[chat] 20090804#3-ペルソナ/シナリオ/デザイン

ペルソナ/シナリオ/デザイン
玄兎
「だいぶ話がずれちゃったな。ペルソナシナリオの話だよね」
クジ
「そうでした」
玄兎
「とはいえ、僕のはどこまでも我流なんで、果たしてこれが正しいペルソナシナリオかは分からないんだけど。とにかく実際的な利用者を、ある程度の属性ごとに分けた架空のユーザー。こいつがペルソナ。で、そのペルソナがある状況下において、どう行動するかを細かく記述したものがペルソナシナリオ。求めるゴールに行き着くように、ペルソナの設定やらプロセスの条件やらを書き換えることでペルソナシナリオを操作するのが、シナリオデザイン」
クジ
「それはなんとなく分かります。そのシナリオと、TRPGのシナリオと、ワークショップの運営とは、みんな同じだと?」
玄兎
「同じだと思う。まずTRPGの場合について考えると、えーシナリオデザインの方法が大まかに2種類あるんだけど、どちらにせよペルソナを想定して、イベントパターンごとのペルソナシナリオについて考える。ストーリードラマのスタイルで書く時は、PCとプレイヤーのペルソナシナリオを核にするし、ワールドシミュレーションとして書く時は、PCを抽象化してNPCのペルソナシナリオで切り回す、とかまあそんな感じで」
クジ
「でもそれだと、ストーリードラマのテンプレートからペルソナを作っちゃったりしませんか?」
玄兎
「どういうこと?」
クジ
「さっきの、『ぼくのかんがえたぺるそな』にならないかと」
玄兎
「ああ、欲がコントロールできないと、そうなるだろうね。こういう流れを読んでくれるペルソナ、て設定しちゃう」
クジ
「欲ですか」
玄兎
「欲ってか願望かな。こう、シナリオデザインとストーリーライティングがごっちゃになってる人と言うか、まあ普通そんなもんだと思うんだけど、ストーリードラマっていうのは作家の願望が入るでしょう。予測ではなく願望。こういう風に展開して欲しい、ていう」
クジ
「分かります」
玄兎
「そこで狂いが生じるんよ、大抵の場合。TRPGに対するイメージが固定化してて、たとえば依頼が有ったら受けるものだから、依頼イベントは成功するものとして書いちゃったりする。でも実際にさ、現状僕らは仕事が来たら、ほいほい受けるか? て言ったら受けないでしょ。怪しい仕事かもしれないし、リスク回避は普通に考えるところで。それでも文法として、TRPGの作法だから依頼すれば受ける、ていうのはね」
クジ
「その場合、依頼を受けてもらうことをゴールにした、ペルソナシナリオが必要になる。そういうことですか?」
玄兎
「そう。依頼を受けるだけのセッティングと、実際にそれを有効に機能させるためのハンドリング、その両輪が理解できるように記述して、始めてちゃんとしたペルソナシナリオになる。ワークショップでやった、導入シーンだけのセッションは、そこんとこで自分がどういうハンドリングをするのかを、分かってもらうためのプロセスだったわけで。もちろんシナリオデザイナーに全責任を押し付けるんじゃなしにハンドリング・テクニックで乗り切れる要件でもあるなら、それを成立させるためのヒントを列記しておいて、あとはマスター任せにするんでも十分オーケーなんだけど。実際、商業シナリオってそういう書き方だし」
クジ
「そこはじゃあ、丁寧には書けないんですね。ハンドリングのスタイルが人によって違うから」
玄兎
「そう。だから清書ってか、商業シナリオであってもメモを作る必要はあると思う。自分流に解釈して、自分と参加者とのペルソナシナリオを考えて、何に気をつけてどうハンドリングするか? てことを意識しながらメモを作る。やったっしょ?」
クジ
「やりましたね。そこで手を抜かなくなったら、上手く回せるようになったって意見は多かったと思います」
玄兎
「準備をした自信ってのも、あるんだけどね。ちゃんとやってれば、その種の労力は裏切らないよ」
クジ
「でも、さすがに書き写しは面倒くさいって人が多かったですよ」
玄兎
「まああれは極端な話だからねえ。自分で書いたシナリオを他人に見せたい人でなかったら、やんなくて良いって言ったでしょ」
クジ
「一段上のステップですか」
玄兎
「ですよ。マンガだってさ、最初は模写から始めるでしょ?」
クジ
「やりましたねー」
玄兎
「小説でもさ、最初は書き写しから始めるわけ。書き写しながら自分ならどう書くかとか、どう書いてたかとかを考えて、やる前の自分の書き方と、写したものとの差を比べてみたりする。それからキャラクターをちょっといじって、たとえば男主人公だったのを女主人公に変えてみたり、そうすることでどこが変わるのかを推敲したり、性別が変わることでシチュエーションが変わったところはどうやって元の路線に戻すかとか」
クジ
「そういうのって、手書きでやりました?」
玄兎
「僕は手書きだった。まあワープロもあったんだけど、当時うちにあったワープロって、1行かける12文字表示だったから」
クジ
「12文字って、横12文字しか書けないんですか?」
玄兎
「ああ、いやそうじゃなくて、12文字しか表示されないの。出力は40文字くらい出来たと思うんだけど、12文字以上になるとこう、スライドしていってさ」
クジ
「そんなの有ったんですか」
玄兎
「あったよ。僕の世代ってファミコンもそうだけど、ちょうどデジタル機器の転換期だったんよ。だからまあ、その過程で色んなあだ花が咲いてて。あれはハンドヘルドコンピュータとか色々有ったんだけど、まあそれはいいか」
クジ
「知らない世界です」
玄兎
「知らなくていいと思うよ。この手の話題が通じる人って、僕らの世代でもコンピューターオタク、とか言われてたし。それよか話を戻そう。なんだっけ?」
クジ
「小説の書き写しが、手書きだったかって」
玄兎
「そうだったそうだった。てことはシナリオの清書の話だっけ」
クジ
「はい」
玄兎
「まあシナリオの清書自体は、理解を深めるためにも大事なんだけどさ。あと2つ3つ理由があるのね。パフォーマンスとして」
クジ
「パフォーマンス?」
玄兎
「うん。だからさ、GMが机の下のアンチョコ本を読みながらマスタリングするとね、顔伏せて話すことになるでしょ? それで言葉が伝わるかって話」
クジ
「あ、呼びかけ」
玄兎
「そう。メモに起こすってのはさ、頭の中に一度放り込むでしょう。そうするとまあ、メモを確認しながら自分の言葉で喋るでしょ? ほら、日本の国会でもさ、小泉さんがスピーチを原稿丸読みじゃ無かったってだけで評価されたりさ」
クジ
「あ、はい」
玄兎
「それから、メモにするってことはデータを凝縮するから、そうすると重要なことしか書かないでしょ。これまた小泉さんじゃないけど、ワンフレーズ、ワンワードってのは力点として聴衆に理解されやすくもなる」
クジ
「わかります」
玄兎
「最後に、顔を上げて喋ってると、それだけで声はよく飛ぶようになるし、GMに自信がありそうだとプレイヤーも意見を出しやすくなる。活発な意見が出れば、それだけ頭も刺激を受けてフル回転になるから、普段、自分が認識してる以上のスペックが発揮できるようになるってわけ」
クジ
「パニックしませんか?」
玄兎
「だから、そのために1つずつ話を進める技術が必要になる。話し合いのときにやったでしょ?」
クジ
「議題の分解とかですか?」
玄兎
「そう。あれ。オブジェクトカードの運用のときもさ、環境を説明したあとにオブジェクトの抽出ってみんなでやってるっしょ? あれもそういう、その場の話題を切り分けて、1つずつ処理するための技術でさ。カメラをね、その話題にフォーカスして意識を集めるわけ」
クジ
「はー。徹底してますね」
玄兎
「そういうのがデザインだよ」
ワークショップのデザイン
クジ
「ワークショップのシナリオは、どうなるんです?」
玄兎
「TRPGよりよっぽどペルソナシナリオまんまだよ」
クジ
「どうやってデザインすればいいんでしょう?」
玄兎
「最初にペルソナを考えよう。現状どういう状況にある人たちを集めて、その人たちは何を目的としているのか。データはもう、手元にあるでしょ?」
クジ
「これですね」
玄兎
「うん。で、次にワークショップっていう環境を考えると、なにかを教えられる、一方的に教わってくる場じゃなくて、自分で考えて他の人に協力してもらう場、ってことになるわけね。でも、漠然と分からない、上手く出来ないって悩んでるだけの人もいる。そういう人に、いきなりワークショップに参加してもらっても、何について助けを求めればいいかが分からない。それじゃあワークショップは十全に機能しない。どうしよう?」
クジ
「まず何が分からないのかを掘り下げる必要がありますよね」
玄兎
「うん、同感。だからまず、掘り下げるためのイベントが必要って事になる。ワークショップは全員参加の場で、みんなに協力してもらう、みんなに協力する、そういう相互互助の場なわけだけど、実は本場でやってるワークショップにしても、最初の一日目は講習会みたいなモデルから入ることが、けっこう有るんだわ」
クジ
「でもそれってまずくないですか?」
玄兎
「何が?」
クジ
「ええと、つまりそこで教わる姿勢になっちゃわないんですか?」
玄兎
「うん。長時間やっちゃうとね、そういうことも有ると思う。ワークショップで何より大事なのは、場を作ること。で、その場のセッティング段階でミスったら、大コケになる可能性が高い。だからまあ、不意打ちをする」
クジ
「不意打ち?」
玄兎
「講習をちょっとやったら、いきなり参加型のフォームを起動させんの。たとえばシナリオのモデルデザインだったら、シナリオの基本モデル、構造解釈について簡単に話をしたら、いきなりグループを作ってもらって、好きなシナリオを1人ずつ話す場を作っちゃうとか」
クジ
「あ、それをやったわけですか」
玄兎
「ていうと?」
クジ
「最初の、呼びかけ」
玄兎
「ああ、うん。あれもそうだよね。参加者に体を動かすことを思い出してもらうためにやった。それだけじゃなくて、他にいくつもレイヤーごとの狙いってのが有ってのものだけど、ワークショップのレイヤーとしては、体を動かす、声を出す、参加する姿勢を作る、て目的だった」
クジ
「そこが難しいんですよ」
玄兎
「なんで?」
クジ
「色んなレイヤーの目的ですか? それを一発でクリアさせるアイディア、私は持ってないです」
玄兎
「あ、そこね。それは気にしなくて良いよ。とにかく声を出す、体を動かす、てあたりだけ気にしてれば。よく言うでしょう、体を動かした方が脳が働くって。座学って多人数相手にするには効率的なんだけど、学習効率から言ったら効率悪いんだよね。だから宿題を出して補填するんだけどさ」
クジ
「宿題ってそういうものなんですか」
玄兎
「あ、いや、わかんない。勝手にそう思ってるだけで。そういう意味では学習効率に差が出るのって、宿題をやってるかどうかってこともあるけど、それ以前に1人で勉強する技術を教えないからだろうな、とかも思うんだけど」
クジ
「1人で勉強する方法が分からない、方法が分からないから成績が伸びない、成績が伸びないから宿題をする意味が分からなくなる、宿題をする意味が分からなくなるから宿題をやらなくなる、それでドロップアウトですか」
玄兎
「うん。まあそういうことだと思う。家庭内でも義務教育の最初で、宿題をする、褒められる、の構図を作っておくと全然違うし。できれば家で、親が宿題を見てあげたりすると、随分違うんだよね。まあこう言うと理想論だって言われるんだけど、子供の学習力について親の経済力による格差を埋めるには、それくらいしかないと思う」
クジ
「経済力があったら塾か家庭教師ですか」
玄兎
「うん。まあ家庭教師って教える技術に個人差がありすぎるから、難しいところもあるんだけどね。塾も学校スタイルの延長だから、個別指導か、まあ学習の技術論を持ってる人がいないと、塾辞めた瞬間に落ちるんだけど。時間効率が全然上がらないから」
クジ
「じゃあ文武両道が出来る子供って、その時間効率が良いってことですか」
玄兎
「だと思う。まあ独学というか直感と言うか、僕は教育学を勉強したわけじゃないし、基本的には自分と友だちと子供と、まあそれくらいの少ないサンプルでしか知らないから、間違ってるかもだけどね」
クジ
「経験則ですか」
玄兎
「早くから働いてたから、高等教育に没頭できる時間が取れなかったんよ。まあ僕のはなんでも興味を持ってもらうことまでが仕事なんで、そこから先は自分で勉強してください。で、まあそれはいいとして」
クジ
「はい」
玄兎
「ワークショップは宿題をやる場に近いと思う。1人1人が宿題を持ち寄って、分かるところを教え合う、いわゆる勉強会ってやつ。お互いに分からなくても、分からない場所って1人ずつズレてるからさ、細かく砕いていけばパーツは必ず組み合うようになってるんだよ。で、そうして細かく砕いていくやり方を教える、というか導くのがファシリテータの仕事」
クジ
「それ、今やってるみたいに、ですか?」
玄兎
「あ、分かった?」
クジ
「さすがに、ここまで露骨にやってもらえれば」
玄兎
「よかった。伝わった」
クジ
「なんとなく、出来そうな気がしてきました」
玄兎
「それは良かった」
クジ
「でもゲームシナリオの作り方のほうは、さっぱりなんですけど」
玄兎
「じゃあダメか。でもシナリオ作れるでしょ?」
クジ
「自分では作れるんですけど、人に教えるとなると」
玄兎
「まだ分解は出来てないか」
クジ
「はい」

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