[epitaph] 美術の先生が…

子供の頃、世話になった美術教師が、去年末に亡くなっていたことを知らされる。

退職されてからは趣味の同人活動に勤しんでいる話を聞いていたので、お元気なものと思っていたのだけど。残念。

教科書を朗読しながら唐突に「子供に自由な感性なんてあるか馬鹿!」とのたまう御仁で、だからこそいつも真似をベースにした具体的な課題を出すという、今考えると「それでいいんかい」と言いたくなる授業をしておられた。

たとえば「このカラー写真をコンテでモノクロに描き変えなさい」とか「副読本にあるモネの絵を見ながら花壇を写生しなさい」とか。特に「ガーベラの花を点描で描きなさい」と「副読本の中の好きな絵を輪郭線を描かずに模写しなさい」は、もはやそれ義務教育中にやることなの? という課題で。

ただ、そのお陰で自分は今の、奔放に絵画を鑑賞するスタイルを持てたと思ってもいる。少なくともアートについては、隣家の某イラストレーター氏と並んではっきり「師」と呼べる人だった。

まあその授業方針を除けば――あるいは授業そのものも“そう”だろうと思わなくもないが――実に自由な方で、たとえば年度初めの授業は必ず自習にして、希望する学生にはクロッキー帳の最後のページに希望の漫画キャラクターを描く、というよく分からん時間を設けたりしていた。それが先生なりの「自己紹介」だったことを卒業後に聞いた。*1ちなみに自分は前川たけし『ブレイクショット』の織田信介を頼んで驚かれたのでした。

あと、授業中に同人誌の原稿を描いてたのはどうなのかとか。いやそりゃ生徒が作業始めたらヒマになるのは分かるけど。

そうそう。某アニメのキャラクターが普段とはまったく違った姿を見せた時、その次の授業ではひたすら該当キャラクターについて、その人格形成プロセスや、発言の裏に見られる脆さ、関係キャラクターの背景に対する葛藤、そして強敵と対峙するまでの心の流れを、涙ながらに考察し尽くして生徒をドン引きにさせたりもしておられた。一人だけ貰い泣きしてる生徒いたけど。

休み時間には廊下で女子生徒*2同級生。今でいう厨二病の子で、若くしてやおいモノ、特に耽美系のBL同人誌を描いていた。自分はセリフ回しのチェックを頼まれたりしてた。元気にしているだろうか?と『鎧伝サムライトルーパー』v.s.『天空戦記シュラト』の「どちらがより耽美と呼ぶに相応しいか」バトルを繰り広げ、後日、その場に居合わせた僕まで一緒に校長室に呼び出された時はいい加減にしろと思いました(笑)

……なんだか変人エピソードばっかり思い出すけど、ほんとユニークな人だったなァ。

しかし、流石に小中学生の頃に世話になった方たちも、だいぶ鬼籍に入られてしまったもので。卒業後にも多少なりと交流があって、まだご存命なはずの方は、もうコアゲーマーな数学教師くらいしか思い当たらない。

References

References
1 ちなみに自分は前川たけし『ブレイクショット』の織田信介を頼んで驚かれたのでした。
2 同級生。今でいう厨二病の子で、若くしてやおいモノ、特に耽美系のBL同人誌を描いていた。自分はセリフ回しのチェックを頼まれたりしてた。元気にしているだろうか?