そういう日

 今日は今日とて折角のクリスマス・イヴが台無しである。

 毎年恒例の身内(といっても血縁者ではなく特に親しい友人たちのこと)パーティは、文字通り世界中に面子が散ってしまったので、具体的な形にはしないで、暇な人間は適当に集まれということに。どうせ松の内に集まるんだから良いだろうと。海外に散った面々も、さすがに正月になると日本に集まることに決めてるらしいので。
 それにまあ、今年はカミさんの同業者が集まるというので、そっちのお手伝いをすることに。

 


チビ介は近所の友だちの家で集まるらしく、朝早く外出。
 娘も、今年は身内の集まりが悪いということで外出。
 居候とチビ姫は、実家で行われるホームパーティに出席。
 なんの企図もしていなかったが、僕とカミさんだけになった。
 言い換えれば「現場の人間だけになった」というべきか。

 ゆったりする。

 どうせ半年前に組んでいたディナーの予定はとっくに中止になっている。代わりに今くらいの時間、ゆったりしていてもいいではないか。リビングで『東京ゴッドファーザーズ』を流しながら、のんびりコーヒーを飲んだり、まあイロイロだ。
 先日、業務用のホイップクリームを娘が買ってきていたので、ウィンナーコーヒーにしてみたが、生憎と僕には合わなかった。
 カミさんは平然と「美味しいじゃない」と飲んでいた。

 そうそう、ケーキもいただいた。
 娘が作ってくれていたらしい。朝、書斎に置いてあった。
 ところで書斎には鍵をかけておいたはずなんだけど?

 そんなことをしながら、ひどく贅沢な 2 時間が経過。
 睡眠中を除いて、何の作業もせずに 2 時間も過ごせたのは……先日のクルージングを除けば 3 ヶ月ぶりくらいである。
 腱鞘炎も省みず、異常な速度で仕事を片付けた甲斐があった。
 心の中でガッツポーズ。
 そのときカミさんに「嬉しそう」と言われたことが、一番嬉しかった。


 15時を回って、そろそろ準備しようかなということになる。
 今日は鍋パーティなので、みんな特別着飾ってくることもないだろう。
 はねたら染みになるし。

 ナプキン、染み抜き洗剤、ランドリールームを確認。
 むやみやたらに客を迎える用意が整っているのが、我が家の自慢にならない自慢である。
 土鍋と七輪を 5 セット準備。お好みに合わせて色々できるように。
 ガスコンロだと鍋が高くなってしまうので、ウチでは七輪を愛用。
 ある漫画家さんの受け売りなんだけど(笑)
 ここで炭が足りないことに気付く。急いで買出しに。外は寒かった。

 カミさんの同業者というと、僕にとっては仕事の相手にあたる。
 何度もお仕事させてもらった方もいれば、初対面の方もいる。
 中には偉い人もいて、だけどかれこれ十数年のお付き合いだったりする。
 緊張するんだかしないんだか。
 いっそエプロン姿で笑わせてみようと画策。
 初対面がソレなら、次にご一緒するとき、まずネタにされるだろうとかショーモナイコトを考える。
 気安さと緊張感の共存する仕事ほど楽しいものだ。
 三角巾はないかと聞いたら、ヤリスギだと笑われたので没。

 さて、16時ちょっと回った頃、最初のお客さんが到着。
 それ以降、順順にお客さんが到着。
 はじめましての挨拶をしたり、無沙汰の挨拶をしたり、つい先日あったばっかりなのに「久しぶり」と言ったりしながら歓談。
 早くも酒飲もうとした人に、大ベテランがストップかけてくれてセーフ。
 まあ冬だし、17時ったら夕方ではあるけど酒は早すぎだろうアンタ(笑)
 それにしても、ほんと年齢層バラバラだな、この業界。

 と、みんなで材料の買出しに行くと、携帯電話が鳴る。
 着信音は『白虎野の娘』という、いわゆる(?)平沢ソングで『パプリカ』の ED 曲である。確か無料で DL できたと思うので、平沢ファンは忘れるなかれ。期間限定でもう終わってるかも? いやいやきっと大丈夫。
 とにかく、この着信音は仕事用のものだ。
 ものすごくイヤな予感がする。

 ……結論から言うとその予感は正解で、僕はこのあとすぐにスタジオまで駆けつけなくちゃいけない羽目に遭ったのだが、その場に居合わせた傑物のおかげで、どうにかこうにか事無きを得た。
 生憎と、鍋パーティは丸々欠席になってしまった。
 で、まあこれから帰るんですが。アー。