[Manual?] 不満の残った作品を

 オンラインセッション(以下”オンセ”)のコミュニティで、初心者さん相手に TRPG のさわりを説明するためにやってたコトを一つ、マニュアル風に。

あと一歩で残念だった作品を教えて

 「TRPG ってナニ? どうやって遊ぶの?」って人に、一番使ったのはコレです。
 最低2回は会えないとダメなんだけど、なかなか有効な手段でした。
 すげぇ労力かかるんだけどさ(笑)

Step.1 : 好きな作品の話を聞く

 初見の初心者さんと、いきなり TRPG を遊ぶってのも難しいですから、まあとりあえず最初は雑談して緊張をほぐしてからですわな。
 で、そのときにその人が好きな作品について、いろいろ聞いておくわけです。
 何が面白かった、何のどんなキャラが好き、あるいはあの作家は嫌い。
 TRPG 関連のチャットに来るような人なんで、その手の話はたいていの場合、盛り上がります。
 小説でもマンガでも映画でもゲームでも、まあ何でもアリです。
 とにかく「好きな作品」と「残念な作品」について聞いておく。
 ターゲットは「好きなんだけど残念なシーン」です。

Step.2 : 作品知識を仕入れておく

 で、雑談が終わったら次に会うときまでに、その作品知識を仕入れます。
 何の、どのシーンに不満があったかを見ておいて、その状況を徹底的に頭の中に叩き込んでおきます。登場人物の口調*1[登場人物の口調] = 一人称/二人称/三人称/語尾/性別対応/年齢対応など や人間関係、通常時の発言パターン、「なぜ作家がそう作ったか」
 映画やなんかだと、すぐにチェックするのは難しいんで、セリフの書き出しもしておいて。
 また次、いつその人と会ってもいいように覚えておきます。

Step.3 : プレーしてもらう

 チャットに入るときは、いつその人と会っても大丈夫なように、その作品が見られる環境を整えておいて。
 で、その人と会ったときに、まだ TRPG に興味を持ってくれているようであれば、作戦実行。

「実際にちょっとやってみましょうか」

 ってことで、ダイスチャットへご案内。

「とりあえず簡単なソロプレーを遊んでみましょう」

 ということで、特にキャラクターデータも作らず、件の「不満の残ったシーン」を再現します。

 「誰が/何を/どういう風にしたら、もっと良くなるのに……」と考えているかってのは、事前に聞いているわけですから、初心者さん(以降”プレイヤー”)には「誰が」をやってもらいます。プレロールド・キャラクターってやつですね。
 で、その「不満の残ったシーン」の、ちょっと手前からゲームを開始します。

スモールステップ「言語化」「キャラクタープレイ」

 マンガや映画、ゲームなど、表現の一部ないし全部を非言語で行っている作品をモチーフにしている場合、「状況を言語化(情報化)する」というプロセスが入ります。
 状況の言語化は TRPG の基礎技術ですが、慣れてないと案外これは難しいんで、相手がその手の技術に長けていない場合、ゲームマスターがフォローしていきます。

 プレイヤーはそもそも「どうやってプレーすればいいのか」自体が分からないわけですから、初めはキャラの発言とシンプルな行動宣言だけでOK。
 とにかく「キャラクターの行動をなぞる」ところから始めます。

 行動の演出についてはまあ、ゲームマスターなりアドバイザー(後述)なりがやって見せながら、ゆるーくガイドしていって。まあ勘のいい人ならすぐに自分で出来るようになるし、そうでなくても外野がフォローした演出文を、まあとりあえずはコピペでもいいから「自分の発言」として出力してもらうようにして進めます。
 そうやって状況を「そのとき」まで進めていきます。

【行為判定について】

 「不満の残ったシーン」に至るまで、行為判定は行いません。
 プレイヤーとの掛け合いと、あとは「状況説明」だけで進行します。

【アドバイザー/ファシリテーター】

 プレイヤーは一人ですが、可能なときはアドバイザーとしてもう一人、できればその作品に詳しいゲーマーに参加してもらいます。
 目的は三つ。(優先順位の高い順)

  1. プレイヤーの演出不足を補ってもらう
  2. 作品イメージのズレが有ったとき、プレイヤー寄りに指摘してもらう
  3. 僕の作品知識の不足を補ってもらう

 可能だった場合、お互いでフォローしあう「パーティプレイ」のスモールステップになります。

スモールステップ「キャラクターのロールプレイ」

 で、問題の「そのとき=不満の残るシーン」に到達したらゲーム開始です。

 「貴方ならどうする?」と、その人なりのロールをしてもらいます。
 それに対して、準備しておいた NPC の反応パターンなどを使って「原作には無い状況」を作り出す。
 そうしてプレイヤーの思い通りの結末に至るかどうか、プレーするわけです。

 事前の「キャラクターをなぞるプレー」と違い、こちらはプレイヤーの願望(メタ視点)が絡んでいるので、自然、難易度は上がります。
 なにしろ「何故キャラクターはそうするのか」の行動原理なり、口実なりを、自分で構築しなくちゃならんのです。
 プレイヤーが過剰に悩み、手が止まってしまうケースがあるので、あんまり難しい状況にはしないよう、ほどほどに(笑)

 悩んじゃった場合、いくつかの展開を提示してみて、それでも決められないようならダイスを振ってもらうのも一つの手です。
スモールステップ「行為判定」

 ここで初めて行為判定を行います。
 単純に、たとえば「2d6を振って8以上が出たら成功ね」とかだけで十分。
 プレイヤーの担当しているキャラクターの能力は、マスクデータとしてゲームマスターが管理しておきます。

 プレイヤーが行為判定に失敗しても、あまり極端な結果にはしないようにして、「失敗した状況からどうやってリカバーしていくか」に挑戦してもらいます。

エンディング。

 ゴールは、その人が言ってた「その人の理想的な結末」でいい。
 そこまで何回かの行為判定と、リカバーのための挑戦をしているでしょう。
 その間に、少なくとも原作とは違った物語が出来上がっています。
 その人だけの、物語が。

「だいたい、こんな風に遊びます。今回は、色々端折ってますけど(笑)」

あとがき

 ……とまあ、大体こんな具合に初心者さんにガイドしてました。
 アドバイザーなんかについては、参加人数の多いチャット・コミュニティだったから出来たコトなんで、環境次第の手段ではあるんですけどね。
 少なくとも当時――10~4年前――は、それでかなり上手くいってました。
 今も通じるかどーかは、わかりません(笑)

References

References
1 [登場人物の口調] = 一人称/二人称/三人称/語尾/性別対応/年齢対応など