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シナリオとストーリー
サイコロ・フィクション
- 玄兎
- 「で、えーと、じゃあ次はシステムとメカニズムですかね」
- ケイ
- 「そこ、やるか?」
- 玄兎
- 「いやどうしようかと思って。やりたい気もするんだけど、言葉として多層化しちゃってて、なんかよくわからんことになってんですよね」
- ケイ
- 「迷ってるならやめとけ。他にやっときたい話は?」
- 玄兎
- 「ストーリーとシナリオは別とか、意味を後付けすることでストーリーを記述する遊び方とか、まあこれは僕があれこれ言うより、サイコロ・フィクション見てください、で済むことなんですが」
- ケイ
- 「サイコロ・フィクション?」
- 玄兎
- 「冒険企画局で最近出してる新しい汎用システム、というかコアフレームですかね、データの共有率はSRS以下だし。まあともかくそういうシリーズがありまして。今んとこ『ピーカーブー』と『シノビガミ』ってのが出てます。前者が小学生っていう共通経験を利用したターゲットレンジの広いゲームで、後者は忍者アクションっていうレンジの狭いゲームになってます。まあ山風先生とか横光先生あたりの忍法なんちゃらが分かれば問題なさそうなんで、言うほど狭くも無いんですが。ブロガーの間ではコンテスト性の強い『シノビガミ』が人気のようです」
- ケイ
- 「お前はどっちが好き?」
- 玄兎
- 「『シノビガミ』も面白いんですが、みんなでわいわいやるのが好きなんで、『ピーカーブー』の方が好きです。うちの環境にも有ってるし」
- ケイ
- 「どういう違いがある?」
- 玄兎
- 「あくまで僕のイメージなんですが、ダイスの意味が違うんですよね。『ピーカーブー』ではダイスの結果には大した意味が無いというか、ゲームの目的が必ずしも勝ち負けではないんで、緩いんですよ。サイコロ・フィクションのガイドのひとつに、色んなチャートを使ってイベントを生成するってのがあるんですが、生成されるイベントが何であれ、ダイスを振ること自体を楽しむようなデザインになってる。これが『シノビガミ』になると、コンゲームというかPC同士もライバル関係だったり、対立軸が出来るんですね、PC間に。だからダイスロールで生成されるイベント自体が勝ち負けに直結する分、緊張感がある。『ピーカーブー』のダイスは玩具だとすれば、『シノビガミ』のダイスは武器って感じで」
- ケイ
- 「なるほど。鬼ごっことか白兎亭とかのモデルか」
- 玄兎
- 「そうですね。まあサイコロ・フィクションは、あれほどフリーハンドではないというか、目的がはっきりしてる分、チャートを解釈する必要が無くてスムーズに遊べます。とにかくダイスを振ることにキーを打ち込んでデザインされてて、めちゃくちゃ洗練されてますよ」
- ケイ
- 「ほう」
- 玄兎
- 「ただまあ『ピーカーブー』は、ある種ノスタルジックな要素をバカ笑いで塗りたくるようなところがあって、オッサンが遊ぶのとリアル小学生、リアル中学生あたりが遊ぶのとでは別物になります。『シノビガミ』は誰がやってもあんまり変わらない。この辺は『ピーカーブー』のキャラがフリーハンドなのに対して、『シノビガミ』がPCごとのターゲットがシステム側から決定される、ていうユニークな構造になってるのもミソですね」
- ケイ
- 「遊んだ感想は?」
- 玄兎
- 「面白いです。超おすすめ。PCとプレイヤーを分離させる遊び方として、これまでずっと課題になってた知力問題のルール化がスムーズになされていて、ひとつの結論になってるんじゃないかと。中途半端に自由度を謳ってグダグダなダブルスタンダードになるよりよっぽどスマートなやり方だと思います。まあそれはそれとして、従来のダブルスタンダードを放任するような遊び方も、普通に楽しむんですが(笑)」
- ケイ
- 「そこは譲らねえんだな(笑)」
- 玄兎
- 「譲りませんよ。譲るわけがない(笑)」
???
- 玄兎
- 「だいたいTRPGはプレイングそのものがルールに組み込まれてることを忘れてる人が多すぎるんだ。会話するとかサイコロ転がすとか、そういうプリミティブなところから既にルールの枠内だってことを忘れてるから、明文化されたルールとデータばっかり気にしてる」
- ケイ
- 「数字だけならデジタルの方がよっぽど上手く扱えるしな。TRPGライクなデジタルゲームが出てこないのも、開発費の問題で片付けられる日が来ないとも限らねえし」
- 玄兎
- 「ああ、そう。それそれ。アナログゲームの優位性について、ポリ・ミリ関連の教育やってる人と話してたとき、ちょっとTRPGについても話題になったんですが。デジタルゲームが開発費の問題で作らないような、ニッチなところで遊んでるだけだと、いつまでたっても市場規模が大きくならない、て言われましたよ。あと政治的な対人活動の要件をフィクションに委ねることで、価値を著しく減じてるって」
- ケイ
- 「その辺はあれだろ、ゲームの扱いが違うからだろうよ。コンシューマでも似たようなこと言うやついるしな」
- 玄兎
- 「研究者からすると、歯がゆいところもあるのかも知れません。アナログゲームの運動性と編集性の高さについては、認めてくれる人もいるんですけど」
シナリオとストーリー
- ケイ
- 「まあそりゃいいや。で、シナリオとストーリーの違いってのは?」
- 玄兎
- 「これ古いアナログゲームの感覚で行くと、システムがベーシックルール、シナリオはローカルルール、ストーリーは実際のゲーム展開、て区分だったと思うんですが」
- ケイ
- 「ローカルルールってのは、ちょっと分かりにくくねえか?」
- 玄兎
- 「そうですか? うーん、まあでもそのシナリオで遊ぶときは、こういうルールで、ていうことだから、言葉としてはローカルルールとか、ハウスルールとか、その辺かなあと。ローカライズしてるわけだし」
- ケイ
- 「まあ、そうか。ルールってのが、ひっかかるんだろうな」
- 玄兎
- 「じゃあガイドラインとか?」
- ケイ
- 「なんかしっくり来ねえな。いや悪い、つまらんことだった」
- 玄兎
- 「いや、つまんなくないですよ。話が通じるかどうかの大事なとこだし。まあでも、後はルールを設定と読み替えて通じるなら初期設定ですか」
- ケイ
- 「それが一番しっくりくるんじゃね?」
- 玄兎
- 「そうですか? じゃあ初期設定ってことで。先進めます。で、古いウォーシミュレーションなんかだと、例えば『戦闘指揮官』シリーズとか、てかここだと『ASL』の方が通りがいいのかな?」
- ケイ
- 「あー、会社じゃやってねえよ」
- 玄兎
- 「それは残念。まあ『ASL』については各自で調べてもらうとして。たぶんWiki叩けば出てきます。とにかくウォーゲームではそんな感じだったんですが、これがTRPGになるとマップをズームアップすることになるんで、やっぱりシナリオごとにマップを作ることになるんですが、ぶっちゃけTRPGのマップって全部作ったら死にます。ウォーゲームからすればミクロスケールの対象物が価値を持つもんだから、空間内の情報量が膨大になる。しかも運動量は戦術級と同レベルかそれ以上になりますんで、ぶっちゃけマップを全て書くことは現実的じゃない。だからシナリオデザインするときは、ゲーム展開を先読みする形でマッピングします。必要になりそうな部分だけ抽出して書いておいて、それ以外で必要になったらゲーム中に適宜追加する、て方法ですね。一般的にはこの、適宜追加する作業がアドリブとされます。そのときはシステムを土台に、シナリオとのマッチングテストを行いながら組み上げます。逆説的に、これを許容することで、TRPGはゲームの幅の広さというか、自由度の拡張とミクロスケールの取り扱いを可能にしてるわけです」
- ケイ
- 「デジタルゲームの場合は、書けない部分は対処できねえから、最初から書けるだけ書いといて、書いてねえ場所には行けねえって形だわな」
- 玄兎
- 「TRPGと近いスケールでオブジェクト管理が可能になったのって、最近ですからね。でもTRPGでも、大局的にはそうなんです。運動可能な領域は決まってる。特にダンジョン物なんかは、最初から閉鎖空間にすることで時空間のコントローラを完全にGMの手元に置いてるわけです。そうしないと処理演算しなきゃいけない事象が膨大になるんで。まあそれが楽しいんですけど(笑)」
- ケイ
- 「だよなあ」
- 玄兎
- 「そうは言っても限界もあるし、その辺は完全にゲームとしてGMがゲームボードを管理下に置くか、分からない部分については後付けで構築しながら進めるかってので、マスタリングのスタイルの差になるんですが。あと、いくらダンジョンが閉鎖空間つっても、ミスリルマトックで壁打っ壊して迷宮増築とかショートカットとかやらかす手合いもいて、設定次第でその辺も許容しなきゃならんのがTRPGです(笑)」
- ケイ
- 「迷宮の壁は全てミスリル製(笑)。これで解決だな(笑)」
- 玄兎
- 「それ、絶対どうにかしてミスリル採取して一山当てようとするやつ出ますよ(笑)」
- ケイ
- 「じゃあオリハルコン(笑)」
- 玄兎
- 「なんて嫌な迷宮なんだ。そんな金あったら他に使え(笑)」
- ケイ
- 「天然の鉱脈とかでだな」
- 玄兎
- 「ああ、鉱脈はまずい、採掘される(笑)」
- ケイ
- 「欲深い連中には天罰を(笑)」
- 玄兎
- 「そうするとGM傲慢って言われるんですよ(笑)」
- ケイ
- 「だめだ、こいつ早く何とかしないと!(笑)」
- 玄兎
- 「(笑)オチがついたところで」
- ケイ
- 「オチ?(笑)」
- 玄兎
- 「そう言う事にしときましょう(笑)。ほんとに際限ないから、この手のネタ」
- ケイ
- 「ま、そうだな(笑)」
- 玄兎
- 「お腹痛い。笑いすぎた」
- ケイ
- 「分かるけどアホか病人(笑)」
- 玄兎
- 「何も考えない笑いこそ健康の源です。でも進めましょう」
- ケイ
- 「それがいい」
- 玄兎
- 「でもシナリオとストーリーはこんなとこですよ。シナリオに未来の情報が書かれていたとしても、それはストーリー予測とかストーリー予想とかいうやつであって、決定事項としてのストーリーではない、ていう。ちょっと脱線しますが、映像作品とか舞台芸術とかのシナリオの話になると、これもやっぱり完成品として書くわけではなくて、演じられることで完成するような、素材とか小道具って感じで扱ってます。ベースになる一般常識と前提知識、ローカルルールとしてのシナリオとキャラクター、キャラクターの運動予測としての台本、て感じですかね」
- ケイ
- 「じゃあ台本は予測でしかないってことか」
- 玄兎
- 「そりゃそうです。実際に稽古してみてから直すことなんていくらでもありますし。演劇ではそういう手直しがあるし、キャスト毎に自分でト書きを増やしたりもするわけで、大なり小なりローカライズは必須です。で、最終的には稽古の中で出来上がったストーリーを表現、あるいは再現ですね、することを目的としてる。なんて言い方もできるかな、とか。それに対してTRPGって基本的に一発勝負だし、目的は再現ではなく作り上げることそのものですから、プロセス的には舞台稽古みたいなもんだと考えられなくもない。と、思います。あくまで個人的に」
- ケイ
- 「チキン(笑)」
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