唐突ですが、冬の時代以前に教えられた技術について、ちょっと書いておきます。今で言うハンドアウトに相当する技術と、それを利用してゲームを編成する技術なんですが、知り合いに話したら面白がっていたので。(そう珍しいモンじゃないと思うんですが。レトロな技術って秘伝化されてるんですかね?)
ページの内容
「シナリオガイド」について
まずは当時「シナリオガイド」と呼んでいたハンドアウト技術について。
ここではシナリオのメタ情報を、シナリオコンセプト、シナリオランク、シナリオリスク、重要NPCの四つに分解してゲーム前に提示しています。
- シナリオコンセプト
GMが想定するシナリオの障害、その攻略手段。
≪ハック≫:探索し、情報や物資を移動することで攻略
≪スラッシュ≫:戦闘によって障害を駆逐することで攻略
≪ソーシャル≫:社会性を改善することで攻略- シナリオランク
シナリオの難易度。
≪キュート≫:非常にシンプルなシナリオ
≪カジュアル≫:標準的なシナリオ
≪コンバット≫:やや難解なシナリオ
≪テクニカル≫:非常に難解なシナリオ
≪エクストラ≫:ゲームマスターに攻略手段が分からないシナリオ(笑)- シナリオリスク
シナリオの危険度。
≪キュート≫:危険はほとんどない
≪カジュアル≫:危機管理は標準で良い
≪リスキー≫:具体的な危険がある
≪デッドリー≫:死亡の可能性がある
≪デス≫:全滅の可能性がある- 重要NPC
シナリオ攻略に関係する重要なNPC。
重要度を A ~ C くらいで表現。
こんだけ。
この四項目は、常に使われていたわけではなくて、なにかがクローズドにされる場合もあります。(クローズドにされる率が一番高いのが重要NPCでした)
〈ゲーム編成〉とは
ちょっと話がわき道にそれますが。
当時、サークルでは〈ゲーム編成〉を重視していました。
〈ゲーム編成〉とは「目的」「ルール」「課題」「手段」を設定するということです。
これはゲームマスターがシナリオを作るときのガイドラインでもあり、プレイヤーが実際にゲームをするときのガイドラインでもあります。これは各人が自主的に設定するようカリキュラムを組んでいました。
個別の項目について簡単に解説していきましょう。
まずはゲームマスターの〈ゲーム編成〉について。
【ゲームマスターの〈ゲーム編成〉】
- 「目的」
シナリオに想定されるエンディングです。
キャラクターが最終的にたどり着けばいいゴール地点の設定です。 - 「ルール」
目的達成の最短ルートを封鎖する制限要素になります。
システムであったり、データであったり、モラルであったり、時間であったり、費用であったり。
様々な「キャラクターの行動範囲を制約する条件」を設定します。 - 「課題」
シナリオに設定される個別のイベントです。
これはシナリオごとに異なります。 - 「手段」
プレイヤーの誘導方法です。
基本的には課題の攻略方法を複数設定しておくこと、その攻略方法をどうやって示唆するかということの設定です。
次にプレイヤーの〈ゲーム編成〉について。
【プレイヤーの〈ゲーム編成〉】
- 「目的」
シナリオを超越した最終目的です。これは行動原理になるので、基本的には最初に決定されます。(あるいはキャラクターを作成した時点で決定されています) - 「ルール」
シナリオ中にキャラクターが取れる行動、取れない行動のガイドラインです。
主に「とってはならない行動」が重視されます。 - 「課題」
シナリオ中に攻略しなければならない問題点です。 - 「手段」
「課題」攻略のためにキャラクターがとるべき行動です。
キャラクターのデータを基準として設定します。
こうしたことを、サークルで遊んでいるときは常に意識するよう言われていましたし、そのためのカリキュラムを考えるようにも言われていました。
で、このカリキュラムの一つが、次の話になります。
〈ゲーム編成〉の拡張 ~ シナリオ要素の購入
上記のプレイヤーの〈ゲーム編成〉では、キャラクター設定の中に納まるようになっています。このキャラクター設定を拡張することで〈ゲーム編成〉にバリエーションを増やす方法の一つとして、シナリオ設定に逆介入する遊び方があります。(これは当時〈ゲーム編成〉習熟カリキュラムの一つとして考案したものです)
テーブルを囲むプレイヤー全体に対して「シナリオコイン(SC)」という架空の通貨を用意します。これをゲームマスターに支払うことで、プレイヤーはシナリオ中にシナリオ要素(追加設定)を購入できます。
たとえば「この美少女NPCとは実は幼馴染だった!」とか「実はキャラクターは昔この辺りに住んでいたので秘密の洞窟のありかを知っている」とかいった内容です。
シナリオ要素の価格表が見つからないんですが、セッションログシートから断片的に抽出されたリストは以下の通りです。
【NPCとの関係】
- 友人:100SC [+2]
- ライバル:100SC [+1d]
- 幼馴染み:200SC [+4]
- 親類縁者:200SC [+1d+2]
- 親友:300SC [+7]
- 恋人:300SC [+2d]
- 相手が恩人:100SC [+1d]
- 自分が恩人:200SC [+1d+2]
※【NPCとの関係】を購入した PC への反応判定は再判定を行います。
再判定時には [ ] 内の修正値を加えることを忘れずに。【重要度係数】
- 重要度A:×5.0
- 重要度B:×2.5
- 重要度C:×1.0
- 重要度-:×0.5
【地域知識】
- 一度立ち寄ったことがある:50SC [IQ-5 or L+1]
- 何度か立ち寄ったことがある:100SC [IQ-4 or L+2]
- ずっと昔(年齢×0.8年前)に住んでいた:150SC [IQ-2 or L+3]
- 昔(年齢×0.5年前)に住んでいた:200SC [IQ or L+4]
- 近い過去(年齢×0.2年前)に住んでいた:300SC [IQ+2 or L判定不要]
※ [ ] 内は再判定の際に使う目標値。
該当する〈地域知識〉がない場合は IQ を、ある場合は L を使用する。【注意点】
修正値、判定ルールは GURPS のものです。
購入する設定によってはゲームマスターの対応能力でフォローしきれないこともあるので、フルに活用するにはゲームマスターのアドリブ能力が要求されます。実際の使用では、なにを許可するかとか制限付けといた方がいいでしょうね(^^;
オンラインセッションでは作戦会議の時間がとりづらいのがネックで適性は低いんですが、オフラインで遊ぶときには今でもたまに使ってる手法です。
これはリアルタイムで使ってもいいんですが、シナリオガイドをちゃんと用意していた時は、セッション開始前にシナリオ要素を購入する時間を用意して、最初からキャラクター設定を拡張して、シナリオをよりドラマ的に演出することもできます。
以前に書いた「シナリオハンドアウトをプレイヤーと一緒に作る」方法の一つです。
シナリオ要素の購入ルールは、従来、即興的にNPCとの関係を設定して無秩序にシナリオを拡張していたプレイヤーへの抑止、また逆に「自分で設定を買う」ことで自主的なロールプレイを促す効果を期待したものです。
また、シナリオコインをプレイヤー全体に渡すことで、より多くのシナリオコインを使ったプレイヤーに、シナリオコインを使えなかったプレイヤーへのサポートを誘発させる(プレイヤー間でサポート関係を成立させる)ことも見込めます。
以上、まあ例によってなにかと手間のかかるアプローチばっかりですが、何かのお役に立てば幸いです。
最終センテンスのうち、日本語がおかしかった部分を修正。
シナリオ要素リストを GURPS に適用する際の修正値と備考を追記。