注:今回の話はいつもに輪をかけてTRPGのプレーや分析とは関係ありません。スルーされても以降の話が分からなくなることはないと思いますので、よっぽど暇な方でもなかったら、スルーされることを推奨します。(玄兎)
コンテンツビジネスと研究
- 玄兎
- 「まあ古典文学やら神話やらの研究が、今の時勢に通用するかって疑問もあるとは思うんだけど」
- オリハタさん(仮)
- 「そういうのは進化ってないの?」
- 玄兎
- 「歴史的に見て、たぶん本格的な研究と現実的な運用が始まったのって近年だからさ。これまではずーっとアートだったわけ」
- オリハタさん(仮)
- 「今はアートじゃないわけ?」
- 玄兎
- 「今はビジネスだね。ストーリーコンテンツビジネス。その巨大市場になってるハリウッドで、ジョージ・ルーカスが『千の顔をもつ英雄』に出会ったお陰で普遍的な物語としての神話の構造解釈が一般的になって、映画におけるシナリオライティングについては異常なくらい強固なモデリングがなされるようになった」
- オリハタさん(仮)
- 「スクリプトアドバイザーだっけ?」
- 玄兎
- 「そうそう。いや肩書き名は違うかもだけど、シナリオの段階でストーリーモデルを整える役目が、肩書きにできるくらいには研究されてる、らしい。日本じゃ映画はアートだからそういうのは嫌われるみたいだけど、向こうじゃビジネスとしてのミュージカルがあったからね」
- オリハタさん(仮)
- 「日本の芝居とは違うの?」
- 玄兎
- 「アメリカのミュージカルは純粋なビジネスだから。脚本とキャスティングだけで、投資家はその舞台が成功するかどうかを判断しなくちゃいけない。興行的な成功だね。だから慎重にもなるし研究もする。日本の場合、スポンサーというよりタニマチ、投資家じゃなく支援者だったから、才能を認めた人間に好きにやらせるところがあった。タニマチが手に入れるのは興行収益よりも名声だからね。バブル期の企業メセナなんかも同じようなもんかな。それはアートを生み出す土壌としては間違ってないと思うんだけど、ビジネスとしては脇が緩すぎるとしか言いようがない」
- オリハタさん(仮)
- 「ビジネスにならないアートって、でも文化としては市民から切り離されたところにあるんじゃない? それって権威主義の温床でしょ」
- 玄兎
- 「おー。まったくそのとおりだと思う。日本のミュージアムが特設展でしか客が呼べなくなってるのもそのへんだわな」
- オリハタさん(仮)
- 「建築が理解されないのも同じだと思う」
- 玄兎
- 「だろうね。ビジネスになる、てことはひとつ重大な活動が含まれてて。なんだと思う?」
- オリハタさん(仮)
- 「重大な活動? ビジネスに? えっと、集客?」
- 玄兎
- 「うん、それ。もうちょっと手前の広報、宣伝あたりからの話になるけど」
- オリハタさん(仮)
- 「そこが一番難しいところだし」
- 玄兎
- 「そうなんだよね。友達に民俗学が金にならないかと考えてるやつもいて、そいつも結局のところ金にしたい理由が、そうしないと資料を保護したり、研究者を確保したりっていう根本的な活動そのものが出来なくなるからって話で」
- オリハタさん(仮)
- 「逆説だけど、それってでも、ビジネスにならないことに研究者は要らない、て判断されるってことにもなるわけ?」
- 玄兎
- 「なるんじゃない? たとえば現在、日本の財政がボロボロになってて、どうにかして金を稼がなければならない、つまりビジネスをしなければならないとき、短期的に見てビジネスにならない、市民の生活の中に溶け込めていないミュージアムとかサイエンスの分野っていうのは、たぶん真っ先に削れ、て話が出ると思うし。それが中長期的な国際競争力の基盤になるとしても、短期的なビジネスの種になる事業に比べたら、たぶん軽視されやすいことになると思う」
- オリハタさん(仮)
- 「それも広報力の無さからくるわけね。宣伝力があれば、それがビジネスの種になると思わせられれば予算が引き出せて、予算が引き出せれば研究者も増えるし、研究者が増えれば研究分野も増えて、その中に本当にビジネスにつなげられる発想力を持った人材が出てくる」
- 玄兎
- 「かもしれない」
- オリハタさん(仮)
- 「そう考えてるんでしょ? 前にカテドラル建設の話もしてたし」
- 玄兎
- 「まあ、そういうこと。科学者とか研究者とか、そういう人たちは広報技術についてまで勉強してる時間が無いと言うか。むしろそういうことを勉強したり、技能を獲得したりしてる人たちを軽視する傾向があるのがね。このまま予算削減が謳われれば、ディベート技能の無い研究者たちは真っ先に予算が削られていく現実に直面することになるでしょ」
- オリハタさん(仮)
- 「ああ、ありそう、それ。世界に認められた権威、みたいな箔が無いと国内でも認められるのは難しいし、そのためには研究に没頭するしかない、くらいの発想、とか?」
- 玄兎
- 「たぶんね。でも研究って投機的な性質があるから、世界で認められるほどの成果なんてなあ。そうそうあげられるものでもないでしょう」
- オリハタさん(仮)
- 「そうは言ったって、研究の過程で発見されることも有るし、研究自体に研究者を教育する効果だってあるじゃない」
- 玄兎
- 「そうそう。それにそうやって育った人材が、色んな分野で実務能力を発揮することもある。理学の工学転用を考える人ってのは相当数いるし、そういう人材が産業方面に拡散することで工業技術の底上げをする、また新しい産業を興したり新製品を開発したり、それによって信頼が形成されて、貿易力の向上を見込むこともできる。建築なんてまさにそういう分野でしょう?」
- オリハタさん(仮)
- 「建築の信頼は、うん、そうかも」
- 玄兎
- 「なんだっけ、最高の商品は、とか」
- オリハタさん(仮)
- 「最高の商品とは安全と安心。最高の嗜好品とは快適さと意外性、て?」
- 玄兎
- 「そう、それ。それの構築に技術的、科学的な要件が関係するなら、その研究環境は相当の保護が必要になるでしょう」
- オリハタさん(仮)
- 「でもそれには資金的な支援が必要で、そのためには投資家を納得させるものが必要で、更にそのためにプレゼンする能力が必要で、てことでしょ。でも実際にはどうしたらいいわけ?」
- 玄兎
- 「今から出来ることって言ったら、若くて威勢のいい連中を鍛えることじゃないかなあ。ディべートとか」
- オリハタさん(仮)
- 「それが言葉を増やすための手段?」
- 玄兎
- 「手段の一つ。他にも方法はあるかもしれないけど、権威にアンチテーゼが唱えられないと、いつまで経っても同じ話題の掘り下げしかできないから」
- オリハタさん(仮)
- 「だから若い人にって話ね。反骨精神で」
- 玄兎
- 「そう。まあ見当違いな話が増えることもあるだろうけど、そこから新しい着目点が生まれるかもしれないし、新しい視点は新しい価値付けにつながるから、その中でビジネスにつながるポイントが見つかる」
- オリハタさん(仮)
- 「かもしれない?」
- 玄兎
- 「そう(笑)」
- オリハタさん(仮)
- 「(笑)理想論だよねえ」
- 玄兎
- 「まったくだ。権威側にノブレス・オブリージュを求めるわけだし」
- オリハタさん(仮)
- 「間違えても良いっていうのが、そもそも難しんじゃない?」
- 玄兎
- 「そうだねえ。ファシリテータが必要だし。前にちょっと話題になったんだけど、TRPGでも失敗恐怖症、てか失敗するのが怖くて自由にプレーできないって話があって。減点法だからかなあ」
- オリハタさん(仮)
- 「TRPGに戻った。奇跡的(笑)」
- 玄兎
- 「奇跡的に(笑)。じゃあ戻ったところで、えー、どこまで話したんだっけ?」
- オリハタさん(仮)
- 「えっと、神話研究が今に通用するか。ジョージ・ルーカスの研究で、ドラマの鉄板モデルが出来た」
- 玄兎
- 「ああ、そこか。なんか直接関係ない話を延々しちゃったなあ。ここどうしよう?」
- オリハタさん(仮)
- 「注でも入れてもらったら?」
- 玄兎
- 「それがいいか。keiさん、もしここアップするなら冒頭に注を入れといてください。今回の話はいつもに輪をかけてTRPGのプレーや分析とは関係ありません。スルーされても以降の話が分からなくなることはないと思いますので、よっぽど暇な方でもなかったら、スルーされることを推奨します。こんなとこかな?」
- オリハタさん(仮)
- 「いいんじゃない?」
- 玄兎
- 「で、この辺で切ってもらって、この後ちょっと構造についてちゃんと話しますんで。ちょっと休憩していい?」
- オリハタさん(仮)
- 「私もちょっと整理したいから」
- 玄兎
- 「じゃ、一回止めます」
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