これは友達の友達が言った話です。
深夜のバスで
夜、最終間際のバスに掛け乗ると、乗客は一人もいない。
私はいつものクセで、出口に近い席に座ると、しばらく肩なんか揉みつつボーっとしている。
乗ってから二つばかり駅を過ぎたところで、後ろからゲホゴホと咽せたような音がする。
ン? と思って振り返ると、やっぱり誰もいない。
はてな? と首をかしげていると、やっぱり聞こえるゲホゲホゴホン。
再び振り返ろうとすると、
「お客さん」
はえ? 運転手が声をかけてきた。
「気にしちゃいけませんよ。何もしやあしませんからね」
ああ、この人には何か見えてるんだろう。
私はそう得心した。
「そうみたいですね」
私がそう言うと、運転手は逆にビックリしたように、
「見えるんですか!?」
見えてたわけじゃないんかい!
私は頷いてやろうと思ったが、それでビックリして事故でも起こされたらたまったもんじゃない。
私はアハハと笑ってから、
「いや。冗談です」
と言ってみる。
運転手、胸を撫で下ろして
「そうですよね」
そうしてバスは、目的のバス停に停車する。
私はドモ、といつもの挨拶をして、PASMO を当ててバスを降りた。
歩き始めてすぐに、ふと気になって振り返ってみると、
バスの最後部から、白い服を着た女らしき人影が、運転手の背後まで、ゆらり、近付いていく。
ところでさ、都市伝説の枕詞になってる「友達の友達」って、つまり「自分」のことじゃないかと思うんだよね(笑)