きらすさんに送ってもらっちゃった『よつばと!』読み終わりました。
……いや読み終わったのは随分前なんだけど、何度も読み返してたので。
感想としては……まあいくつか有るんだけど、最初の感想が
「これ自分が (T)RPG でやろうとしてることだ!」
……という。
一緒に遊んだ人には、もしかすると分かるかも知んない。
それが漫画に対する感想か(笑)
わりと真面目な感想文
もちろん「カメラワークの妙」とか「表情の使い方」とか「キャラの面白み」とか、あるいはカバー外したときの卑怯な構図とかもあるんだけど、正直に言って上記の感想が一番大きかったりします。
少なくとも仕事上は、漫画も小説も等しく「ストーリーコンテンツ」*1[ストーリーコンテンツ] = ストーリーを軸とした作品。として扱っているので、なかなかこういう「キャラクターコンテンツ」*2[キャラクターコンテンツ] = キャラクターを軸とした作品。として描くってことに抵抗があるんだけど、実際にコレをやろうとすると相当難しいと思うんですよ。
ちょっと逆説的になるんですが、比較対象となるストーリーコンテンツってものすごく説得的で、読者が決着を受け入れやすい構造になってる……というのがあります。「終わりよければ全てよし」なんて言葉の典型で、ヒキにせよオチにせよ、ドキドキ感や達成感の演出をするための方法論が完成されてるんですね。
構造主義的に読むと、これは「過去が現在を(または過程が結果を)肯定する」っていう機能があって、これってまあ昔のジャンプ漫画でいう「努力・友情・勝利」の図式です。努力したから勝てたんだ、ということ。また、努力のプロセスを「試練」に、友情のプロセスを「決断」に置き換えた「試練・決断・勝利」なんて図式もあります。決断主義ってやつですね。意志の力による戦い。
まあ実際には、そうした方法論と要件を合わせて構成/表現する技術ってのが必要になるわけで、理屈がわかってれば誰にでもできるってモノではないんだけど、少なくとも試行錯誤によって目的地に至るための、下敷きになるものはあるんですね。
キャラクターコンテンツってのは、それがまだ確立されていない。
というか、キャラクターコンテンツってのはストーリーコンテンツと違って、普遍的なパターンってのが極めて少ない。いやまあモデルは有るんです。ちょっと懐かしいところで大塚英志『キャラクター小説の作り方』や、柳川房彦『プロの発想法で作るゲームキャラクター』、あるいは近作として再編集された『キャラクターメーカー―6つの理論とワークショップで学ぶ「つくり方」』や『物語工学論』とか、もっと色々うじゃうじゃ出てくるんですが、うじゃうじゃ出てきて決定版が無い、というのが実際です。*3[キャラクター小説の作り方、プロの発想法で作るゲームキャラクター、キャラクターメーカー、物語工学論] = まあ、どれもこれも「キャラクターを軸にしたストーリーの作り方」であって、必ずしも「キャラクターそのものの作り方」って話ではないんだけど、そっちの方面でもちゃんと役に立つと思うので。
決定版が無い、というより「基礎モデルを超えた具体的なキャラクターは急速に消費されてしまう」って方が正しいかも知れませんが。
なんというか、「キャラ(個性)を確立させる」というプロセスに多くの時間とエネルギーを割くことになって、実際に確立された頃には既に消費が始まっている……という、恐ろしく非効率なアプローチなんですよね。これを商業でやったとしても、えらいハイリスクなくせに、もし上手くいっても次の瞬間にはコピーや量産品が蔓延って、アッサリ消費サイクルに飲み込まれちゃったりします。
だから手を出さなかった、という事情も有ったりします。
(T)RPG の場合、ローカル環境での運用がベーシックなんで、そういった消費サイクルが発生しないんですよね。
それにキャラクター個々人に対する思い入れ、ストーリーコンテンツなんちゅう外部の事情によって、キャラクターの運動が制限されることもない……最もこれは「シナリオに協力する」とか「ゲームマスターに協力する」いう良く分からんモラルによって制限されたりもするわけですが、少なくとも僕がゲームマスターである環境では、この種のモラルより「遊びたいように遊ぶ」という基本理念が優先されるんで、キャラクターを制限するものはゲームの状況そのものだけです。
まあそういうわけで、僕は「キャラクターコンテンツ」ってのは、そういった次元でこそ生きる表現技法/技術媒体だろう……という思いがあったんですが、アッサリと正道で解を出されちゃったなー……というのが感想。
どえらい敗北感ですわ(笑)
たしかにこれ見た後だと「日常系」とか「萌え4コマ」って言われる作品群は、アプローチが貧弱すぎて、それぞれ「日常系(笑)」と「萌え4コマ(笑)」になっちゃう。
凄くて、怖いよ、この作品。
僕は読んで殺されるかと思いました(何)