[book] 『机上の総べて』を読んで(1)

たかみ弌さんの (T)RPG 漫画に「机上の○○」というシリーズがあります。これがなんというか、変に肩肘張ったり着飾ったりしない、実に率直なゲームシーンを描いた快作でして。(いや人によっては臓腑を抉られるような気持ちになると思いますが)

その総集編『机上の総べて』が先日、冬コミで頒布されたんですね。で、まあ僕はコミケには参加していませんので、こかげ書店の通販でもって入手したわけです。

机上の総べて

「机上の」シリーズについては、パブーで電書になっているものと、後から通販で入手できたものくらいしか持ってなかったので、ちょいちょい抜けが有ったんですが、総集編ということでその抜けの部分まで全部フォローできまして。

(T)RPG のゲーマーとしてはほぼ同世代だと思うんですが、だからこそ読んでいてアレヤコレヤと昔のことを思い出したりもして。

ホントにもう、ぐさぐさと刺さりやがんの(笑)

机上の総べて

で、ここからは個々のエピソードについて、感想だったり思い出した自分の経験だったりをダラダラと書いていきます。

長いんで 2~3 回に分けて書きますね。

今回は第一回ということで。

机上の始まり

(T)RPG を全く知らなかった子(カラス)が、無茶振りで初セッションに初 GM をやらされ、そのままズルズルと GM として遊ぶ話……と書くと結構ヒドい気もするんだけど、当人たちはわりとそれを普通に受け入れてるんで「ああ、そういう距離感なんだなあ」っていう。この歳になってみると、学生時分のこういう距離感って、ちょっと羨ましくもありますね。

(2ページごとに細かくエピソードが整理されてて、パッと読みやすいのが好き)

無茶振りで GM をやらされ、といっても実際にやらされてるのは戦闘のレフェリングだけだったりして。実は順当なインストラクションなんじゃないか? と思わなくもありません。いや流石に (T)RPG が何なのかの説明もなしに放り込むのはやりすぎだと思いますが(笑)

カラスさん、参加 PC のキャラ設定をすり合わせてる辺り、元から素質有ったんじゃないかしら。

自分の作ったキャラクターの、モリモリに盛りまくった設定を、つい話したくなるっていうのも初々しくていいなーって。この辺は時代はあんまり関係なくって。一頃面倒見ていた文芸部の子たちもキャラ設定を楽しげに話してくれたものです。

それにしても、このキャラシーに描かれた傭兵っぽいキャラクターって『ファム&イーリー』のミゲルですかね?

自分らが仲間増やすときにもやったなーっていうのが、「新人さんにリプレイを貸す」というムーヴ。コンパニオンとか言ってるしデザインからしてもこれ、確実に『ロードス島戦記』ですよね? やっぱり同世代ですよねって(笑)

『ソード・ワールド』の方だと、知名度の分だけちょびっとハードルが高くなるんですよ。あれは自分とこだと『スレイヤーズ』絡みでドラマガ読んでる人にしか通用しなかった記憶。

そして次のセッション。今度は参加者を増やし、いわゆる定員(冒険者パーティは最大6人程度というオヤクソクが有った)で遊ぶちゃんとした冒険。とはいえ参加者はみんな好き勝手。銭ゲバ野郎、マジックアイテムくれくれ君、いろいろ無視して行動したがる人、とにかくダイスを振りたがる人など、あるあるネタのオンパレードというか。そんな連中に囲まれて、初心者 GM もてんやわんやでグダグダなセッション。

自分も最初はそんなだったなあ。もっと酷かったかもしれない。それに「手間かかってカッタルイ」という感想も、そうだよねって。それでもなんか楽しいんだよね、セッションって。なんなんだろう、ホントに。やめらんないのよ。ホント。

机上の王さまI

引き続きカラスが GM で、セッションにあんまり興味がなく退屈すると席を立っちゃう代打 PL とのセッション話。

なんだけど同時に自分も GM って役割にちょっと慣れてきて、自分一人で全部背負った挙句にセッションをぶち壊しちゃった話でもあり。

GM の権限の強さと、その分「ちゃんとシナリオを運営しなくちゃ」って責任感にもなって、そのバランスが崩れると空回っちゃうんですよね。この辺は結構厄介な問題です。 [1]詳しくは読本3巻の「コミュニケーションの遊び」で解説予定。

だから権限と責任を可能な限り手放せるよう、あれこれ切り分けて整理してるわけですが。

まあでも参加者がセッション投げたら、無理に進めないで GM も投げちゃっていいと思うんですよ。勿論その参加者がいないものとして遊んでも良い。プライベートで友達だったりすると、色々と面倒だったりもしますけどね。

……ってコレ、自分のは全て経験則なんですけども。(怒鳴ったことはないけどセッション投げたことは有る)

机上の足あと

一度は遊ぶ環境を失ったロールプレイヤー「森本タイオウ」が、かつての友人に誘われて再開する話。いい話です。

でもやっぱりチクチク刺さる部分はあって。たとえば同じ学校のクラスメイトに誘われたんだけど負い目を感じて二の足を踏んじゃったこととか、遊ぶ仲間を失ってた時期から楽しみの座標がちょっとズレちゃってたとか。

前者については僕も諸先輩方に気後れして何度も機会を逃したりしてたんで、よく分かります。 [2]「ルーンクエストだなんてそんなアッパークラスのタイトル持ち出さんといて! ウチは国産オンリーなのよ」って。

やたら時間を喰われるキャラ作成に、関係性を決めるだけで手間取ったり、ゲームが始まってもロールプレイが始まったことに気付くのがワンテンポ遅れる、この、のったりした導入。実にイイ。

このゆるーい時間が懐かしくもあり、今でもたまにこんな遊びをしてたりするので生々しくもあり。

そして盛り上がったところに乱入してくる母親。超あるある(笑)

あ、これでもうおしまいか。楽しかったんだけどなあって、ちょっとテンションが下がりかけるところに「続行しよう」ってなってむしろテンション上がりまくる展開。あるある。

そしてその勢いで最後まで突っ走る感覚。

ホント、こう、全てのコマが共感できてしまうというね!

こんな体験しちゃったら、そりゃあ辞めらんないよねって。

読んでるだけでテンション上がる話です。

References

References
1 詳しくは読本3巻の「コミュニケーションの遊び」で解説予定。
2 「ルーンクエストだなんてそんなアッパークラスのタイトル持ち出さんといて! ウチは国産オンリーなのよ」って。