[memo] GGH関連gdgd話

※基本、自分語りなのでスルー推奨。

自前の『GURPS』人類史キャンペーン用・人間社会演算モジュール「GreatHistory」のコンセプトの話をすることがちょいちょいあったのでメモ的に。

ベースデザインが90年代半ばだから、かれこれ20年近く前の話だけども。

時々こういう話がしたくなるんだけど、こういう話をしないと伝わらないデザインっていうのは失敗なんじゃないかと考えると軽く凹んでしまう豆腐メンタルなのでした。

GGHのテーマ

GGHのテーマは「〈エゴ〉によるパワーゲーム」で。

まあテーマというか、単に自分が社会/自然をそう捉えてるってダケなんですが。

で、それによって「淘汰」と「適応」を扱っています。

〈エゴ〉

「そもそも〈エゴ〉ってなんぞや?」って話は、ここでは「無意識的/自然発生的な要請を調整する機能」という理解で。

「無意識的/自然発生的な要請」ってのは、集団として生存競争の中で必要とされることであったり、ごく個人的な欲求であったりと色々ですが、大なり小なり人間が当たり前に感じるモノであり、同時に人間社会が抱える様々なトラブルの根っこになるモノです。「近くの山にクマが出たらしい。このままじゃ安心して農作業出来ない」から「駆除してきてほしい」というのも、あるいは「大事な試験前なのに気になる異性がいて手がつかない」から「恋人がいるかどうか調べてほしい」というのも同じ。

こういうのは良し悪しじゃないと思うんですね。人間が生きる上で自然な反応としてあるもので、それによって生存競争を戦っている。そういう認識です。

社会ゲームの根っこ

〈ゲーム〉っていうとまず「規則」があって「勝利条件」があって「制限」があってー……って感じになりますが、「無意識的/自然発生的な要請」ってのはこの辺の要素をひっくるめたセットアップ――〈ゲームシナリオ〉の初期設定――の話ですね。これを分解して〈ゲーム〉を〈デザイン〉したものが〈ゲームシナリオ〉の核となります。

(T)RPGの〈ゲームシナリオ〉っていうと自分の中ではこの「無意識的/自然発生的な要請」の辺りをデザインする作業が第一にあって。いわゆる「個別ハンドアウト」等でPCの立場を絞り込んだりするのはその後、要請に対してスマートに(物語テンプレートに沿って)解決するためのプランの提案です。シナリオ作成としてはミドルウェア的な作業だと考えます。だからハンドアウトの内容調整もできるわけで……

閑話休題。

〈エゴ〉を喚起する

で、この「無意識的/自然発生的な要請」ってのを生成することで、それに対応する機能として〈エゴ〉が働くようになります。

要は〈ゲーム(シナリオ)デザイン〉が行われて、プレイできるようになります。

じゃあその「無意識的/自然発生的な要請」ってのをどうやって表現するのか? というところで、GGHではヒジョーに古典的な手段を講じています。

数量(資源)化です。

これは(T)RPG、特に『GURPS』というゲームシステムと非常に相性がいい、と考えています。なにしろGURPS自体が「様々な事象を数値化して取り扱う」傾向や「資源を目的別に活用する」傾向を持ってますんで。

ここで「要請」は「数量(資源)の不足」によって生じるもの、と定義してしまえばイイ。(更に〈エゴ〉とは「足りないから欲しい」というシンプルな要求に対する行動、と定義すると、なんとなく口語としての「エゴ/我欲」的なニュアンスになって……)

あとはより多くの資源を欲する構造――つまり資源の量に価値があるルール整備――が出来れば、「これ(資源)欲しい~ なんとしても欲しい~」となるわけです。

上手くやれば。

社会構造

ちょっと脱線して、社会構造の認識の話。

よく出来た社会構造というのは、このとき資源が正しく必要なところに供給される構造のこと。

しかしそれが安定化する過程で価値観(要請)の偏りが生じ、そこで〈エゴ〉が強く働くことでより価値の高い(強い)ところに資源が集まるようになる……というのは人間に限らず動物社会の基本的な構造だろーなー、とか思ってまして。

生存戦略としてはごく当たり前の話なんだけど、そこに様々な欲求が生じたことで歪みが生じる。安定と満足を知ることで欲が生じる、というのもまた自然な話で、でもまあそれが社会のトラブルの根っこだったりするんだから始末におえないというか……

神話から伝説、そして歴史へ

ここで資源として有用なもの、共通概念として便利なものは無いかなー? と考えれば、まあすぐに出てくるのが「人口」「人力」というもの。

今でも仕事量を「人月」なんて単位に換算したりもしますが、マンパワーというものは“正しく運用する”ことで「量の増大によって目的達成の成功率を上げる」ことに寄与しますんで。

(「時間」って答えもありそうなモンですが、こっちは概念的には平等に与えられる資源ですから、それそのものをダイレクトに扱うのは難しい。むしろ「資源(人口)に付随する資源」と考えた方がいいんじゃないかなーとかね。この辺は「雇用(就労)形態」のルールに関係したりします)

人類史なんて考えると、どうしても神話/伝説/歴史みたいな区分、あるいは英雄像の変遷なんてのを思わずには居られんのですが、英雄として突出した個人を、個々人の能力的には劣る人海戦術であるとか、新技術といった要素が圧倒する……というのは認識としても受け入れられやすいだろーな。というのがあったりします。

パワーゲーム

パワーゲームというのは「政治力・経済力などの力(パワー)を背景にした主導権争い」のことです。よく「大国同士のパワーゲーム」なんて形で使われる、アレ。

人間社会におけるパワー、力というのは何も武力/軍事力に限った話ではありません*1最後にはそこに行き着くとしても。政治力でも経済力でも何でもヨロシイ。なんであれ眼の前に立ちはだかる障害を蹂躙踏破し、自分の目的を達成するためのする力のことを指します。

こうしたパワーは常に、そのものに価値を見出す人間を動かします。この辺で〈エゴ〉の話とリンクしてくるわけです。

組織運営:対数システムと社会系技能

「人間を資源とみなし、集団を効率的に機能させる」

……この辺の処理って、どっちかというと(T)RPGは苦手なんですよね。

あくまで「個人の英雄を取り扱う」という性質が強いためですが、そのために集団戦なんかもキッチリ処理できるルールが整ってないものがほとんど。かくいう『GURPS』もその辺は同じなので、ちょっと手を加える必要があります。

ここに『TORG』の対数システムが上手く働きます。(対数によって数列を等差から等比にスイッチすることで、数量の指数関数的な増大に対応できるようになる)*2GGHでは「CLD(CampaignLogData)」と銘して搭載しました。

また、そうした人的資源を効率的に機能させ、一個の技能としてまとめるために社会系技能、特に〈管理〉と〈指揮〉を使用します。

〈管理〉は人を集めて組織的に運用できるように管理する技能、〈指揮〉はそうした組織を実際に運用する技能となります。英雄個人を扱ってる時にはフレーバー系に分類されそうな(=日の目を見なさそうな)技能ですが、GGHではパワーゲームを支える根幹となる技能です。これらの技能は共に「一つの目的に対して同時に何人を組織的に活動させられるか?」の指標であり、間接的に「組織化による技能レベルの上限」を決定する要素となります。

こうして「パワーゲームを行うために必要な要件を揃えるため」に〈エゴ〉が働くこととなります。

文明技術:TLの活用

GGHのパワーゲームにおいて強力なパワーとなる要素、その一つは人間という資源でした。そしてもう一つ、強力なパワーとなる要素があります。

それが文明技術です。

『GURPS』における文明技術

『GURPS』において文明技術はTL(TechnologyLevel)で表されます。『GURPS』(特にBasic)におけるTLそれ自体はかなり大雑把な指標で、概ねこの時代、といった区切りでしかありません。しかしそれでもTLは、『GURPS』の汎用性を支える強力な特徴でもあります。

……ですがTLを有効に使った遊びというものを、なかなかお目にかからない。何故なら多くの(T)RPGは「一つの世界観(=世界のあり方についての認識)によって構成された世界設定の中で遊ぶ」といった傾向が強いためです――それこそ「人間」と「怪物」といった区分のように。

しかし地球の人類史といった視点で見た時、世界観というものは多岐にわたり、常に相対的なものだったりします。そして異なる世界観が遭遇することで衝突が生まれ、軋轢が起こったり、融和したりしながら、新たな世界観が生まれたりしてるわけです。

これがまた長大な歴史を感じさせる、いいギミックなんですよね。

ということで、TLを活用するべく文明技術をもう一方のパワーとして扱う方向で考えていきます。

文明技術とは?

そもそも文明技術とはどんなものなのか?

大雑把に言えば、それは「社会構造を一変させるような発明」であるわけです。

どのように一変させるのか?

これは簡単。「効率化」です。

文明技術とは「ある事柄に必要となる労力を減らす技術」として共通しています。

こうした「効率化」という性質を、実際に指標として利用出来ればゲームとして価値が出てくるはず……ということで考えを進めていった結果、「人的資源と両輪にすればよい」という辺りで落ち着きました。

両輪というかまあ、どちらも同じパワーの指標値としてしまえばよい、ということです。両方とも同じパラメータに同じように影響する異なる二つの値、という具合に。

文明技術、人口増大、戦争――〈エゴ〉

さて文明技術は効率化である、という話をやっつけたところで。

文明技術の発展は、人口増加を促進します。これもまた効率化の一つで、たとえば開拓のために木を切る、といった作業も石斧と鉄の斧、チェーンソーでは必要となる時間が圧倒的に変わります。農業にしても様々な手間を効率化することで、一人あたりの生産量を増大させていくことが可能になります。輸送、物流もそうです。人間が担いで歩いていくのと、荷馬車に乗せていくのとでは、運べる量も速度も異なります。

あるいは「労働人口」という概念を持ってくると、子育てや教育、医療などの効率化によって、それまで割かれていた人手が減ることになり、余剰人員が出ることになります。彼らもまた人的資源として活用できるようになるわけです。

そうした結果、文明技術が発展することで、人口の増大が起こるようになります。人口が増えればパワーが増え、パワーゲームに有利に働く。パワーゲームで利益を確保することで人的資源を集め、更に強大になっていく……というのがGGHにおける成功のためのサイクルです。

人口増大のリスク

しかし人口増大には、それに伴うリスクも生じます。

人口が増えればそれだけ様々な価値観が生じ、それだけトラブルの発生率も増大するということです。

たとえば農業技術の発展によって養える人口は増えたとして、増えた人口の行き場がなければ都市に失業者・不労者が増えることとなり、彼らは治安にとって大きな頭痛の種となるでしょう。治安が悪化すれば、社会全体のエネルギーは健全な方向へと向かいにくくなります。

農業人口が増やせない、受け皿たりえない理由は色々とありえますが、大きな理由は「用地不足」ということです。これには単純な立地や土壌の問題もあれば、物流や危機管理の問題もあります。もとより開墾、開拓というのは一大事業でして、これは開墾に従事している間は生産に寄与しない(消費のほうが大きい)ことや、野生動物などの危険に対する防衛コストなどが決して低くないためですが、そうした初期投資のコストの高さが人間に「ある選択」をさせてしまうようになります。

略奪と戦争です。

GGHが扱うゲーム

GGHでは社会のTL(TechnologyLevel)と人口増大、そして戦争が一つの大きなテーマになっています。

簡単にいえば――

  1. TLの向上によって人口増大が発生する
  2. 増えた人口の受け皿が必要となる
  3. 社会(組織)の再編が必要となる
  4. 軋轢(ゲーム)が生じる

――といった流れです。

「だったらTLを上げなければいい」という考え方もありますが、それを実施するには「力の平均化」が不可欠となります。というのもTLが強力なパワーであり、その差が人口比を逆転せしめるだけのものであったとき、弱者は強者を打倒するために、あるいは未来に起こりうる危機を回避するための抑止力として文明技術を求めるようになるためです。

かくして人は貪欲に文明技術を求め、あるいはその抑止のためにパワーゲームをすることになります。

「文化」

ところでこれまで「国家」と言わず「組織」と言っていたのは、GGHで扱う「戦争」が常に兵器と軍によってなされるものとは限らないためです。

必要となるパラメータの編制によって、経済戦争や権力闘争なんかも普通に扱えます。(実際、バイオウェアv.s.サイバーウェアの企業戦争とかやりましたしね)

パワーゲームはそこかしこで行われていて、可視化されているかどうかは人がそれに参戦する意志を持っているか、あるいは参加に自覚的であるかどうかでしかない……というのがGGHのスタンスです。

組織能力値と文化

組織には組織能力値という、人間の基本能力値に相当するものがあります。これらは所属する人材の〈†技能〉によって表されます。ここでも〈管理〉と〈指揮〉は必須となりますが、残り二つは自由に設定出来ます。そしてそれが組織の価値観となります。(ちなみに〈管理〉が生命力、〈指揮〉が体力に相当します)

組織能力値の編制にはある程度のセンスが必要になりますが、その辺はまあゲームの自由な生成を可能とするアナログゲームの長所でもあり短所でもあり、ということで。

この「組織能力値の編制」によって生まれる組織の価値観が、即ち「文化」というものになります。

文化、あるいは世界観ですね。

これは至極シンプルな話で、組織がそのパワーを発揮するための〈†技能〉があるなら、それが高い人間が優先されるということになります。組織の構成人員には〈管理〉と〈指揮〉といった限界があるため、なるべく能力の高い人間が優遇されるのは自然なことといえるでしょう。結果、その技能に関する事柄が、その組織にとって重要なこととなり、それを中心とする「文化」が形成されるわけです。

こうして形成された「文化」は[0CP]の特徴として管理され、「†文化」による価値観の共有、それによる反応修正の管理が(ある程度)可能となります。ここで個人をPCとする(T)RPGのスケールにリンクするようになっています。

そして唐突に終わる(笑)

概ねこんなコト考えながら組んだのがGGHなので、そんな風に読んでもらえればいいなーという次第。

七度のロングキャンペーンで改良したり改悪したり(笑)してるんで、必ずしもパーフェクトなモジュールとは言えなかったり、そもそもスマート化できてないから情報量が多すぎてアナログゲームなのにデジタルツール必須(最低でも表計算ソフト無いと死にます)というダメ具合だったり、長年ブン回しすぎてて既に「自分にしか使えないモノ」に成り果ててる気もするんですが、長年ブン回してることもあって愛着あって。

……でもやっぱデザインとして「あかんなー」ということで表に出せないチキン。

……でも、でも語りたかったんや~!!

ということでちょっくら脳内さらしてみました。

気がついたら7000字近くなってるし。

なにしとんねん…orz

References

References
1 最後にはそこに行き着くとしても
2 GGHでは「CLD(CampaignLogData)」と銘して搭載しました。