[column] シナリオとセッション#2

 前回「シナリオとセッション#1」では、「シナリオの内容はテーマを基準に取捨選択が行われてるよ」という話を書いてみました。
 今回は、セッションという環境/単位が持ついくつかの性質について、書いてみようかと思います。

要約

 要約すると、以下の 2点になります。

  • 「セッション」とは TRPG のゲームプレイを開始から終了までの場のこと。またはその単位。
  • 本来のセッションは高価なコスト(時間・場所・人数)を要する。特に時間は他の条件を満たすための通貨として機能する。

セッションという単位

 「セッション」とは英単語で「開会」とか「会期」といった言葉で、ニュアンスとしては「会議や演奏などを集団で行うための場や期間」なんて具合になるようです。討論の場としてのセッション、あるいは演奏の場としてのセッション、どちらも TRPG の実態とよくマッチしていて、この語を当てた人のセンスが伺えます。
 そんなですんで、TRPG でセッションというと「ゲームプレイを行うための場や期間」なんてニュアンスになるわけですが。

TRPG という贅沢な遊び

 元々、TRPG って贅沢な遊びなんですよ。
 まあ金銭的にはむしろ安上がりなゲームくさいですが(笑)
 理由は至ってシンプルで、それを遊ぶために必要なものがとても多いこと。*1[遊ぶために必要なものがとても多いこと] = 余談ですが、僕個人は硬直的で旧来的な TRPG のシナリオ-セッションのモデルが、TRPG 市場の構造的な弱さにつながっているようにも思います。小手先の設定やゲームデータのコンボを考えるより、硬直した旧来的なビッグゲーム思想を解体する方が、TRPG の存命と発展に寄与するようにも思います。「マサラゲーム」の時にも、ちょろっと扱った話なんですが。

 僕はよく「天・地・人」なんて言ってますが、言い換えると「時間・空間・人間」の三要素がある程度、まとめて揃えられたときに初めて遊べるゲームでしょう、TRPG って。
 他のテーブルゲームに比べても 1回のプレイ時間は長く、プレイヤーが集まってキャラクターシート等を広げたりサイコロ転がしたりするだけの空間が必要で、一般的な TRPG のシステムではプレイヤー 3~6人+ゲームマスター 1人で、合わせて 4~7人程度が一箇所に集まることが求められる。

 セッションという単位は、これら三要素を揃えたパッケージと言えます。
 では、それぞれの要素についての課題をリストアップしてみましょう。

セッションの設営要件/天:半日から一日程度のまとまった時間

 第一の要件は、まとまった時間です。
 ちょっと調べた程度の話ですが、多くの TRPG のゲームシステムが、一回のセッションを約 3~4時間程度で見積もっているようです。手元にあった『ナイトメアハンター=ディープ』掲載のシナリオは、ランニングタイム:約 3時間が 1本と約 4時間が 2本。『真・女神転生TRPG 魔都東京200X』の入門シナリオは 4時間。『アリアンロッドRPG』や『ダブルクロスThe 3rd Edition』掲載のシナリオも、プレイ時間:3~4時間」となっています。

 ゲームシステムによっては 30分程度で遊べるもの*2[30分程度で遊べるもの] = 『Aの魔法陣』の 1ターンゲームのこと。 も有りますが、ルールブックに掲載されているシナリオのプレイ時間は、だいたいこのくらいの枠内に収まっているかと思います。*3[ルールブックに掲載されているシナリオのプレイ時間] = この辺、調べてリスト化してみても面白いかもしれません。それとも、既に誰かやってるのかな?

 実際に遊んでみると、間延びしたり逆にサックリ終わったりで、もうちょっと前後の誤差はあるでしょう。また、間に休憩を入れることなどを考えると、実際のセッションの時間は「3~7時間」程度じゃないかと思います。この辺は主観なんで、環境によって差があるかと思いますが。*4[セッションの時間は3~6時間] = あくまでパーソナルな話としては、夜間セッションはだいたいこれくらい。ただし午前からガッツリ遊べる休日シフトだと、10時間くらい平気で遊ぶ。

 ところで。
 年齢が上がるにつれてコストとして最も高価になるのが、この時間的な拘束です。
 セッションの時間が 3~6時間として、そこに空間――セッション会場――までの移動時間が加わります。移動時間が片道 1時間もかかれば、セッションの所要時間は 4~7時間ということに。午前 11時に始めたとしても午後 3~5時。日中の行動可能な時間が半ば以上、食い潰されてしまいます。また、「セッションが予想外に伸びてしまう」という、セッション終了後の予定が立てにくい事情もあります。
 こうした時間的拘束が、TRPG のセッションを行う上での多大なコストとしてのしかかってきます。

 学生のうちは、平日は同じ「学校」という空間に集まる分、こうしたコストは極端に下がります。行動範囲も狭く、日常的に遊ぶ仲間のテリトリーもそれほど分散しません。プレイグループが同じ学校の生徒で構成されていれば、そのまま学校でセッションを行うなり、下校時に会場まで一緒に移動すれば、まとまった時間を取るための労力も最小限まで抑えられるわけです。

 しかし社会に出てしまえば、学校のように同じ場所に集まる、ということが少なくなります。同じ会社の同僚だけでプレイグループを形成すれば、そうした問題もクリアすることは可能ですが、なかなかそういうわけにもいきません。それに学生時代からの仲間が、全員同じ会社に勤務するということも、滅多にないでしょう。社会人になることで生活空間が分かれ、生活優先で選択されることで住居も離れがちです。
 そうした事情から、セッション会場への移動時間も増大します。結果として TRPG のセッションに参加するには、半日~丸一日のまとまった時間を確保するよう迫られることになります。それも参加者全員の都合が合うタイミングで。

 TRPG のプレイ時間の長さも、こうした移動時間と無関係ではないと思います。
 つまり「30分間のセッションのために往復 2時間というコストを費やすか?」や「余裕を見ながら確保できるまとまった時間はどれくらいか?」といった問いに対する解として。

 また、時間はその他二つの要素(空間・人間)を揃えるためにも必要となります。極論すれば、時間さえあれば

セッションの設営要件/地:机と閉鎖性のある空間

 第二の要件は、空間と設備です。
 TRPG を遊ぼうとすると、最低で 2人、ゲームシステムにもよりますが、通常は 4~7人程度の人数が必要とされます。ゲームマスターが 1人にプレイヤーが 3~6人、というわけです。そしてそれだけの人数が車座に座れる場、というのがセッションの実施に求められます。

 ほぼ全ての TRPG のゲームシステムは、キャラクターシートや筆記用具、サイコロなどの小道具を必要とします。それから本格的なミニチュアゲームの後継としてのシステムは、さらにマップやミニチュアを設置するための空間も必要です。これらをストレスなく使うためのテーブルも必要です――「テーブルトークRPG」というくらいですから。
 それからゲームに集中できるようにするため、セッション中なるべく邪魔が入らないような環境であることが求められます。それから逆に、騒いでも咎められない環境であることも重要でしょう。グループにもよりますが、経験上、TRPG って爆笑や大声がわりと発生しやすい遊びですんで(笑)

 都合、「プレイヤーが囲んで使えるそこそこの大きさのテーブル」と「外野の騒音が少ない/気にならない程度の環境」、そして「大声が出せる環境」が、セッション設営には必要とされるわけです。*5[セッション設営に必要な環境条件] = その他に「飲み食いが出来る場所」というのもあります。あるいは「ピザが食べられて冷えたマウンテンデューが飲める場所」かもしれません(何)

 これらの条件をクリア出来る環境というのは、あまり多くはありません。
 そして自宅や学校のような特殊な環境を除けば、そうした環境を利用するには多少の金銭的なコストがかかります。そして場合によっては「TRPG を遊ぶため」という利用目的*6[利用目的の説明] = 昔、RPGマガジンのセッション設営についてのマニュアル記事では、その辺の注意点について言及されていました。 を説明をするのが大変だったりもします。この辺は先方に理解があるか、怠惰であるか、うまく誤魔化せるか、だいたいそのうちのどれかが成立しないと苦労することになるでしょう。

 なお、時間さえあれば空間的条件を満たすことは、それほど難しくも無いでしょう。呆れるような移動時間をかければ、条件を満たす場所は見つかるはずです(笑)

セッションの設営要件/人:TRPG を知る複数のプレイヤー

 第三、最後の要件は、そのものずばり人、プレイヤーになります。
 TRPG は、最低でもゲームマスターとプレイヤーの 2人が、実際にゲームシステムが想定する標準的なゲームを行うなら、プレイヤーは 3~4人欲しいので、そうすると都合、4~5人の TRPG を知っている人間が必要になります。

 引退した元ゲーマーや、遊んだことの無い未経験者たちからよく聞くフレーズに「身近に仲間がいない/いなくなった」という話がある程度には、この人材不足という課題も深刻です。

 これについてもゆっくり時間をかけて人材育成を行うことができれば、問題は解決するでしょう。あるいは遠方のゲーマーを呼ぶなどの方法だってありえるわけです。
 時間欲しいなぁ……

■複合課題:時間が合わせられないプレイヤー

 また、実際に「TRPG を知っている/興味がある/遊んだことがある/好きだ」という人でも、その他の要件、特にまとまった時間が取れない、あるいは取れたとしても、他のメンバーと合わせた時間に取れない、という人も少なからずいます。
 セッションが上記のような厳しい条件を持つことによって、複合的にそうした潜在的な人材を殺してしまっている、ということもあります。

 以上がセッションという単位と、それが持つ基本的な三つの要件/課題についてです。
 次回はいよいよ[シナリオ]と[セッション]の関係性についての話になります。

References

References
1 [遊ぶために必要なものがとても多いこと] = 余談ですが、僕個人は硬直的で旧来的な TRPG のシナリオ-セッションのモデルが、TRPG 市場の構造的な弱さにつながっているようにも思います。小手先の設定やゲームデータのコンボを考えるより、硬直した旧来的なビッグゲーム思想を解体する方が、TRPG の存命と発展に寄与するようにも思います。「マサラゲーム」の時にも、ちょろっと扱った話なんですが。
2 [30分程度で遊べるもの] = 『Aの魔法陣』の 1ターンゲームのこと。
3 [ルールブックに掲載されているシナリオのプレイ時間] = この辺、調べてリスト化してみても面白いかもしれません。それとも、既に誰かやってるのかな?
4 [セッションの時間は3~6時間] = あくまでパーソナルな話としては、夜間セッションはだいたいこれくらい。ただし午前からガッツリ遊べる休日シフトだと、10時間くらい平気で遊ぶ。
5 [セッション設営に必要な環境条件] = その他に「飲み食いが出来る場所」というのもあります。あるいは「ピザが食べられて冷えたマウンテンデューが飲める場所」かもしれません(何)
6 [利用目的の説明] = 昔、RPGマガジンのセッション設営についてのマニュアル記事では、その辺の注意点について言及されていました。

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