なんかもう既に 8回読み返してるわけだけど。
マンガは速読する質なので、回数読んで徐々に深みを覗いていくのです。
ほんっと面白いので、いいから読め!(笑)
プリミティブな活気
相変わらずテンポのいい展開。
それもこれも、描かれる中央アジアの人々の、実にプリミティブな活気やスピード感ってのが有るからなんだろうなァ。
今巻で言うと――
「なんか……」
「なんだろう……」
「なんだかすべてが直接的というか……」
「ためらいがないというか……」(森薫『乙嫁語り(4)』 p.054)
――ってスミスの心の声がその辺を端的に表してるというか。
考えてみると、4巻で第3シーズンってのも結構なペースだよね。
でもそのスピード感が、あのこだわりの――ともすれば偏執的な(笑)――描き込みの量と相俟って、「軽い」のに「少ない」とは感じさせないっていうのがね。もうホントに凄いバランス感覚で。
そういえば第3シーズンではあるけど、別に過去のシーズンの登場人物がスッパリ切り捨てられるわけでもなく、たとえば第十八話「訪れ」なんかは第1シーズン、第2シーズンから続く物語だし、それによって少しずつ「世界」の全体像が見えてくるのが面白い。
ロシアとの関係はどうなるんだろう?
モンゴルの遊牧生活だって、そこで暮らす人にとっては普通の生活であって、ロマンだ何だなんてもんじゃない。
定住化とマンホールチルドレン、遊牧生活と平均寿命、みたいな。
生々しい感情があって、経済があって、政治があって。
そういう、ロマンだけ言い募る人にとっては見たくない現実みたいなモンだろうけど。
日本だとまあ、京都に懐古ロマンを押し付けるようなもので。
多様な人生/生活観の共存を肯定できる社会って、ほんと難しいんだよね。
まあでも漫画として正直に身勝手なロマンを投影すると……モンゴル頑張れ。超頑張れ。
閑話休題。
狼が格好良いです。
まあその狼についてはちょっとニュアンスが分かりづらいところもあるんだけど、でもまあそれはアレコレ想像しながら補完したり、リテイクしたりすれば何度も楽しめてお得です(笑)
新キャラ、ライラとレイリ。
ほんとこの双子の元気っぷりには癒されるわー
森さんこういうキャラ好きだよなー(笑)
そしてサーム(サマーン)とサーミ(ファルサーミ)。
こいつらのキャラも、結構好きかも。
兄弟でよく似ているようで、ちゃんと考え方やらアプローチやらが違っていて、人格醸成やら生活やらが見えてくるようで。
まあ一番好きなのは、こいつらの親の世代なんですけどね!
もうイチイチ面白いというか、「そうだよなそうなるよな!」っていうのがね。
結納金バトルに紛糾して肝心なこと忘れちゃうところとか(笑)
結納金といえば、ヌマジのところにやった嫁が手ひどい扱いを受けて亡くなったエピソード。あれっていわゆるダウリー殺人的なニュアンスもあるのかな、とか思ったり。「嫁を出す」ことについてのリスクの大きさとかね。
で、そうかと思えばライラとレイリの結納金話になると、今度は嫁取りの側のリスクってのもあって。
結婚に一族の力関係が絡んでくるあたり、単なる恋愛結婚ではいかんよなーっていうのが。
そうやってみると、第2シーズン(3巻)でのスミスの扱われ方も、色々とまた考えられるところが、とか。
……とまあ七面倒なコト書いてますが、こんなの全然関係なしに、読めば元気になれる面白さがギッシリ詰まった傑作です。
読んだ人みんな「『それだ』じゃねーよ!」ってツッコミ入れたよね?(笑)