[chat] 20100731#7

リプレイの面白さの質、フェアプレイを保証する戦闘ルール

玄兎
「まあ実際のところ、ダウンロード販売でリプレイ売ってるところもあるみたいだけどね。確かシナリオはポップアップTRPGの仔だぬき蕎麦ってサークルとか、あと『メイドRPG』はルールもダウンロード販売で売ってたと思った」
シノフサさん(仮)
「あるんじゃん」
玄兎
「うん。まあ今回は電子書籍の市場でってことなんで、ePub形式でシェア取れって話。PDFは印刷にはいいんだけど、たとえばiPodみたいな小さい端末で見るとき物凄い面倒だし。ePubはPDFデザインのセンスより、むしろHTMLデザインのセンスが求められるもんなんで、これまでウェブサイトでリプレイ公開してきた人にも関心を持って欲しいところ。この手の話、どこかで言っておかないとスルーされてる可能性があるんで。その辺ちゃんと宣伝というか、まとめて見られるサイトとか有ったらいいよね、とは思ってる。結局あんまり上手くやれなかったし、上手くなれなかった論考ごっこもいい加減辞めて、ソッチ系に展開しようかとかも考えてるんだけど。自分で書いて満足できた記事って5本無いし。あとまあ同人コンテンツ紹介してるサイトってのも、僕が知らないだけで既にありそうなものでもあるし、どうしようかなーとかは考え中。まあ紹介サイトが増えて悪いことなんかどこにもないんだけど」
シノフサさん(仮)
「前はなんか自分とこのレポートに絞ろうかとか言ってなかった?」
玄兎
「その考えは今でもあんまり変わってない。ライフワークス・エグザイルのシステム紹介とか、ゲームのプレイログとかに絞って小さくまとまっちゃおうか、とか。で、試しに書いてみたんだけど、意外と大変なんでどうしようか迷ってる。ぶっちゃけ論考の方が楽じゃねえかとかも思わないでもない(笑)」
シノフサさん(仮)
「ダメ人間(笑)」
玄兎
「好きなようにやりたいだけなんだから、いいじゃないか。それは別にして、同人コンテンツのダウンロード販売紹介についてはひとつ問題があって」
シノフサさん(仮)
「どんな」
玄兎
「いや、見てると自分で編集したくなってくんの。別に大した腕があるわけでもないのにね。あるいは上手く編集されてるの見ると感心するやら悔しいやらで、気付くとインデザイン起動してテンプレート作ってみてたり。同じものをどうやって作れば一番手間がかかんないか、30分くらい、気付くとやってる(笑)」
シノフサさん(仮)
「(笑)バカでしょう」
玄兎
「そんな皆が知ってることを念押ししなくたって(笑)。その辺は別に同人だからどうのって話じゃなくて、商業で買ったルールブックにしたって、最初にインストシート作って、何回か遊んで評判良ければA5サイズの私家版編集しちゃったりしてるわけで」
シノフサさん(仮)
「最近のだと、どんなのやった?」
玄兎
「最近のタイトルはほとんど私家版にはしてないなあ。サイコロ・フィクション系は一式、ルールパートだけをA5版に組み直したけど、それくらいで。あとはまよキンとデイズのクロスオーバー用のを組む予定があるくらいで。こっちはキャンペーン始まる前にやらなきゃなんで、まあ年内には」
シノフサさん(仮)
「冒険企画局ばっかりじゃん(笑)」
玄兎
「そうなんよね。やっぱりこう、サイコロ転がす面白さで言ったらあそこはトップクラスで。あとは『ガープス』の4版をやってんだけど、あれは量が多くて大変。ぶっちゃけ魔法大全がなければ、ベーシック分は終わってるんだけど。最初にソード&ソーサリーに着手したのは間違ってたと、今更絶賛後悔中」
シノフサさん(仮)
「(笑)ま、さ。それ終われば後が楽ってことじゃん?」
玄兎
「まあそうなんだけどね。それは置いといて、他にはやってないかなあ。単に新作にあんまり興味持ってもらえてないってのもあるんだけど。だいたい1、2回遊ぶともう、ごちそうさま、になっちゃうパターンで。インストシートは溜まるんだけど、そこでおしまい。おかげで最近は新作とか出ても、ルールブックあんまり買わなくなっちゃったんだよね。遊ぶか分からんものに金を使う気にはならない、ていうのは正常な感覚で」
シノフサさん(仮)
「ルールブックが出たらとりあえず買うんじゃないの?(笑)」
玄兎
「(笑)だからそれはヘビーゲーマーの思考回路だってば」
シノフサさん(仮)
「(笑)いやいや旦那が」
玄兎
「ああ、そういうことか。僕は、いや、そうでもない。基本、吝嗇家だし」
シノフサさん(仮)
「りんしょくか?」
玄兎
「ケチってこと。だからまあ、いつものアンテナと同じで、無関係な三つの口から、異口同音に評価が聞こえてこないと手を出さない。たまに研究目的で買うケースもあるけど、それくらいだなあ。その辺で異常に上手かったのが『ピーカーブー』で、あれってネットでの動きにしても、最初は巻頭リプレイで小学生がプレイヤーに、ていうのが話題になって、ゲームについては特に触れられてなかったんだよ。それがとりあえずリプレイ読むために買ってみたらゲームも面白かった、て流れだったと思う。『シノビガミ』で人気が爆発したサイコロ・フィクションだけど、『ピーカーブー』でリプレイの面白さとターン制ゲームの評価がなされてなければ、たぶん今ほど大当たりにはなってなかったんじゃないか、とか思わないでもない。いきなり『シノビガミ』っていうのは、ちょっとショックが大きすぎたと思うし」
シノフサさん(仮)
「『ピーカーブー』が布石になってたってこと? 偶然じゃなくて?」
玄兎
「『ピーカーブー』が出た次点で、『シノビガミ』は既に計画されてたみたいだけど、販売戦略がどうだったのかまでは知らない。知らないけど、僕はその流れがものすごく美しいものに感じて、だからまあサイコロ・フィクションを手放しで絶賛したり、リプレイ書けって言ってるのはその辺もある。自分でも作ってみたいと思ったのも、TRPGの遊びの相当コアな部分を使わせるデザインとか、リプレイでそれを更に支援してることなんかもあるんだけど、そもそもあの装丁と編集、それに商品展開の手管に惚れたっていうのが大きくて」
シノフサさん(仮)
「なんかちょっとズレてない?」
玄兎
「ズレてるんだろうなあ。ゲームの世代の序列としては、『ハンターズ・ムーン』は『シノビガミ』の前になると思うんで、そういう意味では順番逆じゃね? とか思わないでもないんだけど、それやるとサイコロ・フィクションの目がなくなるというか、『シノビガミ』まで行きつけなかった気もするし、それは守りの姿勢になっちゃってたような気もする。それに本当に序列通りに展開してたら、ノイズが発生しなくてつまんなかったと思う」
シノフサさん(仮)
「出た。あれにはどんなノイズがあったの?」
玄兎
「面白いことは分かるんだけど、戦術の立て方、遊び方が分かりにくい。本来なら面白さと遊び方が連動していて、一方が分かればもう一方も分かるはずなんだけど、『シノビガミ』はその辺ちょっと分かりにくかった。なんせ他人の思考が必ず混じってくるから。まっことリプレイ向きのシステムじゃき」
シノフサさん(仮)
「(笑)リプレイ向きって、どういうこと?」
玄兎
「読物としてのリプレイって、大きく分けてニ種類あって。ひとつが純粋にフィクショナルな面白さ。これは小説の文法、技法、構造論なんかをやれば体裁は整えられる。シナリオ技術、マスタリング技術としては、いかに伏線を張るか、どんでん返しを持ってくるかっていうのが命綱。もうひとつがドキュメンタリーの面白さ。これはセッション風景を覗き見る面白さというか、プレイヤー同士の掛け合いの妙、本音トークの面白さで、バラエティ番組の面白さだわな」
シノフサさん(仮)
「それは何となく分かるかも」
玄兎
「うん。で、これをコントロールする技術は幾つかあるんだけど、とりあえず一番重要なのが、プレイヤーとPCの比率。プレイヤーとPCの距離、とかでもいいや。PCの演技なのかプレイヤーの本音なのか。セッションログのノベライズを行うときの障害になるのがこれで、他人のPCの心理描写って難しいんだよね。だけどリプレイならプレイヤーの本音を書いても全然問題ない。それが却って面白さになるっていう強みがある。『シノビガミ』のゲームシステムは、テクスチャが綺麗なんで基本的にはPCの行動として読めるんだけど、その中に必ずプレイヤーの思考が混入するようになってるんで、序列を整えて併記してやるだけで面白さが何倍にもなるっていう」
シノフサさん(仮)
「他のタイトルじゃそうはいかないの?」
玄兎
「別にそうと限った話じゃないんだけど、ゲームの面白さを戦闘と物語に分離しちゃってる旧来型のシステムデザインの場合、戦闘はプレイヤーの思考、物語はPCの演技、ていう棲み分けがはっきりしちゃうんだよね。だから一定条件でイベントフラグを立てといて、状況に応じてNPCが演技したり、PCがそれに掛け合ったりして戦闘にドラマ性を盛り込もうとするんだけど、ぶっちゃけ戦闘中のPCの発言なんか全部ごっこ遊びに見えるし、物語におけるプレイヤーのメタ発言なんかもメタギャグの域を出ない、ように見えちゃう。理由は簡単。ゲームに関係ないから」
シノフサさん(仮)
「どれだけ演技したって戦闘は終わらないし、みたいな話?」
玄兎
「そうそう。まあキーワードを使った条件闘争みたいなのもあって、殴り合いながら必要なセリフをPCが言ったら終了、とかそんな戦闘もあるにはあるんだけど、基本的にTRPGの戦闘ってどっちかが全滅するまでやりあうでしょう。そういうことが分かってると、パターンギャグとかシチュエーションコメディとか、そういう次元でしか見られなくなっちゃう」
シノフサさん(仮)
「冷めちゃうわけね」
玄兎
「そう。物語ラインのメタギャグってのも同じく、オヤクソクに対するシニカルな笑いを引き出してくれるくらいで、元ネタからして伝統芸の域に入ってる『コール・オブ・クトゥルフ』みたいに最初からそういう笑いを求めてれば良いんだけど、そうでないタイトルでやられると一気に冷めちゃう。どうせパターンじゃん、ていう」
シノフサさん(仮)
「あるある。実際のセッション中でもチャチャ入れてくる人とかたまにいるじゃん?」
玄兎
「まあその、今僕が話してる事自体がそういうもんじゃないか、て言われると反論できないんだけどさ。物語ゲームへの没入と還俗。戦闘ゲームへの没入と還俗。それはモデリング出来る気がする。パターナイズは硬直の危険性を孕んでるけど、音楽と同じようにリズムとコードくらいは定型化してても表現の幅はそれなりに広がってると思う。神は細部に宿る。言い換えると、個性はノイズで表現できる。それに、ひとつのテンプレはその他の表現を呼び起こすものだし」
シノフサさん(仮)
「死亡フラグみたいな?」
玄兎
「(笑)そうそう。俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」
シノフサさん(仮)
「(笑)約束のお陰で死ななかったパターン」
玄兎
「そういうのもあるのか、ていう」
シノフサさん(仮)
「でも戦闘のリプレイでも普通に読んで面白いのあるでしょ?」
玄兎
「ああ、それはシステムが上手いタイトルか、リプレイの編集で前半戦をダイナミックに省いてるやつだと思う。昔のシステムは基本、数字のやりとりしかしてなくて、レベル上がると長い削り合いがバッフで更に長期化するグダグダ展開とかが多かったし。それに対するアンチテーゼとして、戦闘が物凄くピーキーで、気を抜けば3発以内に死ぬようなデザインが出てきたんよ。そうすると単なる削り合いじゃなくて、イニシアティブから戦略の立て方から、ゲーム的な駆け引きだけでも十分楽しませられるリプレイが書けるようになる。スリリングになるからね。物凄い大雑把な認識としては、防御の単発バッフが強いゲームは、みんな大体そんな感じ」
シノフサさん(仮)
「そういうのでも、演技って必要になるんじゃない?」
玄兎
「ああ、なるほど。それは見落としてた。それはそうだ。むしろそういうのだから演技が必要になるというか。PCの演技なのかプレイヤーの本音なのか、ギリギリのところの発言なんだけど、助けてくれとか支援するぜとか、この程度か、とかって演技は駆け引きとしてゲーム的に意味を持ってくるからね。それがまた、戦闘に比重を置かせる原因になるんだよなあ。楽しさを保証するものは、物語なんかより戦闘の方がたくさんあるし」
シノフサさん(仮)
「あれ、戦闘嫌いじゃなかった?」
玄兎
「別に戦闘自体は嫌いじゃないよ。嫌いなのは戦闘狂と、戦闘だけを別のゲームとして扱ってるシステム。戦闘ゲームのロジックは、面白いよ。それが戦闘ってシチュエーションにだけしか適用されないのが嫌なんだな。もっと他のことにもフレキシブルに適用できるはずなのに」
シノフサさん(仮)
「『Aマホ』みたいな話?」
玄兎
「そういう話。まずその戦闘ルール、戦闘システムの長所について考える必要があるんだけどね。モデルとして、少なくとも目に見える、数式化できる、されているゲームっていうのは、分かりやすい長所があって。ひとつはリソース。ヒットポイントやらなんやらが目に見えるんで、自分の状態がひと目で分かる。それが勝利条件、敗北条件と結びつけることで、明確な判断基準になる。もうひとつが手順の数式化と変数の定型化。数式に対して定型化された変数を代入することで結果を算出する。極めてシンプルな構造になるお陰で、フェアプレイが守られてるかどうかが分かりやすい」
シノフサさん(仮)
「戦闘以外の判定って、雑だよね、なんか」
玄兎
「雑(笑)。そうなんだよね。ほとんどのゲームがそうなってる。それには理由があって、逆になんで戦闘ルールはあんなに細かくなっててフェアプレイを強要されるのか、てことについて考えると、それはやっぱりリソースマネジメントって要素が大きい。PCの状態をダイレクトに表すリソースが、戦闘ならヒットポイント、生命力としてアッサリ表現されるんだけど、じゃあ他の行動についてはどうよ? ていうと、あんまり無いわけ。使いやすいのは時間とお金かなあ。でもこれはリソースとして切迫感が弱いんだよね。特に時間。タイムにルーズなのはバッドですよ、なんだけど、TRPGだと皆のんびりしがち。人狼みたいなシナリオで、たとえば一時間経過するごとに村人が一人死にます。ハンターは早く狼男を見つけて退治してください、なんてやれば時間は有用なリソースになるけどね。鍵のかかったドアを蹴破るか、丁寧にカギを開けるか、とかひとつひとつ選択する意味も出てくる。あるいは軽犯罪者から別人の重犯罪を立証する証言を引き出す司法取引、なんてのも戦闘ルールで表現できる。これは金と時間の両方がリソースに使えるかな。でもまあ、そういうのはあんまり無い」
シノフサさん(仮)
「なんで無い? 作れそうだけど」
玄兎
「共通項が難しいんだよ。戦闘システムの面白さに必要なものは、状況の具体化プロセスの緻密さと、リソース管理。んでこのリソース管理の方が、どうにも弱い。説得力のあるテクスチャが貼りづらい。そこで放り出しちゃって簡単に、目標値なんぼ、判定基準はどれ、んじゃコロコロコロ、成功、で終わらせちゃってる部分はあるんじゃないかな? それは汎用性を高めるためだったり、手早く片付けて話をすすめるためだったり、まあそんな処置なんだけど、戦闘ゲームに比べて楽しくするための努力がより必要なのも事実。で、まあ、システムが提供してくれる面白さの量としては少ないから、なんてーか雑だ、て言われても文句は言えないと思う。それにこう言っちゃなんだけど、ゲームマスターの裁量でボーナスが変動するなんてのは、フェアプレイかといえば違うわけで。公平さっていうのは単純化の果てにある」

「[chat] 20100731#7」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: [index] 20100731 « ペテン師の戯言。

コメントは受け付けていません。