[Column] 〈対話〉から見たチームプレイ

 だいぶ間が空いてる『〈対話〉から見た』シリーズですが、今回はチームプレイについて。
 ここで言うチームプレイとは、チーム(または「パーティ」)を組んだ仲間同士が一丸となって課題に取り組むプレイングのことです。
 書式もだいぶ忘れちゃってるんで、グダグダ書いてます。スミマセン。

〈対話〉のおさらい Plus

 時間が空いてしまったので、〈対話〉についておさらい。
 ついでにちょっとだけ〈対話〉の性質について深めておきます。

 しつこいようですが、本シリーズにおける〈対話〉の定義は以下の通りです。

  • 〈対話〉 = 異なる価値観を持つものが、互いを理解しあうこと。またそのプロセス。より端的に「共通認識を形成する作業」とも。

 本シリーズでは「お互いを理解すること」を〈対話〉としています。
 で、この「理解」というところで、たまに引っかかる人がいるようなので、ちょっと補足します。

理解と合意の違い

 たぶん〈対話〉に会議のような、「合意するためのプロセス」というイメージがあるからなんだと思うんですが、これはちょっと先走っちゃった話で。

 「理解」というのは、ただ「ある情報(価値観や意見など)について知識を深める」というだけのことです。知識を深めることで、結果として「合意」に至るケースもありますが、「理解」したからといって必ずしも「合意」する必要は有りません。
 「だが断る」と言うことは出来るわけです。

 つまるところ「理解」というのは、「判断材料を増やす」とか「価値観を拡大する」とかいったモノであって、必ずしも「折れる」とか「妥協する」とか、そういったネガティブなモノになるとは限らんわけです。

〈対話〉にとっての理解とは

 誰かと〈対話〉をするとき、お互いの価値観や意見を理解し合おうとするとき、必ず必要になるものが共通認識です。

 人間が発明した共通認識というと、まず「言語」があります。
 同じ言語を使うことで、人は自分の意見を相手に伝えることが出来るようになります。何かしら考えをまとめようとするとき、人はそれを言語化するクセがあります。*1 [思考を言語化するクセ] = これは主に幼児期の反復練習の成果なのだろうが。
 言葉が通じない環境でも、ボディランゲージやイメージシンボルなどで簡単な意思疎通をすることは可能ですが、これにも最低限、お互いの共通認識が必要であることに違いはありません。

 〈対話〉とはそうした「共通認識を増やすプロセス」であり、その理解とは「増えた共通認識」のことを指します。しかしそれを実際にどのように使うのか? ということは個々人に委ねられています。

 ……ということで、本題へ。

チームプレイとは

 冒頭の繰り返しになりますが、チームプレイとはチームを組んだ仲間同士が一丸となって課題に取り組むプレイングのことを指します。
 「そんなの TRPG の常識だ」と言う人もいれば、「いやいや利害関係によって仲間になったり敵になったりするのが TRPG だ」という人もいます。更には「自分ひとりの勝利を目指すゲームだってあるじゃないか」といって『とらぶるエイリアンず』を持ってくる剛の者もいました。いやあのゲームは自陣営が勝つのが目的であって、自分ひとりだけが勝てばいいモンじゃないと思うんですが(笑)*2[とらぶるエイリアンず] = HJから発売されたライアーゲーム(笑)。通称『とらエリ』。プレイヤーはエイリアン陣営と人間陣営に分かれるものの、それぞれ自分がどちらに属するかは秘密であり、互いに寝首をかき合うようなエゲツないプレーが展開される。

 まあそれはさておいて。
 TRPG におけるチームプレイについて、ステージに即した二つのパターンから考えてみます。

一蓮托生チーム

 もっとも昔からある「TRPG におけるチームプレイ」というと、なんといっても「チームが一丸となってミッション達成のために活動する」というものでしょう。「ミッション」は「クエスト」でも構いません。要は「ゲーム中に与えられた課題をクリアする」ということです。
 「他にチームプレイがあるのか?」という疑問は後に置くとして。

 このチームプレイでは、各々が持てる能力を駆使して課題のクリアを目指します。戦士は前線で戦い、盗賊は罠からチームを守り、僧侶は傷を癒し、魔法使いは様々な魔法で貢献する、とかそういうヤツです。
 こうしたチームプレイは、まずお互いのキャラクターの能力を認識、理解することから始まります。「あの人のキャラは盗賊だから罠探しをしてもらおう」とか「あの人は腕力あるから力仕事は任せよう」なんて具合に。

 一蓮托生チームの場合、チームは基本的にかたまって行動するため、チーム全体が一人の人間のように機能します。
 そのため一人の失敗がチーム全体の失敗となるケースが少なからずあり、それを回避するために、代表して何かを行うキャラクターを、他のキャラクターが全力でバックアップするプレイングが多くなります。

 こうした性質のチームは、閉鎖的で、かつ周囲に危険が満ちている環境で結成される傾向にあります。
 ぶっちゃけて言えば、洞窟や密林などのダンジョンに挑戦するときの常套手段です。

利害チーム

 利害チームは一蓮托生チームより遅れて登場したチームプレイの形です。
 これは「その場その場の利害に基いてチームを組んで課題をクリアする」というチームプレイで、チームを構成するキャラクターたちはそれぞれに異なる目的/動機を持っています。

 このチームプレイでも、やはり各々は持てる能力を駆使することになりますが、それは常に課題のクリアによって得られる利益と、そのために活動することによる利害とを天秤にかけ、利益を大としたときのみ行動する傾向があります。
 こうしたチームプレイは、まずお互いのキャラクターの目的を認識、理解することから始まります。「あの人の目的は○○だから、△△をダシにチームを組んでもらおう」とか「あの人が成功すると自分も○○が手に入るな。よし手を組もう」なんて具合に。

 利害チームの場合、利害がかみ合わなければいつでもチームから離脱するキャラクターは現れますし、行動中にチームが空中分解してしまうケースもあります。
 利害チームは自分の損害さえなければチームメイトの損害については考える必要がないケースもあり、そのため、一蓮托生チームに比べてキャラクターたちの連携は弱くなりがちです。

 こうしたチームは比較的解放的で、かつ危険の少ない(または自覚的に回避できる)環境で結成される傾向にあります。
 これまたぶっちゃけて言えば、村落や都市などのシティで活動するときに多く見られます。

必要なことは相互理解

 とまあ、無理矢理チーム構造を二つに分けてみましたが、実際のところはダンジョンでも利害チームになるケースや、シティでも一蓮托生チームになることはあるので、その辺はプレイスタイル次第ということになります。

 どちらのプレイスタイルにせよ、チームプレイには「目的達成のために協力する」という性質があります。
 そしてそのための要点はたった一つ。
 それは「お互いのキャラクターを理解する」ということです。

理解のマトリクス

 TRPG のプレイ中、〈対話〉を行う上で大前提となることは、大きく分けて 2×2 の 4パターンに分類できると考えています。
 一つは「能力」と「意志」の 2項。
 もう一つは「プレイヤー」と「キャラクター」の 2項です。

 これでマトリクスを作ると、

能力 意志
キャラクター キャラクターの能力 キャラクターの意志
プレイヤー プレイヤーの能力 プレイヤーの意志

 ……まんまですが(笑)

「キャラクターの能力」を理解する

 これは「キャラクターに何ができるのか?」という理解です。
 基本的にはキャラクターデータからどのような行為判定に秀でているのか、また背景設定からどのような社会的行動が可能なのか、といった事柄について認識することになります。

「キャラクターの意志」を理解する

 これは「キャラクターが何を目的としているのか?」という理解です。
 ゲーム中に与えられたキャラクターの立場、役割、キャラクターが自分に課しているゴール設定、これまでの行動について認識することから始まります。

「プレイヤーの能力」を理解する

 これは「プレイヤーがどんなプレーを得意としているのか?」という理解です。
 たとえば敵との戦闘、NPC(ゲームマスター)との交渉、情報の整理、解決策の発案など、プレイヤーごとに得意としているプレーは異なります。これはそうしたプレイヤーごとの得意分野について認識することです。

「プレイヤーの意志」を理解する

 これは「プレイヤーが何を目的としているのか?」という理解です。
 前述の「キャラクターの意志」と類似するプレイヤーもいれば、なるべく乖離させようとしているプレイヤーもいます。これはそうした「キャラクターを介してプレイヤー自身は何を望んでいるのか?」ということについて認識することです。

これらを理解する方法

 これら四つの理解を得るには、大きく分けて二つの能力を磨くことで、それに近付くことが可能となります。

システムの読解力

 ひとつには、ゲームシステムの読解力です。

 特に「キャラクターの能力」については、徹底してこのゲームシステムについての理解がモノを言います。
 システムに通じたプレイヤーは、キャラクターシートを一目見ればそのキャラクターが何を得意としていて、どういう場面で活躍できるのか、ということを簡潔に見抜くことができます。

 また、「プレイヤーの能力」についてもゲームシステムの読解力は有効に機能します。
 数値を扱う多くのシステムにおいて、数値管理のセンスというのは「プレイヤーの能力」に大きく関係しますが、これはゲームシステムやシナリオごとの“数値の持つ意味”をよく理解することで、推察することが可能になります。

 それから単純に、自分自身のプレースタイルと、ゲームシステムの相性とを理解しておけば、それぞれのシステムの範囲内で、より自分の得意分野を生かしたり、苦手分野を埋め合わせたりするのに役立つので、知っておいて損はありません。

 いささか詭弁くさい話ですが、こいつはゲームシステムを介したシステムデザイナーやシナリオデザイナー、それからゲームマスターとの間接的な〈対話〉と考えています。

コミュニケーション能力

 もう一つが、コミュニケーション能力です。
 こっちは「キャラクターの意志」と「プレイヤーの意志」について理解するために有用です。

 まあ極論すれば、相手から直接それを聞き出してしまったり、そうでなくても大きなヒントをもらったり、という方法を使うことで、これら「意志」を理解することはそう難解なことでは無くなります。
 要はそれを教えてもらえる程度にはコミュニケーションが取れるかどうか、というレベルの話なので、それほど高度なテクニックを要するわけではありません。

 これについては「相手に敬意を払っているか。それを態度に表しているか」という問題だと思っています。*3[相手に敬意を払っているか。それを態度に表しているか] = 実は一番難しいことだとも思うのだが。たとえば「理解を示し、敬意を払う」ことと「妥協する」ことは微妙に違う。この辺がまた難しい。

 こちらはより直接的な、参加者との〈対話〉ということになります。

チームプレイ ~ より高度な目標達成の手段として

 ケースバイケースではありますが、ほとんどの場合、個人より集団の方が目標達成の成功率は上がります。
 たとえばサッカーで、自分一人で相手チーム 11人を相手にするときと、自分に 10人の心強い仲間のいるチームで相手チーム 11人を相手にするとき、どちらがゴール率が高いかといえば後者でしょう。

 そして、より高い目標を達成しようとしたときも、ほとんどの場合、チームプレーの方が有利になります。
 同じサッカーのたとえでいけば、「一試合で 3点取る」という目標設定をしたときも、やはり成功率が高いのは後者でしょう。

 チームプレーには常に連携の良さが求められます。
 そして連携を良くするために必要なものも、やはり相互理解です。

 連携してチームプレーを成功させた経験が、次にチームを組むことへの動機となり、実際にチームプレーをすることで更に相互理解が深まり、より優れたチームプレーによって成果をあげ、また次にチームを組むことへの動機となり……
 ということで、好プレーのスパイラルを生んでくれる原動力になるのが、この相互理解だろうと考える次第です。

References

References
1 [思考を言語化するクセ] = これは主に幼児期の反復練習の成果なのだろうが。
2 [とらぶるエイリアンず] = HJから発売されたライアーゲーム(笑)。通称『とらエリ』。プレイヤーはエイリアン陣営と人間陣営に分かれるものの、それぞれ自分がどちらに属するかは秘密であり、互いに寝首をかき合うようなエゲツないプレーが展開される。
3 [相手に敬意を払っているか。それを態度に表しているか] = 実は一番難しいことだとも思うのだが。たとえば「理解を示し、敬意を払う」ことと「妥協する」ことは微妙に違う。この辺がまた難しい。

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  1. ピンバック: ペテン師が憂鬱。

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