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- shino
- 今日は何の話にする?
- otneg
- 何が話せるかなあ。
- shino
- ゲーム系は?
- otneg
- ちょっとモチベーション下がってるんだよねえ。遊べてないから。
- shino
- あ、やっぱり。
- otneg
- 現場から離れちゃうとどうしてもねえ。読本とか回顧録とか、カストリになっちゃってるし、書かなきゃと思ってはいるんだけど、なかなかね。
- shino
- じゃあ創作方面?
- otneg
- そっちも仕事辞めてだいぶ離れ気味だからなあ。二次創作の遊びを続けてるくらいで。
- shino
- あ、そういえば聞きたいこと有った。
- otneg
- なんだろ?
- shino
- 小説でさ、あれ使う言葉とかターゲットユーザに合わせて切り替えてる?
- otneg
- そりゃもちろん。
- shino
- 旦那ってさ、あれオノマトペのレベルで使い分けてない?
- otneg
- いやむしろオノマトペこそ使い分けなきゃいかんのよ。通常の情報伝達系でレベルをざっくり分けると、カタカナ語と訳語、俗語、慣用句、擬音、とかになるんだけど、擬音はカタカナ語レベルに入ることも結構有るし。漫画の描き文字とはまたちょっと違うから。
- shino
- やっぱそうなんだ。
- otneg
- 漫画だと画面でも表現できるから、擬音はギャグやギャップとして使いがちなんだけど、小説だと情景描写の一貫になるんで。ウェイトが違っちゃう。漫画の擬音は押す表現なんだけど、小説の擬音は引く表現と言うか。たとえばジョジョの擬音、ドッギャアアアアンとかメメタァとかは、あれ先に絵として見せてたから良いんだけど、最初から文字だけで見せられたら何いってんだこいつって話でしょ。
- shino
- それは分かる。
- otneg
- その辺の表現系になると、個人的には「T」と「P」の揺れが印象深くて。
- shino
- どゆこと?
- otneg
- 僕が触れたのは『スレイヤーズ』からなんだけど、文脈としては多分、少女漫画の流れでね。神坂一がさ、「ぺ」をよく使ってたのよ。「ぺぺぺのぺ」とか「ぺい」とか。たぶんつばきを飛ばすような、スプラッシュ系のニュアンスで。当時ってまだヤンキー文化が残ってて、唾を吐く表現は俗悪では有っても非日常では無かったでしょ?
- shino
- あー、たしかに。
- otneg
- 「ぺい」はこれ従来「てい」って表現されてた突き飛ばしのオノマトペなんだけど、「ぺ」にすることで、力の抜けた表現にしてるわけね。この辺はキャラクター性とも関連してくるんで、掘り下げても楽しかったりするんだけど。で、この表記が通じる世代と通じない世代ってあるわけ。
- shino
- そりゃそうか。
- otneg
- 逆に「P」音と「T」音を入れ替えたものとしては、「ぺしぺし」と「てしてし」とか。この辺は子犬とか子猫とかがやると肉球あるから撥音にならないよねとか。この辺の表現もわりと定着してはいるし、ちゃんと描写してイメージしてもらえればニュアンスは伝わりやすい良い擬音ではあるんだけど、やっぱり伝わらない層ってのは有って。
- shino
- あるよねえ。
- otneg
- 同じような感じで、慣用句化してる擬音って世代差というか文化差かな、そういうのがあって。繰り返しとかもそんな感じで、「ほぼほぼ」なんてのもテレビ見てるかどうかで違ったり、あと「ずぶずぶの関係」なんてのも政治ニュースで多用されて広がったんで若い層だと知らん子もいたり。あとはあれか。セックスを「パコパコ」ってのもネット文化系ベースなんでーとか。
- shino
- だよねえ。オッサン世代だと「パンパン」とか「ズコバコ」のが通りがいい。
- otneg
- これまあ描写上の主観とか主体の遷移の話になったりもするんで、単純に世代分けして終わりって話でもないんだけど、まあそれは置いといて。だから使える音と使えない音、読者の範囲とか前後の文章との相関みたいなのは意識してる。というか言語素チェッカーで確認するようにしてる。
- shino
- やっぱりそこまでやってるんだ。
- otneg
- 近い音韻に引っ張られるのはよくあるんで、そのへんも注意せにゃならん部分ではあるし。わかりやすいところで濁音と半濁音のニュアンスとか。共感を呼ぶレベルとマーケットの範囲とってバーターな部分があるんで、どのレベルまで焦点を絞り込むのかとかは企画の段階で話すでしょ。そのときに語彙パッケージを設定したり。文意の正確さだけを追っかけると技術書になっちゃうし。そうやって図面を引くのはミステリーだけでいいかなあ、くらいの。
- shino
- ミステリーはフェアじゃないとねえ。
- otneg
- ミステリーはロジックだからねえ。風呂敷広げすぎて作品世界の外側に答えを作っちゃうのは違う。ああ、ここゲームに繋がるか。前にアレ、誰だっけ。グローランサ系の人が言ってた口承文芸の話。同じゲームをしていても、イメージしてるゲームの状況は実は違ってて、ていう。
- shino
- 作品は読者一人ひとりのもの、みたいな。
- otneg
- そうそう。そのへんのイメージのブレ幅を、どのくらい許容するのか、みたいなところで遊びの性質の違いがあったりするんで、マスタリングの芸と小物とシナリオと、みたいなところの色々があったりする。小説だと挿絵だなー。
- shino
- でもあれ、作者の意向あんまり通らないとか聞いたよ?
- otneg
- 最初の読者としての担当編集が、だから大事なんだよなあっていう。あとコネクション。
- shino
- 読めない人とかいるもんねえ。変な煽り入れられたり。
- otneg
- 昔、煽りに自分の自慢話ばっか書いてるわけわからん人とかも居たけど、あの人今どうしてんだろう?
- shino
- あー。その人、たぶん今も元気。
- otneg
- 元気なんだ。あー。まあもう辞めたからいいんだけど。で、テーブルトークの話を無理やりすると、その辺のブレをどう抑制するかってので、ぶっちゃけが安定化の技術として普及したってのはあるのよね。だから好きになれないんだけど。まあでもそうするとプレイヤーの右往左往を見て楽しんでる愉悦班みたいに言われるからなあ。
- shino
- でも旦那、愉悦班でしょ?
- otneg
- まあそうなんだけど。右往左往じゃなくてもいいのよ。ただ別世界を観察したいだけだから。見たいのはドラマじゃなくてドキュメンタリーなのよ。その辺もだからまあ、ロールプレイヤーというよりシミュレーターなんだろうなって。参加者が楽しんでるのを見て楽しむってスタンスでなら、ぶっちゃけもコント芸もなんぼでもできるんだけど、自分が能動的に楽しもうとすると、ちょっとそこからはズレるんだよ。
- shino
- うん。まあ、分かるような気はする。
- otneg
- その辺はだから参加者次第で、最初からこっちがそういうスタンスで遊びたいぞって時は、そういう放ったらかしの遊びでも自分で楽しめちゃう参加者を呼ぶようにするとか。あーこの人にノリノリで小芝居させて楽しませたいなあって思ったら、そういう遊び方で楽しめるメンツを呼ぶし。だからそのへんが絞り込めない野良は怖い。
- shino
- そういうのってシナリオでも左右されない?
- otneg
- されるよ。だからちゃんと何をどう運用して、どこに刺激を埋め込むのか、とかはシナリオ読む段階で考える。システムでも違うし、シナリオでも違うし、メンツでも違うし。オールドスクールなシステムの場合は特に、GM権限の使い方次第でシステム拡張できるし。そういうのをぼんやりと多様性として放ったらかしてもいいんだけど、デザイン考えると意外とちゃんと設計できるのよ、とかも思う。大抵、ひとつのシナリオで最低3パターンくらいの運用系があって、それはコミュニケーションツールの選び方ってのが大きいのね。小道具だったり言葉遣いだったり姿勢とか身振りとか顔芸だったり。部屋の大きさもそうだし距離もそうだし照明もそうだし。この辺は落語とか板の上でミステリーやるときのテクニックが強くて、掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げていけるよーとか。表現系の設計者としてのゲームマスターって、あんまり語られないよねーとか。文字にしづらいからなんだろうけど。書けって言われてもめんどくさいし。
- shino
- 先回りされた。
- otneg
- 自分で手書きしたときも、キー叩いたときも、こうして喋ったことを文字起こししてもらう時も、わざわざ校正してもらわなきゃいけないくらいだからねえ。胡乱な脳みそが呪わしいよほんと。手間がかかって仕方がない。