[note] キャンペーンと死

黙示録戦記の話。

キャンペーン・ゲームを遊んでる時、登場人物同士の人間関係が大きな要素になったりして、そうすると「PCが死ぬ」ことを避けようとしたりする。

でもまあ自分としては、「死ぬときは死ぬ」のがゲームだと思ってるので、毎度この辺については頭を悩ませる要素でもあったり。

# PCの死と輪廻転生

キャラクターの死で一番デカいのって、「先がない」ことって感じがあって。

この辺は人類史がらみで昔から考えてることなんだけど、まあ一つの見方として。

## 輪廻転生

輪廻転生ってあるでしょう。

まあその実際の理解というか悟りというか、そういうものはさておいて、ただ「死んだ人間が生まれ変わって別の人間として生きる」みたいなモンだとして。(人間じゃないものに転生するケースは今回は棚上げしといて)

それを「個人」とか「自由意志」とか、あるいは「高等教育」とかの概念が無かった時代について考えていくと、わりと「そうなるよね」って思うことは有るのね。

人間は生き残るために生存競争をする。人間じゃなくてもするけど、人間もする。自然界での生存もするけど、人間社会での生存も必要になった。で、その中で「個人」って時には切り捨てられるものでして。集団として生き残ることを考えないと、各個撃破で文字通りの全滅になっちゃったりする。「太古の人間は利他的な生物だ」みたいな話もたまに目にするけど、それは単に生存戦略上それがベストな選択だったからで、より広汎に機能する最適解みたいなモノじゃなかろーかと思ったりもするわけ。

「自分」というものについて、あるいは「個人」というものについて考えたとき、「感情」「情動」というものの優先順位を下げれば、外からそれを見出すのは「行動」であり「判断」であるわけで。「同じような判断/行動をする」人に対して「誰それに似てる」と言ったりするけど、それは脳の整理機能からしたら当然のことで。これが「家族/血族/氏族」のスケールで発生すると、つまりそれが「輪廻転生」と見られるんじゃないか? みたいな話。

で、こうした「判断/行動」といった能力は生育環境から修得するわけだけど、「権利」という概念、あるいは「ウチ/ソト」というモノができてからコッチ、それを守るためには「自分と同じ能力を持った人間」で共有するのが望ましくなる。違う能力を持った人間の場合、必要となるモノが異なってしまい、裏切る可能性があるから。

ではそうした「判断/行動」を極力同じようにするにはどうするか? 昔からできたことは幼い頃からの教育ってことになる。一番それがしやすいのは? と考えればまあ「家族」ということ。個人の判断だけでは生存がおぼつかなくなれば、個々人は同じような能力の継承を分担をしながら結束した「氏族」をとしてまとまって行動する。

こうして先祖の情報までもが共有されることで、より「似ている」と言われるケースが増える。これの極端なパターンが「輪廻転生」なのかなーと思ったりもするわけです。

余談だけど、社会体制の崩壊を内政面から見れば、そうした血族による能力継承に対して、生物としての先天的要因(身体機能)が求められる能力に不適合であったり、単純に世代の継承/交代の失敗であったり、そうした小さなズレの蓄積によって起こったんだろうなァ……と思うこともね。

### (T)RPG に置き換えると

翻って (T)RPG の話。

この「氏族」構造って、(T)RPG に置き換えると「パーティ」なんて言われるモノだと思うのね。役割分担をする、継承する、といった点で。

継承については、キャンペーン・ゲームで PC が死んだ時の話。他の PC は生きているなら、新しく作成して参加する PC は彼らの穴埋め要因となるわけで、ということは自然と「死んだ PC」の要素を引き継ぐことになる。よく「昔は PC が死んだら名前だけ書き換えて再登場した」とか「実はこいつは死んだ PC の生き別れた双子だったんだ」みたいな笑い話があるんだけど、笑い話ではなく実際問題として、それは一つの正解だったわけ。

でもまあ長く続けてると飽きることもある。従来の役割から外れたところの、別の役割で遊びたくなったりする。それをしようとしたとき、しかし他のパーティメンバーは継続を望むなら、能力継承を失敗した PC によってパーティは全滅するかもしれない。これが社会体制の崩壊。

あるいは「飽きても続けろ」というスタンスもあるんだけど、それはその場しのぎにはなるかもしれないけど、解決しなければ後々まで火種を残すことになるし、前に書いた「環境を維持する」ことを難しくするわけで。

### 余談:条件や方法の問題

これはゲームの目的というか、ゲームシステムが示唆する「遊び方」や「強さ」、「ゴールに必要なもの」がひとつであるとき、またその達成に必要とされる役割がゲームの適正参加者数に収まるときの課題。

たとえば「どんなときも戦闘で勝たなければならない」ならば、「戦闘」というルール内で最強の役割分担が追求されることになる。でも他のルールで勝っても良いのであれば、従来の分担から外れたところで勝ちを拾えるかもしれない。

または「戦闘に勝つ」ための方法が多岐にわたっていて「明らかに参加者の数では補いきれない」ならば、役割を変えることは単に「戦闘に勝つ方法を変えるだけ」というところに落ち着く。((こうした「本当は複数のルールがある」状況下で、それでも「一つのルールでのみ戦おうとする」ことが、敗北への一里塚だったりもするのだけど、まあそれは置いといて。))

## PCとプレイヤー

ところでこうした「輪廻転生」における「判断/行動」の類似性を、(T)RPG で誰が担うのかといえば、そりゃもちろんプレイヤーで。

同じプレイヤーが担当するとき、その PC の能力が、また置かれた状況が同じであるなら、意図的に「変えよう」としない限りは同じように判断/行動することができる。

そうするとまあ、設定上は「死亡」という属性を一旦通過してるけど、次の PC に「転生」している、生まれ変わっている……と言えなくもない。

### PCの死

でもまあやっぱりさ、PC が死んだらショックなわけですよ。色々。

それって「理屈じゃない」とも言えるんだけど、それでもあくまでゲーム上で差異を認識することがあるとするなら、それは「これまでの経験」であり、「積み重ねてきたもの」であり。そのうちゲーム上で扱うデータについては、経験を反映しているわけだから、これについては同条件で新キャラ作成をすれば、「同じような経験をしてきた」ということでコピーすることは可能。

でもやっぱそれじゃ足りないんですよね。なんか抜けてる。

そこにあるのって「コミュニケーション」であり「コネクション」なのね。これまで遊んできた中で、参加者たちと繰り広げてきたコミュニケーション。そうして色んな駆け引きをしたりしながら作り上げていったコネクション。そういうのが、PCの死亡でパァになる。「プレイヤーは知ってるのに、初対面として挨拶をし、空々しいやりとりをしなければならない」ということになると、これはまあテンション下がっちゃっても仕方がない。

更には「もう語られなくなる」「忘れられてしまう」ということも大きい。

「死ぬ」ということについて、よく「第一の死は、生命の終わりである。第二の死は、すべての人々に忘れ去られることである」みたいな話があるんだけど、この「忘れ去られる」っていうのは「語られなくなる」っていうことでもあって。このへんちょっと (T)RPG の「物語る」部分にもかかってくるんだけど、「語られる」ことによって「生きる」ものってあるわけね。

「生きる」とは何なのかというと、それは「情報の更新」ですよって考え方がある。ずっと前に「個々の物事がものすごいスピードで流れ消えていく時代に、それでも繰り返しいろんな場所でいろんな言葉で語られていけばいい」みたいな話をしたことがあったんだけど、それも概ねこの辺の認識からなんだけど、これはゲームでも同じことで。

第一の死についてはゲーム的に定義されてるから、これはどうしようもないのだけど、第二の死についてはまだアプローチの方法はあるだろうなって話。

実はずいぶんと前に[[戯言の方で紹介した>http://blog.talerpg.net/rpg/archives/121]]『死に急ぐ奴らのバラード』が、「また、セッション中に死亡したファッカーは、即座に手札を最大数まで補充できる。」って方法で、ゲームから排除される第一の死の回避のみならず、カードの効果に死亡した PC を演出することで、PC について語られなくなる第二の死についてまで回避してるっていうのがね。だからこのゲームでは PC 殺されてもモチベーション下がりにくい構造があったりした。

### コネクションの継承

ところで「黙示録戦記II」ではポストアポカリプスの世界で、文明の利器の多くが失われて退行した社会をどうするのか? というゲームになるわけだけど。その中でプレイヤーは、ゲームのルールを知ることである種の神になったりもする。まあ〈悪魔〉の転生体だし。((「神とはなんぞ?」という中で、今回は「歴史を駆け下りていく者」という例のアレを採用。))

今回は新たに〈神話〉を記述する、ある種の文明史をゲームにするので、プレイヤーは自然と「氏族」を形成することになる。そこでコネクションも継承するモデルを考える……といってもやることは先人に倣うだけなんだけども。

とりあえず前キャンペーンより引き継がれるテーマ〈神話〉に語られる存在として情報を保存すること――これは『俺の屍を越えてゆけ』の奥義みたいに機能したりもする。それからシナリオの生成に盛り込むこと。社会制度とコネクションの継承ルール。後は管理サイトに記録を残すこと。

### ひとまずおしまい。

それでも PC が死ぬことはショックだろうけど、ひとまずこんなところかなァ。

これ以上は今んとこ思いつかないので、リスクとして許容してもらうってことで。

そもそもキャンペーン・ゲームのミッション自体が、プレイヤーが目的を設定するスタイルを取るんで、死にたくなければ簡単なミッションを組めばいいだけだし。