随分前に書いた、マジックイメージカードだけで遊ぶゲーム*1[マジックイメージカードだけで遊ぶゲーム] = 『おむすび』レジュメ(旧題『もすびー』レジュメ)と、内輪で作って遊んでた同人システム『ハルモニアFRS』*2[ハルモニアFRS] = 『灰羽連盟』の世界設定をベースに、ハイバネに換えて「マギ」という、より能動的に「世界の歪み」をマジックイメージによって調律する魔法使いたちを遊ぶシステム。マジックイメージは実際の魔術記号で拡張したり、Fローズの『剣と魔法』を取り込んだりして、セッションと魔術儀式がごっちゃになってるような遊び(笑) の超発展形が出た(笑)
ある種これまでの TRPG 観を破壊しかねないデザインは、色んな意見が出るだろうなぁとは思うんだけど、これって TRPG の〈マスタリング〉の、特に〈運用〉の極点みたいなモンじゃないか? という。あるいは「門倉直人氏の TRPG 観」からすれば正統進化だろうなァ、とか思うんですよね。
なんというか、「やっと出せましたね」って気分。
門倉直人氏のデザイン思想
『季刊R・P・G vol.1』の「ゲームデザイナー対談*3[ゲームデザイナー対談] = ぶっちゃけコレ読みたくて『季刊R・P・G』買った(笑)。門倉先生が表に言葉を発するって事自体が貴重だし、しかも銀じいとの対談ってどうなるのかと。/結論:超面白い記事でした。」で鈴木銀一郎、門倉直人、小林正親の三氏が対談していて。この中で門倉氏が TRPG をデザインについて考えた話で、
門倉:だから、自分がTRPGを作るときには、まず、GMが司会進行しやすい。GMが作りたいもの、やりたいことが出来る材料を提示する。という要素が念頭にあった。そして、GMが一番、難しく感じるんじゃないのかなと思ったのが。物語を作るうえで、物語にどれだけ美しいものが入れられるか。つまり、物語の中で、どれだけ美しさをちりばめることが出来るか。と言うことだったんです。
(『季刊R・P・G 創刊号』 p.147)
って話をされています。そこからマジックイメージのあたりで「SLG からのリアリティを追及する流れから逸脱した」とか、「RPG はゲームよりプレイだ」とか……その辺りの話を思い出すと、『Wローズ』ってその設計思想を生のまま出したモノなんだろうなァ、という。門倉先生そのものっていうか。
そんなわけで、『Wローズ』は第一に「GMの素材集」であり、第二に「素材をどのように使うか」の判例を示し、第三に「いっそ全員GMで遊べば良いじゃん」というダイナミックなアプローチだと思ってます。
『Wローズ』は「GM不要」と言いますが、実際にはそうではなくて、「全員GM」なんじゃないかってのが、読んだ限りでの直感的なイメージです。
この辺は同じように「GM不要」と言うシナリオクラフトと比較してみると面白いんじゃないかなぁ、とか思ってます。たぶんシナリオクラフトは「シナリオクラフト自体がGMとして機能する」ようにデザインされていて、プレイヤーはシナリオクラフトを「仮想GM」と見做せるから、あまりスタイルを変えずに遊ぶことが出来るわけで。その辺が従来型の遊び方との親和性の高さになってるんじゃないか……とか。
『Wローズ』は〈マスタリング〉解体の流れ?
『Wローズ』の要点って、たぶんキーワードやシチュエーションという「物語の構成要素」を引用する「てきとうな物語本」の存在なんですね。
これを拡張して、その場で遊ばれている TRPG のセッションを、「てきとうな物語本」の代用することが可能ではないか? と考えると、ちょっと面白い展開にもできます。
これ、視点を変えることで、こうも言えます。
『Wローズ』を「てきとうな物語本」として、他の TRPG システムを遊べるんじゃないか? という。
……まあ気付いてる方はたくさんいるんだと思うんですが、これ、ゲームマスターが普通にやってる頭脳労働なんですね。プレイヤーも(規模は違うけど)やってるし、最近はプレイヤーが半分ゲームマスターの領分に踏み込んでくるから、そういう意味ではみんなやってることなんですが。
そういう見方をすると、これって『Aの魔法陣』で TRPG のやりとりが解体されたのと同じように、『Wローズ』では(マスタリング〉が解体されるのかなー、という。
プレイヤーを振り回す『ローズ・トゥ・ロード』の物語
ところで従来の TRPG の遊び方では、「物語の構成要素」を「ユーザの脳内」から適宜――恣意的に――引っ張り出してきます。それはコンセンサスの取りやすさにおいて優れていますが、反面、物語の揺らぎの幅を小さくしてしまい、物語自体を矮小化させてしまうという欠点にもなっていました。
そこで『Wローズ』では構成要素の引用元を、矮小化の原因となる「ユーザの脳内」から切り離し、容易に共有できる「てきとうな物語本」という有形物からランダムに引っ張ることで、ユーザを刺激し、また安易に思い通りに進まないよう振り回すモデルになってるわけです。
ユーザを振り回すことで物語の矮小化、言い換えるとパターン化を防ぐか? ということについても、やはり門倉氏は、
門倉:ロールプレイングゲームというのは「ゲーム」というより前に「プレイ」だというのが、僕のなかにあって。つまり「ゲーム」という厳密なルールの枠の中で、硬く結晶化したモノを作っていくというのではなくプレイによって、ひとつの枠をはみだして、自分のオリジナルな物語を大きく拡散させていく、そんなイメージがあるんです。
(『季刊R・P・G 創刊号』 p.147-148)
と話されていて、この辺をシステム側から引っ張り出すためのデザインになってるんだろうなという。
この「ユーザを振り回す」モデルっていうと、『ファー・ローズ・トゥ・ロード』の感情ルールが思い出されます。あれは門倉氏のデザインではなかったようですが、ローズの系統が要求している遊び方というのは、つまりそういうモノなんじゃないかな、と。
References
↩1 | [マジックイメージカードだけで遊ぶゲーム] = 『おむすび』レジュメ(旧題『もすびー』レジュメ) |
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↩2 | [ハルモニアFRS] = 『灰羽連盟』の世界設定をベースに、ハイバネに換えて「マギ」という、より能動的に「世界の歪み」をマジックイメージによって調律する魔法使いたちを遊ぶシステム。マジックイメージは実際の魔術記号で拡張したり、Fローズの『剣と魔法』を取り込んだりして、セッションと魔術儀式がごっちゃになってるような遊び(笑) |
↩3 | [ゲームデザイナー対談] = ぶっちゃけコレ読みたくて『季刊R・P・G』買った(笑)。門倉先生が表に言葉を発するって事自体が貴重だし、しかも銀じいとの対談ってどうなるのかと。/結論:超面白い記事でした。 |
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