悪循環

 学生時代、社内 SE だった人が言ってたわけですよ。
「社内 SE なんてやるモンじゃない」と。
 当時の僕と言えば情報処理系の専門学校で遊びながら物書きをやっていた変り種だったわけですが、幼少期、それこそ小学校低学年の頃から憧れてたシステムエンジニアというものになってみたかったのですよ。
 で、学校のツテで某銀行のシステムサポートのバイト(社内LANの設置とSunOS系サーバの管理まで)やってたんですが、その社内 SE やってた人が上記のようなことを言っていて。
 脱サラしてン年の今になって、元同期の愚痴を聞かされて思い出しました。

 


社内 SE は、よく社員に呼び出されてしょーもない質問をされます。
 いやまあ「分からなければ聞く」というのは正しい姿勢なんですが、だったらついでに「聞いたら覚える」という正しい姿勢も忘れんな。
 なのに連中ときたら何度言っても覚えない。
 しょーもない質問を何度もしてきて、聞いたそばから忘れていく。
 というか、覚えるつもりが最初から無い。
 社内 SE を呼び出すときも、大概(その人にとっては)トラブルかなんかで、トラブルが起こったのはシステムが悪いからで、ついてはそれを構築した SE が悪いということで、最初っから不機嫌ムード。
 そんなのに日常的に晒されつづけたら、そりゃ機嫌も悪くなるって。

 しかも社内 SE ってのは立派な技術職。
 異動で心機一転ということもなく、同じ部署で同じ仕事をしています。
(いわゆる“お客さま係”は他部署から常に水の入れ替えがあるけど、特殊技能が要求される社内 SE にそれは無理)
 変わらん職場で延々とストレスを溜め続ける一方。
 それでも毎日笑顔で対応できたら「貴方ほんとに大丈夫ですか?」と聞きたくなってしまいます。
(そういうリスクを負うことで、得られるものもあるとは思うんですが、実際に悲鳴を上げている人に向かって「やれ」なんて言えたモンじゃありません。あれは「たまーに思い出したとき、心に余裕があったらやってみるのも良いんじゃない?」くらいの提言)

 まあどんな職場でもそうなんですが、仕事のモチベーションを維持してくれるのは「成果」と「評価」です。
 ところがどうも社内 SE の仕事というのは「できて当たり前」として軽視されがちで、どんだけ頑張ってもろくろく評価してくれる人がいません。
 苦労が分かるのは、同じ現場の同僚くらいです。
 で、セクト主義が発生する。
「どうせ連中には分からない」「あいつらパソコン触れないことを誇ってやがる」
 悪循環もいいところです。

 トラブルシューティングのマニュアルを作ったり、ユーザ自身でトラブルシューティングできるようシステムを改善したとき、そうしたもののレジュメを配布するとなぜか文句を言われる。
「俺の仕事をこれ以上増やすつもりか」とか、
「自分だけ楽しようとしやがって」とか。
 もしかしてアレか?
 お前ら社内 SE のことストレス発散のために呼びつけてるのか?
 ……なんて勘繰りたくもなってしまうエピソードですが、実際サラリーマン時代にそういう陰口を聞いてたので、笑い話にもなりません。笑うしかない話ですが。
 そして万が一にも社内 SE がそう思ってしまったらもうオシマイ。
 関係修復はほぼ不可能だろうなァ、と。

 もっとも、既に不機嫌モードが出来上がっちゃってる社内 SE と初めて関わりを持った人たちからすれば「なんで連中はこんなに態度悪いんだ」ということになって、文句が出るのも仕方ないんだけども。

「せめて偉いさんの中に、分かってくれる人間がいりゃあな」

 と、その元同僚は結んでたんですが。