ペテン師がペテンを実行した話。
いや、ものすげー困った事態になったモンですからね(笑)
ページの内容
実際にブチ当たった
「TRPG とは何ぞや?」
……という話を、色んなところで「説明するのは難しい」って話を見るわけですが、そういう人たちも意外と「実際に説明を求められる」状況になったことは少ないかもしれません。
ですが今回、
求められました。
しかも子供の学校の先生に…orz
でも敬老の日に電話してくるのはどーかと思うんだ。
「テーブルトークっていうのは、どんな遊びですか」
「テーブルトークっていうのは、どんな遊びですか?」
長男め、話したな……
いや話されて困るような遊びはしとらんし、別に口封じも口裏合わせもしとらんかったし、そういう話がどっかで出るだろうなァ、とは思ってたんですが。*1[子供と遊ぶときの注意] = 他人に話されて困るような遊び方はしてないが、子供と遊ぶときに注意することが一つだけある。それは「殺す」「死ぬ」という言葉を使わない、ということ。過激な言葉はアッサリ子供に伝染するので、そうした言葉は徹底的に使用しない。ゲーム中は「倒す/倒される」とか「やる/やられる」といった、もうちょっと大人しい言葉を選んで使用し、また子供らが「殺した」「死んだ」とか言ったら訂正するなどの注意は必要。子供たちが車座に座って「よし、○○を殺したぞ」なんて言ってたら親でなくても心配になるってモンだし。
しかし唐突に電凸されても困ります。
しょーがないので、ファミレスで説明することに。
何がキッカケでそんな話に
もし他の子供たちの親から何かしらクレームがついて、という話だとすると、先生もそれなりの対応を求めてくるでしょうし。何故そういう話になったのか? ということがまず知りたかった。
「子供たちが放課後に残って遊んでたんですよ」
アー。
部活休みの日にか。
あのアホウ(笑)
まあでも別にクレーム云々ではなさそうなんで、一安心。
「サイコロとか振ってたんで、ギャンブルかとも思ったんですが」
あー、なるほどなるほど。
確かに教室でギャンブルやってるかと思ったら心臓に悪い。
ちゃんと説明しとこう。
対話、ゲーム、想像力
TRPG っていうのは、突き詰めれば〈対話〉です。
そこに想像力を“つなぎ”に、ゲームを混ぜ込んだものですね。
まずは〈対話(Dialog)〉の構造についての解説。
〈対話〉
〈対話〉というのは、異なる価値観を持った人たちが、言葉や道具を使ってやり取りをして、お互いの価値観に対して理解を深めるアプローチを指します。
〈対話〉にも様々なアプローチがありますが、なるべく多くの人が理解しやすいように、原因と結果が分かりやすくつながっていることが求められます。
原因と結果を分かりやすくつなげる〈対話〉は、まず個々人が〈疑問〉、〈意見〉、〈理由〉の三つのファクターを備えたときに始まります。
対話の始まりは、個人がある事象に対して「何故だろう?」と〈疑問〉を持つことです。
で、人間は〈疑問〉をそのままにしておくことが気持ち悪いので、〈疑問〉に対して自分の価値観に則して「○○だろうな」と、とりあえずの〈意見〉を持ちます。
そして〈意見〉を他人に理解してもらいたいと思ったとき、それを他人に説明するため、自問自答によって「○○だから」と〈理由〉を導き出します。
それを使って異なる価値観を持つ人とやり取りをするとき、〈提議〉、〈議論〉、〈結論〉の三つのプロセスで進められます。
まず誰かが〈疑問〉に基づいて「何でだと思う?」と〈提議〉を行います。
それに対して他の価値観を持つ人たちが、〈疑問〉に対してそれぞれ〈意見〉を出していきます。
各人は自分の〈意見〉についての〈理由〉を説明し、また他者の〈意見〉や〈理由〉に対して異なる〈意見〉を提示しながら、徐々に〈提議〉に関する価値観の違いを認識し、理解を深めていきます。
最後に、お互いの価値観から導かれた〈意見〉を理解し、それぞれに〈結論〉を出すことで〈対話〉は終わります。
TRPG は〈対話〉技術を基盤にして、目的達成を目指すゲームです。
特に “T” の部分は、この〈対話〉構造に相当します。
ゲーム
TRPG のもう一つの要素は、ゲームです。
ゲームの定義については、なんだか色々あるわけですが、ここではゲーム論について詳しくは言及しません。ゲームが何であるのか、ということは、TRPG を理解するのに巨大な価値を有することはないと思いますので。
TRPG の中で一番多いゲームは「テーブルゲーム」です。
テーブルゲームってのは、『モノポリー』とか『人生ゲーム』とか『バックギャモン』とか『ウノ』とか『ポーカー』とか、まあ色々ありますが、むちゃくちゃ大雑把に言えば、「テーブルの上で、ゲーム盤とかカードとか、そういう小道具を使って遊ぶゲーム」です。
たとえば『人生ゲーム』で、どっかのマスに止まったとき、「ルーレットで偶数が出たら三マス進む」みたいなのがあるじゃないですか。
TRPG でサイコロ振って何かを決めるのは、アレとまあ、同じようなことをやってるわけです。
そうやってマス目の指示と、サイコロの出目によって、その場その場の結果を左右されながら、少しでも目的に近付こうとする。
それが TRPG の、特に “G” の部分です。
ただ、TRPG には『人生ゲーム』と違って決まったスゴロク盤がありません。
スゴロク盤が無くて、どうやって遊ぶのか?
……というところで、想像力が関係してきます。
想像力
TRPG は、一方で〈対話〉によって目的達成を目指し、もう一方では『人生ゲーム』のマス目のように、サイコロの出目に結果を左右されます。
でも、その『人生ゲーム』のスゴロク盤が、TRPG には無い。
それに〈対話〉で目的達成と言っても、何を目的にするのかも分からないですね。
そのため、TRPG には「ゲームマスター」って役割と、「シナリオ」というものがあります。
ものすごい大雑把に説明すると、シナリオがスゴロク盤です。
で、ゲームマスターが、ゲームマスターでない参加者――プレイヤー」と呼びます――がどのマスに止まったのかを判断して、マスの説明をする役割だと思ってくれると、いくらか伝わるでしょうか。
ただ、スゴロク盤が見えない状態ですから、ルーレット回して何マスか進んだとして、「おっとそのマスは一回休みだ」とか言われても、プレイヤーは確認できない。
もしかしたらゲームマスターが勝手に言ってるダケかもしれないわけです。それでは不公平です。
だからルーレットを回して何マス進んだ、とやるのではなくて、プレイヤーが「どういう行動を取る」と宣言することで、マスを進めます。
たとえば目的が「遠くに引っ越してしまった友人と連絡をとる」だとしたら、プレイヤーは「電車に乗って直接会いに行く」とか「電話をかける」とか「手紙を書く」とかいった具合に、自分がとる行動を宣言します。
で、それに対してゲームマスターは……たとえば「直接会いに行く」と宣言したプレイヤーに対して「友人の引越し先はとても遠いから、君の小遣いだけでは行けないかもしれない。電車賃が足りるか、サイコロを振ってくれ。4以上が出たら、電車賃は足りたことになる」なんて具合に、シナリオにあるマス目の指示を伝えるわけです。
どういう行動をとれば、どんなマス目に止まって、どんな指示があるのか。それを想像して、先読みしながらゲームの目的を達成するために判断して、行動を宣言する。
それが TRPG の、特に “RP” に相当します。
T-RP-G、ってわけです。
「シナリオから逸脱することは無いんですか?」
「想像力で、行動を決めるとなると、シナリオから逸脱することは無いんですか?」
ああ、いいところを突いてきますね。
そのためにゲームシステムがあって、ゲームマスターがいます。
ゲームシステム
TRPG にも色んな種類のゲームシステムがあります。
でもまあどれも、基本的には「起こりやすい状況にどう対処するか」っていう、FAQ――よくある疑問と回答集――とか、トラブルシューティング集みたいなものです。
たとえば「腕相撲で勝つ」ことを目的にしたとき、ゲームマスターとプレイヤーで実際に腕相撲してもいいんですが、それだと大体結果は決まっちゃうじゃないですか。ゲームマスターが大人で、プレイヤーが小学生だったら、プレイヤーに勝ち目なんかないわけで。
だからそういうときは、たとえば「どうやってサイコロを振って決めたらいいですよ」なんて感じのことを、ゲームシステムで示唆してるわけです。
ゲームマスター
そしてゲームマスター。
ゲームシステムで示唆されていない状況や、シナリオに準備していなかった状況については、ゲームマスターがその場で判断します。
むしろそのために、ゲームマスターは必要になるわけです。
まとめてみよう
えーと。
面倒な話が続いちゃったんで、今度はゲームの流れから説明します。
1. ゲームマスターが状況を説明する
ゲームが始まると、最初にゲームマスターが状況を説明します。
一般的には、ここでゲームの目的が示唆されるわけです。
2. プレイヤーが行動宣言をする
ゲームの目的と、現在の状況から、プレイヤーは「次に何をすべきか」を考えて、行動宣言をします。
さっきの例で言えば、ゲームの目的は「友人と連絡をとる」ことで、状況は「友人は遠くに引っ越してしまった = 友人は遠くにいる」です。
3. 行動宣言をゲームマスターが吟味する
プレイヤーの行動宣言の結果を、ゲームマスターが判断します。
たとえば「電車に乗るのはいいとして、住所は知っているのか? 電車賃はあるのか?」とか、「電話をかけるといっても電話番号は知っているのか? 相手が電話に出られる時間帯か?」とか、「手紙を書くにしても住所は知っているのか? 相手の親御さんに止められる可能性は無いか?」とか。
4. ゲームマスターが解決方法を決める
[3] で吟味して、行動宣言とプレイヤーが望む結果との間にある問題点を、どうやって解決するかの方法を、ゲームマスターが決めます。
一番多い解決方法は、サイコロを振って、その出目によって決めることです。他にも遊んでいるゲームのルールや状況によって、いくつかの方法がありますが。
5. プレイヤーが解決方法を実行する
[4] でゲームマスターが決めた解決方法をプレイヤーが実行します。
たとえばサイコロを転がして出目を見る、といったことです。
6. ゲームマスターが結果を決める
[5] の結果によって、プレイヤーの行動宣言が最終的にどうなって、プレイヤーがどんな状況に置かれたのかをゲームマスターが判断し、説明します。
こうして生まれた新しい状況に対して、プレイヤーは再度、行動宣言をする……ということで、目的が達成されるまで、このやりとりが循環することになります。
制御工学みたいですね
「なんだか制御工学みたいですね」
ホワイ?
「制御工学っていうのは……あるシステムが入力と出力のやりとりをするとき、出力結果をコントロールする方法を工学的に捉えるもの……だったかな。友人に研究してるやつがいまして」
なるほど。
それでいくと、ゲームマスターって人間をシステムに見立てて、目的達成の出力が得られるまで入力をコントロールするのが、TRPG の遊び方、と考えてくれるといいと思います。*2[制御工学に則した解釈] = って、これ『Aマホ』ですよね。
そこまで理解してもらえれば、後の説明は簡単です。
ファミコンとか……先生の世代だとスーファミ以降なのかな。
ゲーム機にも RPG ってありますけど、TRPG は、アレの元です。
最初は人間同士で入出力のやりとりをしていたところを、ゲームマスター役をコンピュータにやらせたのが、ゲーム機の RPG ってわけでして。
と、大体こんな感じで
煙に巻いたわけですが(笑)
よく問題視される「キャラクター」については避けました。
リソース管理の話も、キャラクターの説明につながるからナシ。
でも「TRPG の本質は “T-RP-G”」って考え方は本気です。
この “T-RP-G” 話の内容については、もう一度ちゃんと形にする予定です。
とりあえず今回は、時間かけてコネコネしようと思ってた話を、口頭で即興的に求められたことで、それなりにスッキリまとまったんで、いい機会だったと……
でもこんなこと、しないで済むならしたくなかったぞなもし(汗)
今回は先生が「制御工学」なんてのを知ってたから、運良くまとまった部分も大きいんだよなぁ。
もし〈対話〉の部分に突っ込まれてたら、もっとうさんくさい話になったし(笑)
あと、たぶん一番可能性が高い「バトルばっかやってる」ケースだと、もうちょっと説明しないことが増えるんだけど、まあ先生が「分かった」言ったので今回はこれでヨシということで。また聞かれたら答えることにしよう(^^;
学校にサイコロ持っていってたのはスルーなの?(笑)
References
↩1 | [子供と遊ぶときの注意] = 他人に話されて困るような遊び方はしてないが、子供と遊ぶときに注意することが一つだけある。それは「殺す」「死ぬ」という言葉を使わない、ということ。過激な言葉はアッサリ子供に伝染するので、そうした言葉は徹底的に使用しない。ゲーム中は「倒す/倒される」とか「やる/やられる」といった、もうちょっと大人しい言葉を選んで使用し、また子供らが「殺した」「死んだ」とか言ったら訂正するなどの注意は必要。子供たちが車座に座って「よし、○○を殺したぞ」なんて言ってたら親でなくても心配になるってモンだし。 |
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↩2 | [制御工学に則した解釈] = って、これ『Aマホ』ですよね。 |
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