[掌篇] 02 : 地図にない国

 ツーッ ツーッ ツーッ
 受話器から聞こえる、うつろな音。
「さよなら」
 耳の奥で、繰り返される声。
 想うだけで幸せだった、横顔が薄れていく。
 くず折れて見上げた空には、欠けた三日月。
 なにも考えられない。
 こころは今、地図にない国。

お題提供ページ:小説書きさんに50のお題


 この掌篇連作には前述のルールのほかに、裏ルールというべきものがあります。それを遵守するのがえらく大変で、どこまで続くか、どこで破るかが、目下最大の懸案。
 あとは前にコメントで書いたんですが、「情景が浮かぶ」ということ。これはむしろ好きな表現方法なんですが、問題は「掌篇で」という前提。何の因果か知りませんが、微に入り細を穿ち情景描写をするようなクセがついているので、言葉少なに表現するのが実に難しいです。
 それでも、情景をイメージしながら文字をしぼり出すのは楽しいんですが。