[掌篇] 04 : 禊(みそぎ)

 おかしな汽車に乗り込んだものだった。
 背(せな)からする声の主は、車掌と名乗った。
「振り返ってはいけません」
「この汽車は、すべて水に流します」
 遠ざかっていく、住み慣れた町。
「邪魔さえ入らなければ」
「あなたはやりなおせる」
 天井に映った影から伸びる、猛獣の牙。

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