[Manual] システムデザインの構造

 とっくに誰かが書いてる話だろうさー。
 ……と思いつつ書く(笑)

 一口に「システム」といっても、実際は一個のシステムと言えるほど一枚岩ではなくて、もっと複雑な多層構造になっていると思うわけですよ。

システムの階層分解

  1. コアフレーム : 行為・戦闘・生死などに関するフレーム。
  2. コアイメージ : コアシステムに近接する運用上の基礎データ。世界観に属する。主に装備・技能・特殊能力など。
  3. ワールドデータ : 世界設定を表現するためのデータ。
  4. ワールドルール : ワールドデータを運用するためのルール。各種データの扱いに関する概念。
  5. メタゲームリソース : 参加者が直接管理するリソース。
  6. メタゲームフレーム : RPG をフレームワークにしたもの。シーン管理、フェイズ制など。
1 : コアフレーム

 [1 : コアフレーム] は、一般的にはコアルールなんて言われるやつ。でも現実にはルールというには複雑に絡み合っているので、これはれっきとしたフレームだろうと思います。
 ここには「判定のときに振るサイコロの数」や「サイコロの出目は高いほうが良いか低いほうが良いか、それともピッタリ狙った目でなければダメか」といったことから「行為判定の達成値は能力値+技能レベル+サイコロの出目で求める」とか「能力値はサイコロの出目+キャラクターのクラス修正で求める」といったいこと、それから「キャラクターのクラスは自由に選択できる」とか「クラスは種族よって制限される」とか「キャラクターのクラスによって特殊能力が使える」とか「特殊能力を使うには MP を消費する」とか……そういった様々な基本的な事柄がすべて含まれます。
 ただし [1] はフレームなので、不変の法則(判定のときに振るサイコロの数とか、能力値の項目とか)を除いたもの(たとえば「クラス」や「種族」や「特殊能力」など)は全て概念としてだけ管理され、実際にどのようなものが入るのかについては [2 : コアイメージ] や [3 : ワールドデータ] で設定されます。

2 & 3 : コアイメージとワールドデータ

 [2 : コアイメージ] と [3 : ワールドデータ] は線引きが難しいんですが。
 たとえば当初の『Dangeons&DragonsTM』では単に「この世界には神がいる」という設定しかありませんでした。これが [2] で、平たく言えば「世界観」のことです。

 それからグレイホーク世界が少しずつ姿を明らかにするにつれて「ペイロア、ベイオリー、ネルル、ハイローニアス、ヘクスターなど様々な神がいる」となっていきました。この「ペイロア~」などの固有名詞とそれぞれの神格についての設定が [3] に相当します。こちらは「世界設定」ですね。

4 : ワールドルール

 そして [4 : ワールドルール] はそこから更に一歩進んで、たとえば『RuneQuest』のように「オーランス、イサリーズ、チャラーナ・アローイ、フマクト、ストームブルなど様々な神がいる → 信徒は信仰する神ごとに決められた神性魔術が使える」の、「信徒は信仰する神ごとに~」といった部分になります。

5 : メタゲームリソース

 [5 : メタゲームリソース] は、より直接的に参加者が管制する(できる)リソースのことです。
 たとえば「ヒーローポイント」や「アクションポイント」のような。

6 : メタゲームフレーム

 [6 : メタゲームフレーム] は、RPG の進行をフレームワークに整備したもののことです。
 たとえば F.E.A.R. ブランドの各システムが持っているシーン管理、フェイズ制、一連のハンドアウト(アクトレーラー、PC背番号など)、そしてシナリオクラフト。また、グループ SNE が『シルバーレインRPG』で踏み込んだチャプター制も、もちろんこれに含まれます。
 これが進むとシステムとメタゲームフレームが連結するようになります。

世代論に使ってみる

 この分類法で世代論を語ると、世代分類はもうちょっと細かくなって、

  • 第 1.0 世代 : [1] + [2]
  • 第 1.5 世代 : [1] + [2] + [3]
  • 第 2.0 世代 : [1] + [2] + [3] + [4]
  • 第 2.5 世代 : [1] + [2] + [3] + [4] + [5]
  • 第 3.0 世代 : [1] + [2] + [3] + [4] + [5] + [6]

なんて具合にピラミッド型に拡張されていったと考えられるんですが。
 以降はメモ書きです。

完全な第1世代は存在しない?

 実はこの分類でいくと、完全な第 1.0 世代っていうのは存在しません。
 なんせ『Dangeons&DragonsTM』のとき、既に「エルフ」「ドワーフ」「ハーフリング」なんてのが登場しちゃっていたので。それらは立派に [3] に分類されるものです。(これら異種族については最初期は無かった気もするんで、だとすればそれだけが完全な第 1.0 世代と呼ぶことが出来る。あんまり意味ないけど)

世代論におけるメタゲームリソース

 ちょっとここだけ感想になっちゃいますが、[5] は TRPG にメタゲームの要素を持ち込んだものすごい発明だと思ってます。
 こいつが発明されていなければ、たぶん第三世代は生まれなかったんじゃないかという。

 ちなみに僕がヒーローポイントを初めて意識したのは、たしか『スペオペヒーローズ』です。あれにゃアンチ・ヒーローポイントなんて更にダイナミックな [5] がありまして、こいつがショッキングだったんです。なにしろ「シナリオの都合上、ここは失敗しとけ。代わりにヒーローポイントあげる(=後で活躍させてあげる)から!」ってんですから(笑)

世代論におけるメタゲームフレーム

 実のところ、世代論にしたとき第三世代の扱いに困ってしまうのもこの辺で、[6] については「ただ明文化しただけ」という辛辣な意見もあるんですよね。それは実際そのとおりで、昔から遊んでいたユーザの中には自覚、無自覚に関わらず、そうしたフレームワークを持っていた人は多く存在するわけで。
 そうした意味では実際的には [5] の方が、少なくとも第三世代を規定する上では適切なような気もするんですが。うーん……

まとめではないけど

 ゲームマスターがシステムデザインに習熟するにあたっては、この辺の認識を持って「どのルールはどのカテゴリか」ということを考えるのがいいんじゃないかと思います。「どのルールは堅持しなければならないか」「どのルールはアレンジしていいのか」等の理解が、キャンペーンデザインやマスタリングの即応性と柔軟性につながると思いますんで。

余談 : これは汎用システムの解析法

 このシステム解析、元は普通のシステムを汎用システムのように分解して、ルールキット化するために決め込んだもので。
 僕は(オフラインでは特に)ルール&データの取捨選択によって意図を伝える、やたら遠回しなゲームデザインを好んで行うモンですから、こうしたシステム解析が必要になってくるわけです。