C95(初頒布日)に間に合わなかったので先行の二文字は取れてしまいましたが、プチレビュー続けさせていただきます。
久しぶりなんでちょっと勘が狂ってたり文字数足りなかったりあるかもしれませんが、ご容赦を。
さて、今回のお品書きは――
- 柔軟なシナリオができるまで
- 団子魔(だんごま:ダンゴーマニュアル)
- ハック&スラッシュで手軽にTRPG 作成
――以上の三記事です。
柔軟なシナリオができるまで
執筆者はひざうらデルタ氏。
(概要)
TRPG とその他のストーリーコンテンツ(デジタルゲームや演劇等)との違いをシナリオの柔軟さと定義し、TRPG の自由なプレイングに耐えうる柔軟さを持ったシナリオをどのように作ればよいのか。理想的なシナリオの設計を求めたとき、何が必要になるのか。といった事象についての論考です。
三章立てに分けられていて、一章でシナリオの大枠、二章で導入、三章で道程についてそれぞれ解説しています。
(こんな人にオススメ)
サブジェクトに「ちょっとコアなシナリオ作成入門」とあるとおり、ちょっとコアというか、現在主流とされてる固定的なシナリオ運用術からは逸脱したところがあります。ということで一本道シナリオに飽きた人、プレイヤーの提案を活かしたマスタリングがしたい人、ということになるのかな。
一章、二章については普遍的なアプローチなので、どんな方でも一読しておいて損はないと思います。普遍的と言いましたが、一章で楽曲をイメージソースにする話あたりはわりとユニークなアプローチなので、ちょっと面白かったり。
またゲームマスターとして柔軟な対応──要はアドリブ──を可能にするため、その土台をどうやって作るのか? その辺りが気になる人は三章をしっかり読んでおくと良いかと思います。
(自分ならどう使うか)
アプローチとしてはむしろ古典に近い、ワールドシミュレータ時代のアプローチという感も強かったりするわけで、個人的にはめっちゃ頷きまくりな記事でした。
本記事が理想としている柔軟なシナリオというのは、実際に形にするには相当ハードルが高かったりもします。ぶっちゃけゲームマスターの教養頼みになる部分が非常に大きいので。ただし完全なものでなければ、ハードルは一気に下がってくるわけでして。完全な一本道でもなく、また完全に柔軟でもなく、その中間あたりに手を伸ばすための第一歩としてトライしてみると良いかなーと思ったりします。(と言って若い子に薦めてみました)
団子魔(だんごま:ダンゴーマニュアル)
執筆者はARMAGMOA氏。
(概要)
「ダンゴー=談合」ということで、話し合いによってシナリオを作っていく方法について。
誰かと協力してシナリオを作るというと、氷川霧霞氏や丹川幸樹氏が取り上げた「ペアシナリオメイキング」が思い出されますが、こちらはあくまでゲームマスターがプレイヤーからシナリオのネタを仕入れる手法なので、パートナーや作り方に差異があります。
基本的には PC の背景から NPC を設計し、彼らに秘密を持たせて起承転結を生み出そう、という認識で良いのかな?
(こんな人にオススメ)
キャラクターを活かしたキャンペーンを遊びたい人には特にオススメです。またシナリオは NPC を主軸にするので、シティアドベンチャーやモダンアクション系のシナリオへの適性が高いかと。(ダンジョンハックで使おうとしても導入と結末にしか出番がなさそうだし)
記事の最後にもあるとおり、万人受けするものではないと思います。特に競技性や資源管理系を楽しみたいプレイヤーには、どうしても「そんなことよりダイスを振らせろ」となってしまいますんで。(それはこの記事に限った話ではありませんが)(数理系に言及したシナリオデザインガイドってあんまり無いんですよね)
関係性から物語を作っていくという面では、隆見ヲサム氏の「やさしい人物関係シナリオから」「続・やさしい人物関係シナリオから」も大いに参考になると思います。
(自分ならどう使うか)
これ、自分は読みながら「そうそう」と頷きまくった記事でして。たぶん 90 年代にゲームマスターをしていたオールドスクールな面々ならば同じような手法にトライした経験はあると思うのですが。
シナリオを書く際、思いついた「一番見せたいシーン」を第2プロットポイント(起承転結の転)に置いて書き始めることで、目標を見失わず筋の通ったストーリーを生み出す──というメソッドがありますが、これは特に NPC の「秘密」を明かすサプライズをそこに持ってくることで、セッションハンドリング時の目標を見失わないようにするマスタリング手法だったりもします。
あと、本記事の本領は後半の実例(一部失敗談)にあると思います。自分も似たような失敗してきましたし(笑)(こういうの公開されるの素晴らしいことだと思います)
ハック&スラッシュで手軽にTRPG 作成
執筆者は七氏氏。
(概要)
ログ・ホライズンTRPGの「小規模ダンジョンシナリオ!」を例に、シナリオ作成の初心者さんが、最初に手がけるシナリオとしてハック&スラッシュのスケール、特に「モンスターをバッタバッタとなぎ倒して活躍する」シナリオの設計について解説しています。
「これくらいでええんやで」という、胃に優しいお話であります(^^)
(こんな人にオススメ)
「はじめてのゲームシステムで、どんな/どれくらいのスケールのシナリオを作れば良いのか分からない」という人は、とりあえず通読しておくと良いと思います。
もちろんゲームシステム付属のサンプルシナリオを読んでも良いんですが、それが分かりにくかったり、ユニークなドラマ性が盛り込まれたアクの強いゲームシステムだった場合、却って困っちゃうことありますし。
なにげに「イベントの数=部屋の数」とかシンプルながら大事な基本が盛り込まれていたり、初心者には特に悩ましいスリルのバランスについて大胆な Mod の提案があったり。そうそう、こういう改造していいんじゃよって。
(自分ならどう使うか)
オススメの方でも書きましたが、初心者さんに読んで欲しいテキストですね。これくらいでええんやで、という基準はとても有効です。
ハック&スラッシュというシナリオ分類は、ゲームシステムの底力を信頼することが前提となっています。ゲームシステムがハッスラにちゃんと対応したものであれば、これくらいのフワっとしたところから始めても十分にセッションを楽しむことはできるモンです。ええ、上手くいかなかったら責任転嫁してしまいましょう(笑)
今回の記事は
今回の記事は特に vol.1 の頃のように、実に執筆者個人の遊び方に寄り添った内容で、読み応えのあるものばかりでした。僕はこういう記事が大好物なのです(笑)(こういうので良いんだよ、こういうので)
次は
というわけで今回はここまで。
冒頭にも書きましたが、久しぶりだったもんで文体やら文量やら上手くまとまってない気がしますが。すんません。後日もっと上手く書けそうだったらリライトするかもしれません。
次回は本書最後の3記事、
- インスタントなNPC造形
- 失敗を防ぐ
- 敵の数と処理時間
と、氷川さんの記事が三連チャンになります。