[掌篇] 03 : ふりむいてはいけない

 見知らぬ町へ、行く列車がある。
 新月の夜、灯りの消えた駅舎に来るという。
 妖しい二つの眼を光らせ、彼方より影色の列車。
「今日の乗客は、あなたひとりです」
 背(せな)の方から声がした。
「けっして振り向いてはいけませんよ」
 見送りは、かすむ街の灯りばかり。

お題提供ページ:小説書きさんに50のお題