来月から内輪で『GURPS RUNAL: Private Edition』*1『ガープス・ルナル』を『GURPS BASIC 4th edition』にコンバートしたものをベースに、魔法・社会・信仰・組織関連のルールを拡張/再編集した私家版。のキャンペーンゲームを遊ぶことになっている。生憎と専用のログブックはまだ作成中だが(申し訳ない!)、ルールレギュレーションをまとめた PDF 版は配布済みだ。
初期参加者は 11 人。さすがに全員で一度にセッションをするわけではなく、リアド大陸で起こる大小様々な出来事について、その都度プレイヤーを集めて遊ぶオムニバス形式のキャンペーンだ。個々人が何人もの PC を扱うし、場合によっては一度のセッションに 1 人のプレイヤーが複数の PC を扱うこともある。特に終わりについて決められてもいない。幾つもの物語が並走し、さまざまな歴史が生まれるだろう。そうしたゲームを、これから体力と環境の許す限り、何年でも遊び続けていきたいと思う。
人数が増えるか減るかはわからない。初期参加者のうち 3 人は、初めて『GURPS』に触れる。今風のゲームに慣れ親しんだ彼らが、いささか古びた『GURPS』というゲームシステムに馴染めるかどうかは、不安なところもあるが、それ以上に楽しみで仕方がない。
以下にログブックの最後に書いた、デザイナーズノートを転載する。ちょっとした思い出話と自分なりの『GURPS』の楽しみ(の一端)についてだ。君は読んでも良いし読まなくても良い(笑)
思い出、それから楽しみな未来
私が『GURPS』というゲームシステムと出会ってから、かれこれたっぷり 20 年は経過していることになる。その間ずっと遊び続けてきた。プレイ履歴を見る限り、長くとも 3 ヶ月以上離れたことはない。
最初は『コンプRPG』に掲載された抄訳だった。そこに掲載された特徴や技能リストを見ながらあれこれ想像を逞しくして、キャラクター作成に夢中になったものだった。それまでに遊んでいたさまざまなゲームの世界設定をコンバートし、たった 3 つのコアルール*2成功判定/ダメージ判定/反応判定に従ってぶん回していく。足りないデータは類推によって拡張していった。今でいう「相当品」のように。
この頃に作ったキャラクターたちはデータ的に非効率だった。ルールの運用についてきちんと把握できていなかったのだから当然だ。しかしそれがキャラクターの魅力を損なうものではないことを知る、大事な一葉でもあった。
遊び方もわからないから、運用上の勘違いもよくあった。たとえば「PC が NPC に対して反応判定を振り、その結果に従わなければならない」といった処理もそのひとつだろう*3今考えればまるで『ファー・ローズ・トゥ・ロード』の感情ルールのようでもある。。だがこれはこれで予想だにしなかった展開が楽しめるので、今でもたまにローカルルールとしてレギュレーションに加えている。
それから『ガープス・ルナル』と出会い、『GURPS』の運用方法について指針を得た。ソード&ソーサリーを遊ぶには(当時ですら)重さを感じる戦闘ルールと癖の強い魔法データは、強力な特徴ルールと相俟って、むしろ戦闘に依存するシナリオデザインからの脱却を促してくれた。
戦闘に依存しないというだけなら、私自身は既にそれを『メガトラベラー』を介して知っていたものの、新しい環境――同世代のゲーム仲間たち――との間でうまくそれを共有できていなかった*4それは『メガトラベラー』には分かりやすいデータ群が無かったからだろう。私はそれをスパルタな先輩方によって、半ば強引に身につけさせられていた。。それが『GURPS』の潤沢なデータ群により、特徴や技能でキャラクターを記述し、戦闘に至るまでの状況を作り出していくゲームを、より伝えやすくなったのだった。
新たなシナリオデザイン。それは『ガープス・妖魔夜行』で花開くこととなった。人間たちの〈想い〉に振り回される無軌道は、【意志の強さ/弱さ】をフォーカスする。それは「意志力」というキャラクターの個性を強力に記述し、社会や人間を描くことを促していた。更には特徴データ群が、そして『ガープス・妖魔夜行』で拡張された増強/限定や〈妖怪〉ならではの【弱点】が、強くフォローしてくれたのだった。*5この時は『Battle Tech』の熱管理ルールを応用し、恐怖判定のルールを拡張して遊んでいた。それが後に人間 PC で妖魔夜行の世界を遊ぶ自作サプリへと展開していったりもした。
こうした特徴のルールも、今では古びてしまった、と言えなくもない。いくつかのゲームシステムでは、より洗練された特徴データが搭載されており、それらはより強力に、それぞれのゲームシステムのテーマに合った物語記述をサポートしてくれている。それと比べれば、『GURPS』の特徴はいかにも野暮ったい。ボソッと起こりうる事象を記述するだけで、それが物語にどう影響するのかは、参加者たちに丸投げされている。
それでも私が『GURPS』を遊ぶ理由の一つに「特徴の面白さ」を挙げるのは、まさにその丸投げされていることに由来する。
『GURPS』は物語を記述するゲームではなく、物語を発見するゲームだ。『GURPS』のキャラクターたちは物語を記述するために活動するのではなく、キャラクター自身を記述するために活動するのだ。それはゲームの状況を理解する上で、作為性のない事象の中から、読み取りたい物語を自分なりに編集し、発見させることにつながる。
「私だけの物語」は、他の誰でもない、私が作るのだ。それは参加者一人ひとりにとっても同じこと。同じ事実の積み重ねであったはずが、人によって見えているものが異なっている。それはセッション終了後に個々人が語る「ゲームの思い出」の中に見え隠れしている。そうやって様々な読み方を知ることで、一つの物語はより豊かな物語へと広がりを見せ、次のゲーム、次のセッションを急き立てる。それがたまらなく面白い。
ここに今また新たな『GURPS』のキャンペーンゲームが始められることを嬉しく思います。参加を希望してくれた諸姉諸兄らに最大限の感謝を。良いゲームを、全力で楽しんでいきましょう。
References
↩1 | 『ガープス・ルナル』を『GURPS BASIC 4th edition』にコンバートしたものをベースに、魔法・社会・信仰・組織関連のルールを拡張/再編集した私家版。 |
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↩2 | 成功判定/ダメージ判定/反応判定 |
↩3 | 今考えればまるで『ファー・ローズ・トゥ・ロード』の感情ルールのようでもある。 |
↩4 | それは『メガトラベラー』には分かりやすいデータ群が無かったからだろう。私はそれをスパルタな先輩方によって、半ば強引に身につけさせられていた。 |
↩5 | この時は『Battle Tech』の熱管理ルールを応用し、恐怖判定のルールを拡張して遊んでいた。それが後に人間 PC で妖魔夜行の世界を遊ぶ自作サプリへと展開していったりもした。 |