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新年ということで。
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**南の空を望む
空を飾った星たちも姿を隠しはじめ、夜から朝へと移りゆく頃、一台の軽自動車が山腹を登る。
いくらか開けた高台に車を止めると、運転席の窓を開けて青年が顔を出す。
ふは。
大きなため息をひとつ投げ捨て、誰に聞かせるでもなく口を開く。
「長いよねえ」
「もう何年になるっけ」
「気がついたらもうこんな三十過ぎてたよ」
「子供たちはどんどん気難しくなっていくし」
「それでもセンセは若いままだ」
「ねえ」
「あの人の言うことを信じて頑張ってきたけど、まだ足りないのかな」
「まだセンセは、山を降りられないのかな」
「俺だけ老けてくってのも、なんかなー」
「まあ分かっちゃいたけどさ」
あー、ちくしょう。
寝ぐせの残った頭髪をぐしゃぐしゃとやって、大きなため息をもう一つ。
「うん、まあ、愚痴はこれくらいにしとこう」
「今年こそは。な」
「ひとつよろしくお願いします」
遠くの水平線を望んで両手を合わせ、不恰好に頭を下げる。
そろそろ新たな一年が始まる。
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