書かない。休む。
そう言うと大体、ネタが向こうから転がってきて「書け」と言う。
しかし今回のネタは、自分から僕の前に転がってきたとすると、これはひどく自虐的な性分をしているのだろうと思えてならない。
映画スターダスト(STARDUST)の試写会に入ってきました。
ふざけんな。
金――は出してないか。
――時間返せ。
ここまでボロクソに言える映画を久しぶりに見た。
B級映画でもない。
単なる駄作である。
以降、同作品について徹底して叩き潰す。
批判・批難の嫌いな方は、回れ右することをオススメする。
色変えで隠しておくが、ネタバレも含まれるので、その辺もご注意を。
よろしいだろうか?
では、はじめよう。
* * *
追いかけよう、世界の果てまでも・・・邪悪な魔女、空飛ぶ海賊、亡霊の王子たち──
“流れ星”が恋に落ちたとき、運命が動きはじめるこの物語の感動は、まさしく宮崎映画の実写版を見ているようだ。── Harry Knowles, AIN’T IT COOL NEWS
宮崎駿が怒るぞ。
僕は宮崎駿の映画があまり好きではない。
それも近々のものほど「いただけない」と思う。
(アニメが「ストーリーを見るもの」という前提に立ったときの話)
だが好き嫌いと評価は別で、良く出来ているとは思う。
少なくとも、こんな駄作が「実写版」などと言われるのは、甚だ心外だろうと思えるほどには。
宮崎映画の実写版というが、この作品、実際には近々にヒットした映画のシーンを数珠つなぎにしただけのコラージュ作品だ。
分かりやすいところで『ロード・オブ・ザ・リング』、『ハリーポッター』シリーズ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』あたりを真似たカットがこれでもかとばかりに出てくる。
“壁”の番人はアレ、やっぱりガンダルフなんだろうか。
王子とその従者たちは、黒の乗り手だろうな。
海賊キャプテン・シェイクスピアは、パイレーツ・オブ~の趣味の悪いパロディだ。
三人の魔女たちとその魔法演出は、呪文を唱えないハリーポッター。
非常に荒っぽい言い方をすれば、以上のようになってしまう。
そもそもにして、流れ星の正体が女で、しかも金星であるという。
日本語で金星というと、単なる惑星の一つということにしかならないが、これがアチラの文化圏であれば、おわかりだろう、Venusである。
それが「輝きを失っている」だの「輝いて見える」だのと言えば、もう物語のテーマからオチまで見当がついてしまう。
しかも冒頭で「真実の愛がどーのこーの」と言ってしまっている。
これでもう、エンディングのどんでん返しの望みは消えた。
ではストーリー展開はどうか。
先ほどもいったとおり、これが非常にできの悪いコラージュであった。
もはやパッチワークと言ったほうが良いかもしれない。
展開がムチャクチャで、シーンがブツ切れだから、頭でつながりを追いかけることは出来ても感情移入のしようがない。結果、すべての登場人物に深みが感じられない。
ではコメディだ。笑いは無いのか。
無い。
いや、笑えるシーンは、とりあえず一つだけ思い当たる。
デニーロのキャラクターがオカマ趣味なのだ。
128分の映画で、ワンシーン。
そんなものはコメディ映画とは言えない。
* * *
過日、やはり試写会に行った『キングダム』を「地味な映画」と言ったが、訂正する。アレの方が百倍も面白くて、派手であった。
『キングダム』は、エンターテイメントを考えれば、もっと分かりやすいドラマティックな脚本が書けるはずの映画である。だが、様々な事情(主に政治的配慮だろう)もあり、またドキュメンタリー志向もあって、結果として「偽史」のような映画になった……と、僕は理解している。
限定的条件下で、健闘したと言って差し支えない。
ところが『スターダスト』はどうだろうか?
ファンタジーであり、政治的制約は極めて少ない。また無駄とも思える(いや、実際無駄以外の何者でもないだろう)豪華キャストを見れば、予算も問題にはならない(というか、してはならない)。むりやり好意的に解釈するなら、豪華キャストを集めすぎた結果、業界政治に脚本がねじまげられたのかもしれない。
努力の跡すら見えない駄作に、好意的な評価などしようがない。
先ほど映画好き(&デニーロ好き)の兄にチラシを見せたら、
「昔、スターウォーズの二番煎じでこういうの、よく有ったよ。
ことごとく駄目だったなあ。
どうだった? 駄目? やっぱり」
言われて改めて見直せば、何も考えずテンプレートに嵌めこんだような、何を見せたいのかすら分からないチラシだった。
意志徹底されていないモノは、チラシすらこうなるのか。
すばらしい反面教師でありました。
* * *
以降、Pakilaの紹介文にツッコミ入れます。
文量は大したことありませんが、今まで以上に酷いです。
わざわざ読むほどのモンじゃない。
おこんないでね。
では。
豪華俳優陣演じるユニークなキャラクターたちが贈るこの秋、壮大なスケールで描く愛と冒険のファンタジーが誕生!
キャラクターは全然ユニーク(個性的)ではありません。
宇宙空間まで宝石をぶっとばしてメテオストライクがかませる魔法演出は壮大かもしれません。
そのわりに、魔女たちの魔法はやたらチンケでしたが。
夢と空想の純エンターテインメントでありながら、シニカルでエッジの効いた魅力はこれまでと一線を画している。
たしかに一線を画していました。
なにしろそのシニカル(冷笑的)なことといったら、観客が失笑する以外にないのです!
その鋭さたるや、なるほどエッジ(刃)が効いています。
製作者を刺し殺せるほどに。
想像を遥かに超えた大胆な発想と心躍らせるストーリーが繰り広げられていく、愛と冒険のファンタジーがここに誕生した。
想像を遥かに超えていたパッチワークの山。
訴えられやしないかと不安になるほど大胆なパクり具合。
この脚本家、干されるんじゃないかと心躍らせるストーリー。
愛情を思わせるシーンを一切描かず、いつの間にか愛していましたと言い切らせる冒険的な脚本。
なんと素晴らしい脳内ファンタジー(おはなばたけ)。
……なんか書いてるのがアホらしくなってきたので終わります。
くれぐれも忠告しておきます。
この映画は、見るべき要素を一切持ち合わせていません。
2時間ばかり睡眠を取るには、丁度よさそうですが。