの時には他の客がいないかどうか確認してから動かないといけない。まるで潜入工作である。これまた友人にとっては屈辱的な話だったと思うが、友人の身の安全のためにも、また痛くも無い腹を探られたくなければ仕方が無い。
仕方が無い。
心底イヤな言葉ではあるが、現状では本当に「仕方が無い」と思う。
何かしら解決策があるのかも知れないが、法治国家は性悪説を基として法を布くものだし、そうすべきだろう(法律考はまた後日)。であるなら GID 保護のための何らかの法律・条令ができたとして、それを逆用する犯罪者が現れるのではないかと懸念するのも道理だと思う。
だからといって予想される未来の犯罪者のために、犠牲になってくださいという話でもない。何らかの“法の下に不平等でない”ルールを作る必要はある。ただし過剰に保護・擁護するのも GID でない市民の反感を買うことになる。互いに権利を主張し合うだけでは、対立構造が深まるだけで良いことが無いという話だ。
少なくとも、現段階で一足飛びに、世間が一斉に認めることは無理だ。
それはまるで「じゃあ世界中で一斉に核爆弾とウラン・プルトニウムを全てスーパーマンに預けて、宇宙に投げ飛ばしてもらいましょう」と言うくらいナンセンスな話だと思う。
人間の精神的防衛本能に従属する、多くの認識を改めることは難しい。
なんらかの差別を跳ね返し、権利を獲得しようと思うとき、そこには血と汗と涙が要求されてきたという歴史がある。なにも「板垣死すとも自由は死せず」とは言わないが、認められたければ相応の労力を費やさなければならない。
争い、抗わなければならない。
思うように生きたいのであれば。