[trpg] CoC「short trip」

何の因果か妖怪絵巻

「うちの子供がさ……」

 これが「るいとも」というやつか!?
 以前、「子供の好みが分からん」とボヤいてた仕事相手のオッチャン(40代)から、唐突に切りだされたのがCoCの話題。
 どーもこのオッチャンの子、ちょっとオタク道(笑)に片足突っ込んじゃってるらしいのですよね。

「にゃるこ? ゆっくり? って、何のことか分かる? リプレイ動画とか……」

 そして白羽の矢が立つのが、どういうわけだか僕んトコ、という話。
 もっと詳しい人は、貴方の社内にナンボでもいると思うんだけどね。
 そういう商品取り扱ってる部署あるでしょーに。

 まあ「娘を持つ父親」としては自分のが先輩になっちゃってるし、何かと相談に乗ってきた手前、尋ねられたら答えないわけにもいかないんだけどね。

「クトゥルーはご存知でしたよね?」
「ああ、佐野史郎が好きなやつだろ? 昔読んだよ。よく覚えてないけど」

 この人もなんかちょっとビミョーなチャンネルをお持ちの方なんですが(笑)

「会話でああいう物語を体験する、テーブルトークって遊びがありまして。RPGとかロープレとかはご存知?」
「FFとかUOとか?」

 出される例えがいちいち「ちょっと前」レベルなのが面白い。

 ……と、延々やり取りを書いててもしょーがないので端折りますが、とにかく――

「じゃあまあここでちょっと軽くやってみましょうか。体験してもらったほうが早い」
「できるのか?」
「本格的なのは無理ですけどね。やりますか?」
「よし、やるか」
「やりますか」
「やろう」

――そういうことに、なったわけです。

Call of Cthulhu #0 “short trip”

セットアップ

「何で遊ぶのがいいかな?」

 とちょっと考えて、結局 CoC を選択。
 持ってたノートPCに、自炊した5版のルールブックが丸々入ってたんで、まあこれでいいかと。

 ……とはいえCoCのキャラ作成を始めると、時間がかかってしまうことになります。
 技能とかイチイチ説明するのも大変だし、何が必要かも分かんないもんね。
 なので、ここはPCのデータを作らないで遊ぶ、フリーハンドを選択。

 まずは雰囲気と、分かりやすい楽しさのポイントを体験してもらうことにします。
 今回は入門者対応の一例ということで、ちょっとだけ手の内を明かす方向で。
 まあ相手の適正に合わせて調整する必要があるんで、そのままやったら上手くいく、といった類のモノではありませんが。

始まりは、たとえ話
KP
「たとえば○○さんが、小さい出版社の雑誌編集者の役だとするじゃないですか」
オッチャン
「それはたとえ話なんだよな?」

 「舞台は現代日本」という注釈も特に入れず、パッとたとえ話を差し込みます。
 最初はあまりプレイヤーから乖離した特性は与えません。
 なるべく本人と大差ないところから始めます。
 ただし「役」という言葉を使って、一応「別人ですよ」というアナウンスはしておきました。

 TRPGが扱う「世界」は、どうしたって現代人としての認識からスタートするパラレルワールドなので、「たとえば貴方が○○だとします」とするだけでも、それが受け入れられた時点でゲーム世界へのエントリーは完了。

KP
「人手が足りないからと、子会社の週刊誌の編集部に、ヘルプに行くよう言われます」
オッチャン
「ってことは雑用か。張り込みでもするんかね?」

 一旦エントリーした後も、プレイヤーはまだプレイヤーとキャラクターの思考を分けたりはしません。
 そこでちょっと不慣れな(しかし想像できる程度の範囲にある)環境に放り込んで、思考の条件を絞り込んでいきます。
 状況判断のためには情報が必要になりますので、こちらからの情報開示もちゃんと聞いてくれやすくなります。
 この時に注意することは、「足りない/欲しい情報は積極的に質問する」ように促すこと、またその積極性を殺さないようにすることです。

 この辺はマスタリングのスタイルによっても変わると思います。
 僕のマスタリングスタイルの場合、プレイヤーのイメージに極力寄り添うようにしてゲームの状況を確定していくので、プレイヤーが膨らませるイメージを潰してしまわないよう、自分でどんどん想像を膨らませていくように注意して進めます。

 今回の場合、この段階で――

  • 「雑誌編集者」+「週刊誌のヘルプに出される」→「雑用?」

――というイメージが出来たようなので、ここでキャラクターの属性を1つ2つ決めていきます。

KP
「ところで○○さんの配役、何歳ぐらいですかね? 雑用振られるって」
オッチャン
「若いんだろうなあ」
KP
「どれくらいにします?」
オッチャン
「あ、俺が決めていいの?」

 キャラクターの作成ルールも特に説明してませんから、この辺のことも分かるはずもなく。

KP
「指示された小さな雑居ビルが視野に入ると、貴方は言い知れない不安を感じる。じゃあここでちょっと、TRPGをゲームにするためのものを決めましょう。ってもまあ、能力値なんですけどね」
オッチャン
「どうやって決める?」
KP
「サイコロを使います。まあでも今は持ってないんで、代わりにこいつを使います」

 ここで使ったのはAndroidのダイスツール DiceBox です。
 こうして少しずつ「役=PC」の設定を決めながら話を進めていきます。
 決めた能力値はPOWのみ。これはSANを決める必要があったためです。

 この後、しばらくはSANだけを使って遊びました。

データを作りながら遊ぶ理由

 普通に考えればまあ、こういう方法は手間なんですよね。
 最初にキャラクター作って、それから始めた方がいいと思います。

 ただ、キャラクターを作るだけでもう疲れちゃうケースが、結構あったんです。経験上。
 それは何故かというと、ゲームを想像することが困難だから。

  • 「何が必要なのか」
  • 「これ(数値)はどういう意味なのか?」

 例えば「STRは筋力を表します」と言われても、上手くイメージができないことって少なくないんですね。まあそれでも筋力であれば、外見に関するイメージになるので、数値が極端ならイメージもしやすくなるんですが、これが敏捷(DEX)だの知性(INT)だの言われると、結構難しい。
 特に知性なんかはね、プレイヤーと乖離させることが非常に難しいパラメーターです。
 そして見栄を張りたいものでもある。

 そうしたアレコレを考えることに疲れてしまったり、興味の熱が覚めてしまったり、そういうことがあるわけです。
 そうしてただ苦痛だけを生んでしまったそのとき、キャラクターに対する愛着というのはまあ、なかなか生まれんのですね。
 だからこそ、という苦肉の策だったりします。

 ……もちろんそれだけでもないんですが。
 というのが次の理由となります。

キャラクターデータを作成
KP
「それじゃあ、当面の目的が決まったところで残りのキャラクターデータを作って行きましょう。ちょっと待っててください。ちょいそこのコンビニまで行ってきます」
オッチャン
「ん」

 ということで、オッチャンとソロセッションやってたファミレスから、近場のセブンイレブンまで移動。
 予め送っておいたキャラシーとルールサマリーを、ネットプリントで印刷して帰ってきました。

 で、理由。

KP
「技能は、潜入調査のために必要そうなものを選んで下さい」

 こういうこと。
 つまりですね、「イメージが出来ない」「必要な物がわからない」というのであれば、まず先にその目的とイメージを作り上げてしまえばイイ。

 より新しい、最近のゲームシステムなら目的は最初から決まっていますし、その手段の成否を左右するブレも、キャラクターデータの中からは排除する傾向があります――「扉の鍵が開かないからゲームオーバー」という、間抜け
な顛末を避けるために。
 それにまあ、そういう(事故防止を念頭に置いた)タイトルは大体「クイックスタート」として、作成済みのキャラクターデータがあるわけで。

 しかしBRPやGURPSなどの汎用系ゲームシステムの場合、「汎用≒なんでも出来る」代わりに、「何を目的にするのか」が分からないという欠点があるわけで。
 その辺に対する一つの解法として、こういうアプローチもあるよ、という話です。

 ちなみに『Aの魔法陣v3』の頃、キャラクターを作らずにゲームを始める方法で運用した経験のあるSDなら、この辺の手管については感覚的にわかってると思います(笑)

以下略(笑)

 実はこの、ちょっと席を外してコンビニに行ってた間にこのオッチャン、自分のかわいがってる部下を1人呼びつけていて、キャラの作成中に現れた新たな未経験者を相手に説明しなおしたり、怪しいカルト教団に潜入してSAN値ゴリゴリ削られたり、週刊誌のデスクが真の狂気に至って緊急入院させられたり、代わりに編集長を押し付けられたり、日常を侵食する狂気に中てられてゲラゲラ笑い出したり、最後は編集部が焼き討ちをくらって一件落着になったりしましたが……イチイチ書くのもめんどくさいのでこの辺で終わりとします(笑)