[Manual] 箱庭のコミュニティ・モデル

 2008/03/19 に追記、補記を行いました。
 詳しくはエントリ最下部をご覧ください。

 手引きタグですが、いつにも増して情報ダダ流し方向で。
 シナリオメイキングに社会性を持ち込むとき、その社会(コミュニティ)が今どのような状態にあるのか、ということが問題になります。特に「シナリオの都合」とか「TRPGの常識」といった、謎の不文律でプレイヤーの行動を制約したくないゲームマスターにとって、この辺って死活問題になるんじゃないかと。
 んで、マトリョーシカ(入れ子構造)が好きな人間としては、ここはミクロにもマクロにも使える構造(モデル)というのを考えなければイカンわけですよ。

 そこで例えば『ユングとタロット ― 元型の旅』を持ち出したりするわけです。
 「どっかで見たことあるぜ」って方もいるでしょうが、気にしてはいけません(何)

タロット(大アルカナ)による社会の段階モデル

アルカナ 備  考
『愚者』 すべての始まり。無限の可能性の示唆。
『魔術師』 夢想し、積極性を持っている。だが未熟。
『女帝』 母性と、その生命力によって守られる。
『女教皇』 知識を与える女性によって、最初の精神的成長が促される。
『皇帝』 やがて父性に統率され、初めての決断を求められる。
『法王』 寛容な環境の中で精神性が充実し、また宗教など精神世界との出会いが訪れる。
『恋愛』 そうして築かれた精神世界の中から、自分だけのものを選択する。
『戦車』 何かに対し、目に見える勝利を得る。
『正義』 公明正大さや善悪に関する理性を獲得する。
『隠者』 理性によって再び自己の内面を探求する。
『運命』 干渉できない運命が現れ、そこから自分の将来に関する決断を得る。
『剛穀』 意志や情熱や理性によって自らの力に磨きをかける。
『刑死者』 得た力によって、かえって身動きが出来なくなる。
『死神』 自らの行動を制約する精神を殺し、将来に向けた転機とする。
『節制』 二つ以上の価値の対立に翻弄され、やがてその中から調和を見出す。
『悪魔』 他者の甘言や誘惑によって、大きな迷いが生じるようになる。
『塔』 これまでに築き上げた価値観が崩壊する。
『星』 なにかに対して儚げな希望を抱く。
『月』 将来の不安にさいなまれるが、それを抱いたまま前進する。
『太陽』 やがて暖かな未来について思いを馳せる。
『審判』 そうして遂に、旅の終わりが訪れる。
『世界』 旅の終わりの果てに、自己のあるべき場所を発見する。

 ご存知の方もいらっしゃるでしょう、タロットカードの大アルカナです。これを番号順に並べると、いちいち人生の道程にそっくりじゃないかと悟ってしまった*1[悟ってしまった] = これは「ユングが発見した」とか「偶然そうした序列になっていた」という意味ではありません。あくまで「ユングがそれに気付いた」程度のニュアンスです。ユング博士の人生(?)モデル。
 で、まあ人生モデルとして考えられたものを、社会にそのまま当てはめてあげてもピッタリじゃよー? というのがこの話。
 ジュヴナイル型のストーリーフォーマットにも使えてお徳(笑)

 最後の『世界』に関しては、人生モデルの場合は「安住の地」であったり「死/活動停止」になりますが、社会組織の場合は「目標の達成」や「組織の新生」と考えた方がしっくり来ます。
 で、その辺の循環を表すために、もう一つのモデルを持ってくるわけです。

四季による社会の循環モデル

季節 分野 備考
≪春≫
(勃興期)
占札 『愚者』 『魔術師』 『女教皇』 『女帝』
人材 少数の超人的人材によって欠陥だらけの体制を克服している
体制 中核人物は母性的で、集団をまとめることで体制を作る
≪夏≫
(成長期)
占札 『皇帝』 『法王』 『恋愛』 『戦車』 『正義』 『隠者』
人材 理想的な体制下に活動的な人材が集い、また輩出される
体制 中核人物は父性的で、体制に指向性を与えて躍進を促す
≪秋≫
(収穫期)
占札 『運命』 『剛毅』 『刑死者』 『死神』 『節制』 『悪魔』
人材 個々の人材はむしろ小粒になり、成熟した体制がそれを支える
体制 体制は官僚機構化し、小さな汚職による機能低下が始まる
≪冬≫
(荒廃期)
占札 『塔』 『星』 『月』 『太陽』 『審判』 『世界』
人材 衰弱した体制から離れられない非建設的な人材が発掘される
体制 衰弱した体制から原理主義や中立志向が発生し、分裂する

 循環する四季の運行を、社会組織の段階に当てはめるモデルです。
 タロットモデルは具体的で面白いんですが、いちいち考えるのが面倒なこともあるんで、そういう場合は四季モデルだけ回してしまうこともあります。(ちなみに「占札」の配分は勝手に割り振ったもので、正解とは限りません)

 これにももちろん(?)元ネタはあるんですが。
 これは『Ars Magica』って未邦訳 TRPG の中で“コヴナント”と呼ばれている社会の、成熟段階を表すルールが元になってます。
 まあ、換骨奪胎になってる可能性もありますが。

その他の社会モデル例

 これ以外の社会モデルとしては、たとえば『陰陽師』ブームで一般にもちょびっと知られるようになった「陰陽五行説」という思想があります。大雑把に言うと、これは「陰・陽」という対立軸と「木・火・土・金・水」という五大属性の相生/相剋関係を併用することで事象を読み解くもので、営々と受け継がれてきた歴史の分だけ表現の幅は膨大です。(たとえば「陰陽を月・日と読みかえれば陰陽五行で七つの曜日に符合します」とか)
 まあ個人的な趣味で言ったらコッチの方が好みなんですが、概念が多岐に渡りすぎていて齧るだけでも一苦労ってコトと、東洋思想を受容できる世界観は意外と少ないってコトで、紹介を見送りました。
 ……つか、いや、ホント奥が深すぎるんですよ、アレ。

まとめ(無理矢理)

 なんにせよ、こうしたモデルを知っておく、または自分で作っちゃえば、シナリオ書いたりマスタリングしたりの役に立つんじゃないかって話です。
 個人的には、タロットモデルを使って「どういった形で PC が関わると、コミュニティの段階が進行するか」という課題設定なんかに使ったりしてます。

 何かの足しになったら幸いです。

【補記 2008/03/19】

 大アルカナが一連のストーリー(俗に “The Fool’s Journey – 愚者の旅” と呼ばれるもの)を持つことになった経緯は、詳しいことは良く分かっていないようです。
 ただ、だいたいこんな感じだったんじゃないかという憶測は有ります。

 タロットの来歴に関してはさまざまな説がありますが、歴史的に見て 16 世紀にタロット(トライアンフ)禁止令が何度も発令されたり、18~19 世紀のエジプト熱の影響を色濃く受けたりと、何かと問題視される要因を孕んでいた(ないし孕まされた)のは確かです。
 そして、そうした問題視から逃れるために、たとえば「大アルカナ 22 枚は、キリスト教ドミニコ会の “Rota Mystica(神秘の輪)” である(神秘の輪に描かれる聖人と預言者たちの数は 22 名)」とか、「大アルカナは“愚者(巡礼者)の旅”というストーリーである」と釈明するために序列と意味をデザインして、タロットを親キリスト教に位置づける(問題視を回避する)動きが“あったのではないか”と考えることもできます。
 大アルカナが一連のストーリーを持ったのは、そうした「保身/延命の手段」と、そうしたストーリーが占いの神秘性にマッチし、迎合されたといった経緯からではないか? という、まあこれは憶測に過ぎませんが。

 残っている資料から考えると、最初に明確に「愚者の旅」を読み解き、提唱したのは 19 世紀の中ごろ、タロットの序列とセフィロトの樹を関連付けた『Hermetic Order of the Golden Dawn(黄金の夜明け団)』の関係者だろうと思いますが、この辺あまり論旨に関係がないんで言及を避けることにします。
 厄介なんで。

References

References
1 [悟ってしまった] = これは「ユングが発見した」とか「偶然そうした序列になっていた」という意味ではありません。あくまで「ユングがそれに気付いた」程度のニュアンスです。

「[Manual] 箱庭のコミュニティ・モデル」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ペテン師の戯言。

コメントは受け付けていません。