これまで担当してくれてた某氏が大病されてしばらく休職することになった。
バトンタッチした新担当は、新婚ほやほやらしい。
ためしに話を振ってみると、
「うっひひ。聞きたいんですかァ?」
なんていやらしい笑い方をするんだコイツ。
まあでも仕事は出来るみたいなんで仕方がない。
こっちも好き勝手やらせてもらってる以上、あまり文句も言えないし。
* * *
さて、その新担当に原稿を渡したときの話。
人目をはばかる建物が立ち並ぶ細い路地……の正面にある、喫茶店で待ち合わせ。
店内を見渡せば、いかにも待ち合わせだか、これから入るんだか、あるいは出てきたんだかな雰囲気の人たちで一杯である。
なんでこんなところを指定してきたんだ貴様。
「仕事ですよ仕事。どこだって良いじゃないですか。うひひ」
どこだっていいなら会社の近くだってよかろう。
どっちかの仕事場の近くにすれば色々都合もいいだろうに。
まあいいか。
とりあえず原稿を渡す。
「うへへ。なるほど、たぶん来月あたりで終わりですね」
なんだそれ。もしかして打ち切りとかそういう?
待て。ちょっと待てベリー待て三年くらい待て。
「なにがです?」
何がって。
終わりませんよ、これ。
「終わるのはあっちです」
店の隅でいちゃついているカップルを指差した。
「あれはだめです。インスタントです。すぐ冷めます。
あと、あそこのはコンビニ。金の切れ目が縁の切れ目」
ああそうかい。
確かにそんな雰囲気はあるけどな。
「この中にいるどれくらいが一月下旬まで持ちますかねえ。うひっ」
そう言って、例のいやらしい笑いを顔に張りつける。
こ、こいつは……
アンタも新婚だからって浮かれてると後が恐いよ?
「うちは大丈夫です。最初からダメですから」
本当にダメだこいつ。