後で「あ、やべ、ことわりを入れとかなきゃ」なんて思ってたら、先に accelerator 氏に「TRPGにおける不能性の取り扱い~セカイ系の視点から~」で指摘されちゃいましたが(笑)
感動と悲劇、プレイヤーにまつわる一連のエントリは僕のポリシーであって、一般化できる話でも、TRPG の限界に関する話でもありません。実際、TRPG における悲劇表現は不適切っぽく書いてますが、氏の同エントリで正面から言及されている通り、アプローチの方法はいくつも考えられます。興味のある方は、是非チャレンジしていただきたいところ。
ちなみに、僕のポリシーの集大成は前エントリの「介入ゲーム~」にあって、TRPG との接し方そのものをすべて詰め込んだモンだったりもします。どういう意図でデザインしたのか、運用することで生じる必然的な行動パターンについて、ここでちょっと、勝手に説明してみたいと思います。
ある種の俺マンセー話(笑)なんで、興味の無い方はここでサヨナラが正解。
ページの内容
デザインコンセプト
前述の通り、介入ゲームは複数の目的を達成するよう組んでいます。
目的については、具体的にはこの辺。
- ゲームマスター(シナリオデザイナー)の負担を減らす(笑)
- みんなでシナリオ/ゲームデザインを考える
- ゲーム外で参加者たちのコンセンサスを整える
- プレイヤーのモチベーションを引き出す
- プレイヤー自身を英雄たらしめる
- プレイングの評価モデルを作る
- ゲーム外でも会話する機会を作る
1. ゲームマスター(シナリオデザイナー)の負担を減らす(笑)
最初のセッションについてはシナリオデザイナー主体で作る必要がありますが、介入ゲームが提案/要求された段階で、シナリオデザインの骨子をまとめるのは提案したプレイヤーの側になります。
そこで相談しながらシナリオの骨子をまとめていき、実際にプレーするための介入ゲーム用のシナリオを書くわけですが、この作業、当然ながら一人で行うよりずっと楽が出来ます。
まずゲームの目的が決まっている。
次にどのように攻略するのかという青写真も出来ている。
この両方が、シナリオデザイナーの頭を悩ませる最たる要素ではないかと思います。で、それを他人から提供してもらえるわけですから、あとは「攻略手順がどのように妨害されるか?」、また「実際にその攻略手順で目的が達成できるのか?」といったことだけを考えれば良くなるわけで、これはまァ随分とショートカットが出来るってもんです。
ゲームマスターは数理によって「ゲームの目標」を設定し、プレイヤーはシナリオの骨子によって「プレイヤーの目標」を設定する。残った「キャラクターの目的」は、プレイヤーと相談してシナリオデザイナーが設定する……という分担が、現状、僕の理想とするシナリオデザインパターンなので。
また、単純に介入権を得ようと思ったら、普段ゲームマスターをやらないプレイヤー専門の人も、ゲームマスターに挑戦してみる……という手があります。それによってゲームマスター専門のユーザもプレイヤーになったり、休憩したり、ゲームマスターの苦労を知ってもらったりということが出来ます(笑)
2. みんなでシナリオ/ゲームデザインを考える
上に関連する話ですが。介入ゲームは最初に決められた状況だけがあり、それを攻略する手順、また目的についてもプレイヤーがデザインします。
このときプレイヤーは、自分が目的を達成できるように、たとえば成功率を上げるためにゲームシステムの有効な運用方法について考えたり、妨害されにくい、または妨害されても対処しやすいような攻略手順――シナリオの筋書き――について考える必要があります。
介入ゲームは高難度(数理上は最低成功率 1%、最高成功率 30%)のデザインがされることを告知しますが、プレイヤーは様々な手段を考えることによって成功率を少しでも上げる努力が必要になるわけです。
内輪では、プレイヤーから攻略ルートが提示された段階で、ゲームマスター側から「使うゲームシステム」の選択肢を提示して、どれで遊ぶか選んでもらうケースがあります。
主に介入ゲームの手段が、キャンペーンゲームで使用しているゲームシステムではプレーできないときの対処ですが、それを逆手にとって、得意なゲームシステムが使える手段を考える、というアプローチもアリです。
3. ゲーム外で参加者たちの情報共有量を拡張する
プレイヤーが攻略ルートを考える時、周辺環境の設定やなんかについて詳しく知っておくことが、より精度の高いデザインが出来るようになるわけで。ですからプレイヤーとゲームマスターは、周辺環境に関する情報を質疑応答していったり、新たに構築していったりします。
で、そんな話をしながらゲーム内環境についての情報を共有しあって、実際のプレーでも幅広く活用できるようにする。という次第。
4. プレイヤーのモチベーションを引き出す
介入ゲームは不満や怒り、憤りといった爆発力の高い感情が出発点になっているわけで、瞬発的にモチベーションを引き出すのに適しています。
具体的には「失敗したら○○になっちゃうよ」と焚きつけることが出来る、とか(笑)
5. プレイヤー自身を英雄たらしめる
これはまあ、メタ構造なんですが。
「英雄」とは“困難を乗り越えて何かを成し遂げる者”と定義しましたが、だったらこの介入ゲームの前提条件、やれ「目的を決めろ」だ「方法はどうする」だ、それから「前のセッションの結果はなるべく変えない結末にしろ」だのという、ゲームマスターの無茶な要求という“困難”を乗り越え、最低成功率 1%とかいう過酷なゲームに挑戦する。
……そういう行動自体が英雄的だろうって話です(笑)
もちろん実際の介入ゲーム内でも、高難度ゲームという困難を乗り越えて、当初の目的――多くの場合、悲劇的結末の打破――を成し遂げる、という構造になっているわけですが。
6. プレイングの評価モデルを作る
いきなり話がすっとんで、今度は介入権を得るための条件の一つですね。
日常的に介入権を得ようとしたとき、他の参加者から評価されるようなプレイング、グループ内で優れたプレイングとされるものについて、考える必要があります。
いつもいつでもそれを考え続けるような必要はありませんが、たまに意識すること、実際にクラップが起こったときに、自分も介入権が欲しいと思ったら、「どうしてそのプレーが評価されたのか」なんてことについて、ちょっとでも考えることは有効な手段です。
7. ゲーム外でも会話する機会を作る
この辺は僕が TRPG に出会った理由にも関係する話なんですが。
ゲーム外でもグループの面々が色々な会話をする機会ってのがあると、やっぱ色々と違うわけです。もちろんゲームについても違うけど、それ以外でも普通に交遊があるというのは、様々な部分でプラスに機能していくことが多いわけで。まあマイナス面もありますけど(笑)
デザイナーズノート、というか雑感
……とかまァ偉そうな事を書いていますが、実際にこれらが達成されるかどうか? というのは介入ゲーム自体が魅力的なものにできないといけませんし、様々な環境整備、キャンペーンマスターの運営力なんてのが関係してきます。
それらが有ったとしても上手くいく保証は有りませんで、結局のところ普通のキャンペーンゲームを運営するのと大差ない、ような気もします(笑)
あと、これ採用すると、プレイヤーにとっての大きな悲劇の数々は、介入コールによって曖昧になり、もし介入ゲームが失敗して悲劇が実際に起こったとしても、プレイヤーにとっては感情にタイムラグが出来てしまって素直に悲しめない、悲しみの質が変わってしまう、ということがあります。
悲劇的演出が効果的な、あるいはそれを企図されたゲームシステムでは、運用は控えた方が良いでしょう。
ぶっちゃけトーク(笑)
魔術的な、もっとスマートなアーキテクチャが組めるのではないか?
……とも考えてるんですが、現段階で、僕が遊びたいゲームを遊ぶために、そうした環境を作るためのアプローチとして、これがもっとも実際的なものになっています。
僕が遊びたいゲームってのは、ゲームの楽しさが「達成感」のグラデーションで表現できるゲーム。
そしてプレイヤー自身が英雄に変化するゲーム。
PC じゃなくて、あくまでプレイヤーが。
だから PC を危機にも陥れるし、放っておくと事態はどんどん悪くなっていきます。
さあ皆さん、ゲームマスターの暴走を食い止めてください!(ぉぃ)
……こういう人間がゲームマスターをやっているというのは、プレイヤーにとっては悲劇なんじゃないかと思うんですが、未だに仲間たちとゲームが続けていられているので、アリなのかな、とか思うことにしてます。
『メガトラベラー』のルールブックにも、良いレフリーとは意地悪なレフリーのこと、みたいな話が書いてあるし(笑)
「[memo] すべての悲劇を蔑せよ英雄・おまけ」への1件のフィードバック
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