[trpg] ちょっとだけFローズの話

Twitter の方でなんかちょっと『Fローズ』*1[Fローズ] = 『ファー・ローズ・トゥ・ロード』の通称。略号は “FRtoL” の感情ルールについて質問されたんで、簡単に回答……のつもりが4000字オーバー。

なにをしておるのだ…orz

かれこれ10年以上、ルールブックほとんど読み返さないで遊んでるので、もしかすると用語とかルールとか間違ってる部分があるかもしれませんが、その辺はご愛嬌ということで。ゴメンナサイ。内輪ではこんなイメージで遊んでます、という話。

感情ルールって何?

感情ルールってのは、ざっくり言うと「キャラクターの心の状態」を表すルールです。ルール的には10種の感情を、それぞれ「感情値」というヒットポイントのようなリソースとして扱います。この感情値が増えたらその感情が強くなった状態、減ったらその感情が薄れた状態、と考えます。
このルールによって、キャラクターの感情はプレイヤーの手から離れたところに置かれることになります。感情の増減は様々な場面で生じるよう、ルールに規定されており、これによってキャラクターは必ずしもプレイヤーの思い通りにならず、場合によってはじゃじゃ馬のような存在となってしまうでしょう。そのため現在の、予定調和的に物語を描いていく手法とは、必ずしも相性が良いとはいえません。そうするためにはキャラクターの感情の変化を、うまく狙い通りの物語に沿うように解釈しながらロール(演技)する必要があります。

もうひとつの冒険 ~ 経験表というフェイク

『Fローズ』で描かれる物語は、必ずしも血湧き肉躍る冒険活劇とは限りません。もちろんそうした「標準的な」剣と魔法のファンタジーが楽しめるようなルールも整備されていますが、それだけのゲームではありません。あくまで個人的な感想ではありますが、むしろそうした遊び方をするのは勿体ないと思っています。

このゲーム、キャラクターの成長に関するルールが一般的なレベル制のゲームシステムとは異なります。剣と魔法のファンタジー、冒険活劇に必要とされるようなデータ――能力値や技能――の成長は、「経験表」というチャートを振ることで行われます。ただし経験表を振って、思い通りの結果になることは稀でしょう。それどころか「全財産を失った」等、全くのマイナスでしか無いこともあります。

この経験表はシナリオとシナリオの間、セッションで描かれなかった間の、キャラクターたちが思い思いに過ごした時間を描いています。経験表の中にはそれこそ血湧き肉躍る冒険活劇を思わせるような文言もあって、そのため「『Fローズ』は経験表を振るのが一番面白い」という人もいたりします。それはそれで勿体ない話ですが……

ところで「経験表」が確実な成長を望めないのであれば、じゃあどこにキャラクターの成長があるのか? それも感情ルールの中にあります。『Fローズ』において、キャラクターの成長とは「心の成長」という面が非常に大きい。これは他のゲームシステムではなかなかお目にかかれない要素です。

心の成長の物語 ~ 努めて冷静なれ

実際どういった形で心の成長を描いているのか? ということになると、これまたちょっとルールの説明が必要になります。

感情ルールでは感情をリソースとして管理しています。で、このリソースには上限値があります。通常、キャラクターの作成時にはすべての感情値の上限は20です。そしてこれをオーバーすると、そのキャラクターは一時的にその感情が「激情」の状態となります。

「激情」状態のキャラクターは、その感情の暴走に振り回されてしまい、制御不能に陥ります。たとえば【怒り】狂って暴れまわったり、【哀しさ】のあまり泣きじゃくったり。そしてある程度の時間が経過すると、この「激情」の状態は収まります。「激情」の状態が収まると、キャラクターの感情値は先ほどの「激情した際の感情値」を上限値とし、その半分を現在値としてリセットされます。

この感情値は、様々な場面で増減します。何度も同じような状況に遭遇する中でキャラクターは「激情」に陥り、そうして失敗をしながらひとつひとつの結果を踏まえ、成長していくことになります。「激情」によって晒した醜態、あるいはそれによって状況に正しく対処することが出来ず、悲劇や惨劇――あるいはその危機――に出くわす中で、感情に振り回されないこと、それに努めることが、目的を遂げることへの近道であると。

そして一人が「激情」に陥っても多くの場合、仲間たちがその穴を埋めてくれるでしょう。同じ時、同じ場所で同じ状況に陥っても、キャラクター個々人が感じる感情は同じとは限りません。それはランダマイザによって決定されます。ですから仲間たちが互いに「激情」に対するセーフティとして機能し、互いにみっともない姿*2ゲームとしてはジョークにもシリアスにも転がせる面白い場面でもあります。も見せ合いながら、協力しあってその旅の共連れとなっていきます。

感情共有 ~ 時を経て伴侶は同体となる

感情ルールにはあと二つの大きなルールがあります。その一つが「感情共有」です。

感情共有とはその名の通り、複数のキャラクター間で感情値を共有します。感情共有は10種の感情値それぞれ別個に行います。たとえば【怒り】は共有しても【慈しみ】は共有しない、といった風に。そして共有した感情については、その増減をキャラクター間で均等に分配します。これによって「離れていても心が伝わってくる」という、実にメルヒェンな表現が可能になっています。

これ、たとえ共有するグループが二人であっても、増減値が二等分、つまり半分になるわけですから、実質的には上限値が倍になってるのと同じ事です。ということで誰かと感情を共有することは、それだけ心に余裕を持つことにもつながります。パートナーが出来ることで、心に余裕ができるのです。これもまたひとつの成長と言えるかもしれません。(現実にも恋人ができると急に寛容になる人とかいますが、ああいう表現につながっています(笑))

ただし共有するグループの一人でも「激情」に陥れば、感情を共有する残りの面々もただでは済みません。そうしたある種の運命共同体としての性質を持つことになりますから、誰彼かまわず感情共有すればいいというものでもありません。まあ普通は恋人とか相棒とか、そういうディープな関係の相手に限られます。

同じ場所にいれば、共に笑い、共に泣き、怒り、喜ぶようになり、二人は一心同体のようになっていくわけです。僕はこのルールがたまらなく好きです♪

魔法のリソース ~ 心のあり方を世界に映す

もう一つの特殊なルールが、魔法に関するルールです。『Fローズ』の魔法は――キャラクターが魔法使いとしての修行を積んでいない限り――原則として、夢見によって得た霊縁カードと、必要な感情値を消費することで発動されます。(そうして一度使った魔法を覚えることはできます)

発動できる魔法は霊縁カードによっても異なりますし、その場のパワーソース(魔力の源・神の力)にも左右されるため、思い通りの魔法が使えるとは限りません。手に入れた霊縁カードは最初、伏せた状態でプレイヤーが見ることはできません。魔法の発動を試してみた時、初めてオープンに出来ます。そして場のパワーソースに沿った魔法が勝手に発動されます。この時、必要な感情値も勝手に消費されてしまいます(しかも消費量は魔法ごとに決められたダイスロールで決定されます)。もし魔法が発動できなかった場合、その霊縁カードはオープンしたまま保持できます。そして次の機会に再び発動にチャレンジすることができます。しかし場のパワーソースを知る手段は限られているため、必ずしも発動できるとは限りません。

このルール、魔法はとても不便なものとしてありますが、それが『Fローズ』の世界であるユルセルームなのだから仕方がない。

『Fローズ』の魔法は、様々なものがあります。オヤクソクの「火の玉を飛ばす魔法」や「傷を癒す魔法」もありますが、「洗濯物が綺麗になる魔法」とか「水面に記憶を映し出す魔法」なんてのもあったります。ユルセルームの歴史において、かつての――いかにも剣と魔法のファンタジー世界にありがちな――魔法の系統を持っていた「四王国の時代」*3『旧ローズ』の時代。から、あらゆる記録が散逸する「薄暗がりの時代」*4『Bローズ』の時代。を経た『Fローズ』の時代の魔法とは、そういうものなのです。

これは僕個人の解釈なんですが、この魔法の発動プロセスって「人の心が世界に投影されている」ように思えるのですね。ユルセルームは心の写し鏡である、とでも言うのかな?

【怒り】を源に火球を飛ばしたり、【慈しみ】を源に傷を癒したりする。なんにせよ魔法は、まず人智の及ばないところを出発点にして、それを体験することで経験則として習得されます。そして習得された魔法を繰り返し使うことでコツを掴み、習熟する。習熟した魔法に限り、感情の消費量は常に一定になります。これもまた成長です。

こうしたハイファンタジー寄りの表現は、様々なファンタジーを扱う (T)RPG という遊びの中でも珍しいんじゃないでしょうか。*5他にパッと思いつくのは『深淵』くらいかなァ。

冒険の中でままならない感情に振り回されながら己を強くし、ままならない魔法に振り回されながら心の使い方を学んでいく。こうした感情ルールは、これまでの(そして現在に至るまでの)剣と魔法のファンタジーの中でも、群を抜いて「心のありよう」と人間的な成長を描くことに特化した、『Fローズ』の中核となるルールだと思うんですね。

その表現は、多くの時代劇や少年漫画などに見られる外的な「活劇」とは異なっていて、熟練の (T)RPG ユーザでも時に手こずらされることもあるようですが、ぶん回すと予想もしなかったような物語が織り上げられていくようになります。それがきっちり整えられた物語となることは極めて稀ですが、いかにも生きた人間らしい、貴方だけの物語となることは請け合いです。

余談:内輪での評価

今回は触れませんでしたが、感情ルールには他にも感情を一時的に失ってしまう「無情」や、人間性を捨てることで肉体を強化する「感情喪失」という大博打、また「器物精霊:アーティクル」の扱いに関しても極めて重要な意味を持っていて、そこにも『Fローズ』ならではの描写・表現が存在します。

内輪では群を抜いて女性陣受けがいいタイトルでして、今でもプレイグループの定例会で『Fローズ』の卓立てると、プレイヤー全員女性みたいな展開はザラです。あまりに固まりすぎて、もしかしたら「『Fローズ』=女性向け」みたいな認識が広がっちゃってる可能性が無きにしもあらず(苦笑)

反面、ガチのデータッキー/和マンチゲーマーには不人気です。スキルビルドからは対局の位置にあるようなゲームですからね(笑)

References

References
1 [Fローズ] = 『ファー・ローズ・トゥ・ロード』の通称。略号は “FRtoL”
2 ゲームとしてはジョークにもシリアスにも転がせる面白い場面でもあります。
3 『旧ローズ』の時代。
4 『Bローズ』の時代。
5 他にパッと思いつくのは『深淵』くらいかなァ。

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